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水のなる木

 (暑い……)


 この日は茹だるようだった。

 たまらず、森の中へと入る。日陰になっただけで十分に涼しく感じられた。「せっかくだから」と、ぼくはそのまま森を散策することにした。





 ほどなくして、ぼくは【水のなる木】を見つけた。木の枝に球状の大きな水がいくつもぶら下がっている。だから、水のなる木。正しい名前は知らない。

 手で取ろうとしても、この水は一瞬で消えてしまう。ぼくは魔法を使うことにした。

「《乱れよ(パネクラ)》」

 枝から離れた水が落下する。


(あれ? どうやって飲めば)


 顔にあたった水は瞬く間に消えてなくなった。





 その後も格闘してみたが、うまくいかない。諦めたぼくが寝転がって休んでいると、ぶよぶよが現れた。水のなる木と親しげな蠢く植物だ。

 どうするのかと思って見ていると、ぶよぶよは器用に枝を伸ばして水の実をつかんだ。そのまま長い口でちゅーちゅーと吸っている。


(ぶよぶよなら触れても消えないのか)


 ぼくはぶよぶよに近づいた。慌てたように木に擬態する。

「ごめんよ」

 そう言って、木皮と(ストロー)状の枝を切り取った。これで、ぼくも飲めるようになるだろう。





 案の定、手を木皮で包めば水には難なく触れることができた。それを顔に近づけて枝で中身を吸う。

「おいしい!」

 酸味のある果汁が汗で渇いた体に染み渡る。


(ストロー)とかは今後も使う機会がありそうだ)


 背負袋(ナップザック)に詰めこむと、ぼくは森を出た。





(もう夕方か……)


 ぼくは足を別の場所へ向けた。冒険は、まだつづく。

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