3話、アルパカの名前はメジロさんです。
「一から説明してもらえますか?」
私はアルパカになっていたという事実はどうやら本当らしい。未だに信じられないが受け入れないと話が進まない。
「どうしたら!女子高生が!目が覚めたらアルパカになるんですか!」
「話す!話すから落ち着いて!」
私は肩で息をしながら怒鳴っていた。そして、興奮して二本足で立っている。
おっといけない四足歩行、四足歩行。
そして、榊くんから説明を始めた。
「…僕は、霊媒術市だ。」
「れいばいじゅつし。」
あまり聞きなれない言葉が出てきた。
「裏の界隈ではシャーマンとも呼ばれている。」
「しゃーまん。」
やばい。予想以上に理解力が追い付いてこない。
「トラックに轢かれた風見さんは重症だった。すぐ救急車に運ばれ、病院に搬送されたんだ。しかし、相当ビックリしたのだろう。魂が肉体と離れて、まさしく幽体離脱をしたんだ。」
…おそらく私はトラックにビックリしたのではなく、こんな街中でアルパカに股がっている榊くんにビックリしたのだろう。しかし、それで幽体離脱したなんて恥ずかしくて言えない。
「でも、それでなんでアルパカになるんですか?」
「魂と身体は本来根強く結び付き、お互いがお互いの役割を持って生きているんだ。どちらかがなければ生きられない。魂だけになった風見さんを放っておけば人として死ぬ。」
死ぬ。どこか現実離れした話の中で一番恐ろしく現実味のある単語だ。
「例えるなら、生魂だけの状態は、まとまったガスのようなものだ。どんどん分散して最後には死魂となる。」
「…死魂って?」
「まぁ、いわゆる悪霊の類いだね。そこにはもう本人の意思はない。魂が死んだのだから。」
背筋が凍る。やはり、死という言葉は一際目立つ。
「そんなガスを逃がさないようにするのが身体だ。例えるから器かな。風見さんが轢かれて、僕は即座にアルパカに魂を定着させた。憑依とも言われるシャーマンの特技だ。」
なるほど。にわかには信じられないが私を助けるためにアルパカに憑依させたのか。だがそれでは…。
「このアルパカの魂はどうなったんですか?」
当然行き着くことはアルパカの身体の元の魂だ。私の魂が入って来てアルパカの魂はどうなったのか。もし、私を助けるためにアルパカの魂が犠牲になったらと思うと…。
「…風見さんはやっぱり優しいね。自分がこんな状態なのにアルパカの心配なんて。安心して。先祖の代々から伝わりし神獣…。それがそのアルパカだ。」
先祖代々からアルパカが伝承される。なんてパワーのある言葉だ。
「僕の家で継がれたそのアルパカは特別さ。どんな生魂を憑依してもアルパカの魂がカバーし、魂の衝突が起きないんだ。なぁ、メジロ!」
「うむ。このような清い魂ならどれだけ憑依してもカバーしんぜよう。」
頭の中に声が聞こえてくる。
どうやらアルパカの魂は一緒に入っているようだ。
「しかし、心の声は汚い言葉使いだな。」
「それは言わないでください。メジロさん。」