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弟子と師

次話を読んでいただきありがとうございます。

よろしくお願いいたします。


ザダンは、神王シヴァと…、それは嘗ての師弟の相見えでもあった。


 ザダンは、簡易ベッドが置かれたテントで休んでいた。

 クロノスとガイアの神王達から戻ってきた元の自分の力が新たな自分の力と鬩ぎ合って苦しんでいると、そこへドゥルガーが水を持って来る。

「すまん」

と、ザダンはドゥルガーから水を受け取るも、力が入らず手から水の器が落ちる寸前にドゥルガーが再び受け止めると、自分の口に含んでザダンに飲ませた。

 そして、ザダンの戻って来た元の力を受け取る契りをした。


 ザダンは申し訳なかった。でも、ドゥルガーの暖かさも伝わり、癒やされてもいた。


 テントの外では、トオルが何処から持って来たのか分からないが、外用バーベキューキッチンを広げて、付近の町で購入した野菜や肉を料理していた。

 その手際の良さは、プロに近い。

 トオルの隣では、スベルがサポートして、二人して見事にバーベキュー料理の皿を完成させて、暫し待っていると

「良い匂いがする」

と、ザダンとドゥルガーがテントの奥から姿を見せる。

 トオルとスベルは、外用ベンチに座ってビールの缶を開けて

「よう、もうすぐ完成するから食べようぜ」

と、トオルがおっさん臭く開けたビールの缶を掲げる。


 ザダンとドゥルガーは簡易テーブルに付くと、トオルがコンロで焼けた美味しい匂いの肉を切り分けて、それをスベルが紙皿に乗せて二人の前に置く。

 ザダンとドゥルガーは戸惑う。

 もの凄くキレイに焼けていて、ナイフを入れると柔らかく肉汁が出て来る。

 二人は口にして沈黙、後に無言で料理を頬張る。

 美味しいという言葉さえ勿体ないくらいに、おいしい。


 ザダンが不思議そうな顔で

「なんで、そんなに料理が上手なんだ?」

 トオルは決め顔で

「超一級の戦士ほど、料理の腕は超一級なんだよ。兵站で飯マズは死活問題だからよ」

 スベルもトオルの料理を食べながら

「こんな悪の大元帥みたいな感じだけど、面倒見と約束は必ず守る正義の味方みたいな所があるんだよ。オレも、一度だって、トオルが約束を破ったのを見た事はない」

 ドゥルガーが微妙な顔をして

「命の取り合いをしたのに…信じられない」

 トオルも自分の料理を手にして

「まあ、おれは、戦闘と兵器の専門で、内政と分配の専門はスベルだからよ…。拳だけじゃあ世の中、上手くいかんぜ」


 ザダンとドゥルガーは、二人して微妙な顔でトオルを見詰める。

 死ぬ寸前までに追い込まれた相手が真っ当な事を言っているのが、なんともシックリこなかった。


 ザダンが…

「その…オレの祖先、ザランは…二人と…」


 スベルとトオルは微笑み、スベルは

「ザランとは、少し衝突もしたが…目的を共にして…」

 トオルが

「意気投合したのよ。それで…ザランの望みを叶えてやる為に…まあ…なんだ。挑ませてやってさあ…」

 スベルが

「ザランの目的は遂げられたが…その後は…今の通りだ」

 ザダンは俯き

「そうですか…」

 トオルとスベルは、アイコンタクトをする。ザダンがその話をするという事は…恐らく、前世の…。

「はぁ…」とトオルは息を吐き「とにかく、飯が冷めて不味くなる。食べようぜ」

 

 四人して食事を取っていると、ザリと誰かが歩む音がして

「おや…良い匂いがするねぇ…」

 四人は驚愕を見せる。

 幾ら食事中とはいえ、周囲の気配を探知する力は切っていない。

 なのに捉えられない相手…それは、神王シヴァだった。


 シヴァは、右手にヒモを握り、ヒモは背中にある酒樽を支えている。

 シヴァはニヤリと笑み

「久しいなぁ…ザダン」

 ザダンがギリッと歯軋りさせ

「オレに殺されに来たのか…」

 シヴァは酒樽を置いて

「お前と酒盛りに来た。師匠の命令だ」


 ザダンは、開いた皿をシヴァに投げつけ

「何が師だ。オレを殺したクセに!」


 シヴァは付いた紙皿を外し

「そうだ。お前を殺した。今更かもしれん。だが…この酒盛りは人生最後の酒盛りだ。付き合っても損はないだろう」

 シヴァの後ろに、シヴァの娘、武王神アスラと、その弟…刀王神ラスラが並ぶ。

 更に、周囲には、アルファイガで武の頂点であるシヴァの軍勢達が囲んでいた。


 トオルとスベルの全身から、力が溢れ漏れる。殺気が段違いに上がる。

 シヴァの娘アスラが

「貴方達は問題ないでしょう。ですが…彼女…ドゥルガーには、一矢報いる事が出来るかも…」


 トオルがマントに隠している膨大な兵器達の中で最適なモノを選別していると、シヴァが

「なぁ…武を重んじる収天螺王よ。ここは、我ら同じ武を重んじる者を信じて貰えないか。もし、約束を破ったら…アスラも含めた他の武王神の娘達をお前の好きにさせる。どのような事になっても構わん」


 トオルの沸点が一気に上がり

「あ”あ”あ”あ”」

 どんでもなく怒声の篭もった声色になる。

 娘を売るクソ外道に怒りがわき上がる。


 トオルの前にアスラが跪き

「本気でございます。収天螺王様…」


 この僅かな間に、スベルは見ない原子レベルで神法を構築して、それでドゥルガーを見えないレベルで絶対防護する。

 スベルが「トオル」と低い声色を放つ。

 問題ないという事だ。

 トオルが

「お前等の約束なんざ、知ったことか!」

 全てを撃滅しようとした所に

「ドゥルガー頼む」

と、大勢の武人達が駆け付け、ドゥルガーに跪く。

 それは嘗てのドゥルガーの仲間達だった。


 ドゥルガーはザダンに悲しげな顔を向ける。

 ザダンは渋い顔をして

「分かった」



 ザダンとシヴァ、嘗ての弟子と師が酒盛りをする。

 酒樽を開けて、シヴァが杯に組んで

「ほれ…」

 ザダンに向けるも、ザダンは

「オレが飲めない事を知っているだろう」

 シヴァが

「お前は固い。そこが悪い所だ。飲め!」

 ザダンは忌々しい顔をして一口だけ飲んだ。

 シヴァは微笑み、残った酒を飲む。

「お前は昔からそうだ。戒律のような生き方をして…それだから…」

 ザダンが

「そんなの関係ないだろう。お前等が勝手に怯えて、勝手にやった事だ」

 シヴァは肯き

「その通りだ」



 遠くでシヴァとザダンの酒盛りを見詰める一同、ドゥルガーの前にアスラとラスラが跪きアスラが

「ドゥルガー殿、我々は全て知っています。それを踏まえて、ザダン様の復讐を止めてくれるなら、我らシヴァの一族は、ザダン様とドゥルガー様の子孫を守護していくと…誓います」

 ラスラが

「父シヴァが遺命を残しています。神王システムがザダンによって崩壊した後、次の総代としてザダン様とドゥルガー様の子が、立つに相応しいと…。よって我ら一族は…それを後押しせよと…。父は死ぬつもりです。ザダン様、諸共…」

 ドゥルガーは冷静な目で

「それは…ファーティマにお願いしなさい。私とこのお腹にいる子には関係ありません」

 アスラが

「では、ザダン様が遂げられた後…どうするつもりなのですか?」

 そこへトオルが来て

「その心配はするな。その辺りは…オレが、ザダンと約束している。問題ない」

 アスラが立ち上がり

「お前達さえ来なければーーー」

 トオルは呆れた顔をして

「関係ないね。オレ達が来ようが来まいが、ザダンは力を覚醒させたろう」

 スベルも来て

「その結果は、必ずこうなった。変わらない」



 ◇◆◇◆◇◆◇

 ザダンを前にシヴァは思い出話をする。

 初めてのザダンの神機の戦闘、色々と面白い事をした事、ちょっとした修行の合間に見ていた事、シヴァにとっては子のようなザダンだったのに…。

「どうしてかなぁ…なぜ、このような事に…」

 シヴァが黙る。

 ザダンは視線を背けて沈黙している。一言も喋っていない。


 シヴァが

「ザダン。ワシと勝負して、ワシが勝ったら、お前の復讐は終わりだ。ワシの下で働け」

 ザダンは

「そんな予定はない」

 シヴァが

「予定がなくてもだ。後…ルシーファの墓参りをさせろ」

 ザダンは鋭い目で

「オレの弟の墓前を穢すな!」

 シヴァが酒を飲み干し

「さあ、始めるぞ!」

 シヴァが一撃を放つ。それをザダンは握って受け止める。

 この程度の不意打ちは予定調和だ。

 だが…ザダンは直ぐに、握った拳を離す。

「何だ、これは…」

 ザダンは、自分の力が戻って来た感触を受ける。

 シヴァは全身の筋肉を隆起させ

「拳で語り合おうぞ」

 シヴァは殴る。

 それをザダンは防護する。

 シヴァは神機の拳を握っている。それ以外にはない。

 ただ、拳の殴り合いだけで始めた。

 ザダンは同じく、神機の拳を作る。

 その程度しか力が発揮出来ない。

「おおおおおお!」

 ザダンとシヴァの壮絶な殴り合いが始まった。

 その一撃は音速を超え衝撃波と激震を放ち、周囲を破壊。

 そして、二者が移動するだけで大地が削られて変貌する。

 ザダンとシヴァは、徹底的に殴り合う。

 

 シヴァが、嬉しかった。再び、師弟として交える事が。

 だが、ザダンは殺す相手として掛かってきている。

 故に、シヴァにとっては弟子との試合だが、ザダンには殺し合いでしかない。

 

 ザダンは、シヴァから戻された自分の力の影響で、新たな力が発揮できない。

 シヴァを越える事が出来ない。

 武帝神のシヴァは武の頂点である。明らかな実力差が出て来て、ザダンは膝を付く。

 シヴァが

「ザダン…これが真実だ。憎しみだけでは良くならない。お前の憎しみ…壮絶だろう。だが…それを、受け止めて前に進むのをルシーファは願っていないか?」

 ザダンの拳が下がる。

 シヴァが

「お前が憎しみに染まって消えたら、ドゥルガーと残された子は、どうなる? 殴られて頭が冷えているから言う。ファーティマは苦しんでいたのだぞ。シャカリアとて同じだ。今でも…ファーティマは、お前と愛を交わした証を育て上げると…。シャカリアもだ!」

 ザダンの拳が下がり、俯いて立ち上がる。

 そこへシヴァが更に

「お前は、それで良いのか? 確かに我らは愚かだった。だがそれを受け止めて前に進む事が出来るのではないか? お前に残された道は、憎しみによって燃え尽きて灰になるではない。誰かの手を」

 ザダンが一歩踏み出し、シヴァに倒れ込む。

 シヴァがそれを受け止める。

 ザダンが

「ごたごた、ご託がウルセぇーーーんだよ!」

 ザダンは、新たな力と元の力を混ぜ合わせて怒りの炎で着火させる。

 一撃をシヴァの腹に叩き込み、シヴァを宇宙の果てに運ぶ。

「そんなの百も承知なんだよ! ふざけるなーーー オレの気持ちを全て分かっている風にいって、自分の都合でねじ曲げるなーーーーー」


 宇宙に飛び出し、宇宙の果てでザダンは、着火させた力を放つ。

 それは、巨大な数十万光年の龍顎門を備えた鎧観音だった。世界機神と超龍帝が融合した超龍帝機神だった。

 シヴァは自分の世界機神を現化する。

 それは、今までの世界機神より巨大な十万光年サイズだったが、ザダンの新たな超龍帝機神より小ぶりだった。

 シヴァは終わりを覚悟した。

 

 ザダンの超龍帝機神の巨大な鎧の拳達が迫る。

 それの一撃にシヴァの世界機神は沈んだ。

 シヴァが破壊される寸前に

「ザダン。これで…お前の憎しみが消える事を…」


「まだ、終わりじゃあねぇ」

と、ザダンはシヴァを撃ち砕いた。


 ザダンは数十万光年サイズの超龍帝機神でアルファイガを一望して、残りのテスタメントとシオンにゼウスと探すと、それは目の前にいた。


 残り三人の神王は、感慨深い顔で、シヴァを倒したザダンの超龍帝機神を見下ろし

 ゼウスが

「ついに…シヴァもか…」

 シオンが

「ザダン、我ら七大神王の始まりは、お前の祖先で前世であった者が創成した」

 テスタメントが

「そのシステムを、その子孫であり転生者のお主が壊すとは、皮肉な事だ」


 ザダンは、三人を指差し

「覚悟しろ!」


 ゼウスが

「これは、新たな総代が勝つか? 我ら従来の総代が勝つか? 戦争だ。来るが良い」

最後まで読んでいただきありがとうございます。

あと2話です。

ありがとうございます。

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