水のなる木
(暑い……)
この日は茹だるようだった。
たまらず、森の中へと入る。日陰になっただけで十分に涼しく感じられた。「せっかくだから」と、ぼくはそのまま森を散策することにした。
※
ほどなくして、ぼくは【水のなる木】を見つけた。木の枝に球状の大きな水がいくつもぶら下がっている。だから、水のなる木。正しい名前は知らない。
手で取ろうとしても、この水は一瞬で消えてしまう。ぼくは魔法を使うことにした。
「《乱れよ》」
枝から離れた水が落下する。
(あれ? どうやって飲めば)
顔にあたった水は瞬く間に消えてなくなった。
※
その後も格闘してみたが、うまくいかない。諦めたぼくが寝転がって休んでいると、ぶよぶよが現れた。水のなる木と親しげな蠢く植物だ。
どうするのかと思って見ていると、ぶよぶよは器用に枝を伸ばして水の実をつかんだ。そのまま長い口でちゅーちゅーと吸っている。
(ぶよぶよなら触れても消えないのか)
ぼくはぶよぶよに近づいた。慌てたように木に擬態する。
「ごめんよ」
そう言って、木皮と管状の枝を切り取った。これで、ぼくも飲めるようになるだろう。
※
案の定、手を木皮で包めば水には難なく触れることができた。それを顔に近づけて枝で中身を吸う。
「おいしい!」
酸味のある果汁が汗で渇いた体に染み渡る。
(管とかは今後も使う機会がありそうだ)
背負袋に詰めこむと、ぼくは森を出た。
※
(もう夕方か……)
ぼくは足を別の場所へ向けた。冒険は、まだつづく。




