夫がいて3人の子持ちの貴婦人なおっさん(合法)
穏やかな昼下がり、美しい草木で彩られた庭園で遊ぶ子どもたちの声が聞こえてくる。
一番上の兄であるアルト、アルトの二つ下の妹メディア、そして末の弟のクレストが仲睦まじく戯れている様子に、思わず笑みがこぼれる。
なんて幸せなんだろう。公爵家に降嫁してからの十年間、麗しの旦那様と愛しい愛しい子どもたちに囲まれて生きてこられたことがこんなにもわたくしの心を温めてくれる。
そんなことを考えていると、子どもたちがわたくしを呼ぶ声がした。
「今行きますよ。」
と、声をかけて日陰から一歩踏み出したその時、わたくしは頭が割れるような頭痛に襲われた。
目の前がふわふわとぼやけ、周囲の音が歪む。
まるで鈍器のようなもので脳幹そのものをを殴りつけられているような激しい痛みに耐えかね、膝をつく。
子どもたちのわたくしを呼ぶ声が反響して聞こえる。
けれど、なんて言っているかなんて分からないまま、わたくしは気を失った。
そして目を覚ますと、わたくしは前世のことを思い出していたのだ。
わたくしの前世は、おじさんだった。
あまりの驚きに言葉がでないとはまさにこの事だろう。
おじさん時代の四十六年間とわたくしとしての二十八年間、その全てを思い返してみてもここまで驚いたことはない。
合計して半世紀以上生きてきて一番の驚きがこれなのは悲しいのか嬉しいのか分かったものではなかった。
驚きのあまり、心配して駆け寄る夫と子どもたちにおっさん時代の口調で語りかけてしまったほどだ。
何故かわたくしは、わたくしが「俺」だったときの記憶ともに感性すらも取り戻してしまったようだった。
現に今もわたくしは夫を愛しいと思うし、同時になんだこの二枚目爆ぜればいいのに、とも感じているのだから。
なんてジレンマを感じさせる喜劇的な状況なのかしら。あまり笑えない。
丁寧な言葉遣いを恥ずかしいけれどもすごいと感じるし、これでいいと思える。
豪奢なドレスを初めて目にしたように戸惑いを感じるし、これが当たり前だとも思える。
とりあえずわたくしは、考えることを放棄して再びベットに身を投げ出した。
長編にしようかなと思っていたうちのいくつかのネタからざっと書き出しています。誤字脱字、変な日本語等々あると思いますので、指摘お願いします。
ちなみにおおまかな予定だと合法貴婦人おじさんが家族とほのぼのしながらちょっと性差に困ったりするコメディっぽいお話になる予定でした。