2話、アルパカだと告げられました。
「……み…ん…。」
何か聞こえる。
「か…みさ…。かざみさん。」
私を呼んでいる?
私は目が覚め、ばっと起き上がった。
辺りを見渡す。外が暗い、夜まで寝てたのだろうか。そして、私を呼んでいたのは…。
「風見さん、良かった。目が覚めたんだね。」
榊 蓮太郎。よく居眠りをする私のクラスメイトだった。
「榊くん…?わ、私一体…。」
「風見さん。落ち着いて聞いて欲しいんだ。」
榊くんは私の肩を掴み真剣な顔で私の目を見ている。
驚いた。榊くんのそんな顔を見るのは初めてだった。それだけに、事は深刻ということが伝わってきて、返事ができず唾を飲み込んだ。
「風見さんはトラックに轢かれて…。」
言葉に詰まっている。だが変だ。トラックに轢かれたにしては体に痛みがない。
自分の体を見ても白い毛ばかりで傷ひとつない。
「…ん?白い毛?」
「風見さんは…アルパカになったんだ!」
ああ、今日は月が綺麗だなぁ。星もよく観える。あれは何座だったっけ…ひつじ座。いや、アルパカ座だね。
「って、はああああああああ!?アルパカ!?何言ってるんですか!?頭おかしいんじゃないですか!?そんなわけないじゃないですか!!」
「信じられないのも無理ない…。じつは僕は…。あっ風見さん!」
私は逃げ出した。榊くんが怖い。トラックに轢かれる直前に榊くんがアルパカの上に乗っていたのを見ている。それで目が覚めたらアルパカになっていたって怪しさしかない。おそらくトラックは私を轢かなかったのだろう。もしくはギリギリ触れていたか。それにしてもあの冗談は悪質すぎる。
「あれ?走りにくいな…。」
運動は得意ではないがここまで走るのが辛いなんてことはなかった。トラックにギリギリ触れていたダメージかもしれない。
どれくらい走っただろう。呼吸が乱れる。意識も朦朧としてきた。このぐらい走れば追い付いてこないだろう。
一時休憩のためビルのガラスドアに手をついて呼吸を整える。
あれ、ガラスドアの向こうに何か見える?違う。反射で私が映っているんだ。
そこに見える姿は白い毛むくじゃらに長い首。
アルパカだ。
しかも二本足で立っている。その姿はとても、不気味だ。
「はぁ、はぁ、まって、風見さん…。」
榊くんが息を切らしながら走って追ってきた。
「…榊くん…私…。」
「落ち着いて…。僕は敵じゃないよ…。」
私は1つだけ決意した。
「とりあえず四足歩行します。」