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第23話 音声データ奪取作戦Ⅱ 生徒会室調査

 放課後になり、小野先輩を探すために校内を歩きまわる。

 探し始めて二十分。音楽に関する調べものをするため、校舎外にある図書館に向かったという情報を得た俺たち。

 俺と野々宮は図書委員に所属してるから、この一ヶ月ほどで、巨大な図書館の地形もだいたい覚えている。音楽関係の書籍が置いてあるエリアも把握済みだ。


 大量の本棚で埋め尽くされる館内を歩くこと数分。

 迷うことなく目的のエリアに向かうと、棚を眺めている男子学生を見つけた。周囲に他の生徒はいないみたいだ。


「あなたが小野先輩ですよね?」

「ん? ……きみたちは?」


 俺たちの方へ振り向いたのは金髪の男子生徒だ。身長は俺と同じくらいで端正な顔付きをしていた。

 どことなく儚げな雰囲気を感じるのは、黄泉川先輩がいなくなったせいだろうか?


「あの、覚えていませんか? 私です。皐月の後輩で、同郷の美鏡蜜柑です」


 美鏡が一歩前に出る。自分が何者なのかを告げると、小野先輩は覇気なく答えた。


「ああ……久し振りだね蜜柑ちゃん。そっちは元気にしていたかな?」

「はい。小野さんはだいぶ雰囲気が変わられたようで」

「そうかもね。ここには偶然……じゃなく、オレに用があって来たのかな?」


 俺が代表となって要件を伝えた。

 今回起きた友明と愛奈を退学。その冤罪を暴こうと自分たちが行動していることを。

 俺の話をやはり儚げな表情で聞いていた小野先輩だったが、視線を逸らして口を開いた。


「どうしてオレにそんなことを?」

「あなたの恋人は過去に汚名を着せられ、学園を退学してしまった。その原因である財前に対し、恨みを抱いてるんじゃないんですか? あいつは今回も同じように罪をでっちあげ、二人の生徒を退学させた。かつての被害者であるあなたなら、この暴挙をなんとかしたいと思わないんですか?」


 俺は相手の目を見て真剣に告げた。この思いが伝わると信じて。

 だが、小野先輩は悲しげな表情を見せると平坦な声で答えた。


「オレは生徒会の副会長なんだよ? 上の立場である会長に反感を持つとでも思っているのかい?」

「生徒会云々よりも、財前家が相手だからなのではありませんか? 財前なら、あなたが育ってきた施設を盾にするでしょう。小野さんはそれを恐れているのでは?」

「……なら、オレがきみたちに協力出来ないのは分かるだろ? そもそも、オレはこの件を会長に密告するかもしれないよ? だというのに軽々と話すとか、警戒心が足りないんじゃないかい?」


 確かに小野先輩の言う通りだ。ここまで話して裏切られる可能性は充分ありえる。


「いえ、あたしは小野先輩を信じてます! きっと、皐月先輩のためにも力を貸してくれるって! 密告なんて間違ったことはしないって!」


 だが、歌恋は小野先輩の目をまっすぐに見つめて自分の想いを伝えた。

 それを聞いて小野先輩が困惑した顔をする。


「……オレを信じる? きみは何を言って……。初めて対面した相手を信じるなんて、それこそ軽率だ」

「なら、あなたと知り合いである私も信じます。それすらも軽率だと切り捨てますか?」

「蜜柑ちゃん……?」

「私は財前が憎いです。皐月を冤罪で退学させたあの男が! ……皐月の件で私と舞人の生き方は変わりました。考え方もです。バディは解散していませんが、あれから私は舞人とリンクすら繋いでいません。あれ以来、あいつと心を通わせることすら出来てない……!」

「そうか……」


 目を伏せる小野先輩は、美鏡の苦悩から吐いた言葉を受け止めていた。

 美鏡の顔を見て、俺は歌恋と再会したときのことを思い出す。あのときの歌恋も、今の美鏡みたいに悔しそうな顔をしていたな……。


「私は財前に後悔させたい。小野さんも同じ気持ちだと信じています。財前に罪を認めさせ、贖罪を求めていると」

「……」

「お願いします小野先輩! 力が貸せないというのなら、せめてカードキーを貸してくれませんか? 必ず無事にお返しします。迷惑だってかけません。音声データが今の俺たちには必要なんです!」


 俺だって無理難題を言ってるのはわかってる。けど、情に訴えてでも音声データを手に入れなければいけないんだ。

 また二人と学園生活を送るためなら、俺は土下座だってするつもりだった。

 きっと、あのときの友明たちもこんな気分だったんだろうな。


「……きみたちの気持ちは分かった。オレにだって皐月を退学させた会長に思うところはあるさ」

「じゃあ、力を貸してもらえるんですか?」

「ああ、オレの負けだよ……。ただし、オレも同行させてもらうよ。きみたちだけに大変な思いをさせる気はないから」

「あ、ありがとうございます!」


 俺は嬉しくなって頭を下げた。

 これで、これで生徒会室に入ることが出来る!




 小野先輩の協力を得た俺たちは、生徒会室に潜入する作戦を実行へと移す。

 五人それぞれが目的の位置に着くと、小野先輩も交えてテレパシーで話し合った。


『こちら西階段。生徒会の人間も含め誰もいません。どうぞ』

『こっちは東階段。階段と廊下。生徒もメイドさんも周囲にはいないよ!』

『中央廊下にも誰一人いないぜ。生徒会室に来ようとする人間は今のところいなそうだな』


 俺と歌恋、美鏡は四階の廊下で待機中だ。ちなみに生徒会室は南棟の四階にある。


 廊下の中央に、棟を横断するための大きい渡り廊下。同様に西側と東側にも渡り廊下があり、三階から昇るための階段も備わっている。

 この三ヶ所が四階にある生徒会室に辿り着くためのルートだ。


『こっちは生徒会室……』

『オレはこのまま、野々宮くんと一緒に生徒会室を調べるよ』


 残る野々宮と小野先輩は、生徒会室へ入ってパソコンを直接調べる役目だ。

 テレパシーで会話をしながら周囲の状況を伺う。ここでミスする訳にはいかないからな。


『ダメだ……見当たらない……。みかがみさんが用意した修復プログラムも使用してみたけど、削除した経歴もない……』

『うん。会長はデータをこのパソコンには入れてないみたいだ。オレたち生徒会のメンバーでも調べられるから、ここには置いてないのかもしれない』

『みたいだね。じゃあ、やっぱり別邸の方に保存してあるのかな?』

『おそらくな。すみません小野先輩。巻き込んでしまったのに空振りで……』


 無理言って付き合ってもらった小野先輩に申し訳なくなり、俺は一言添えて謝る。

 昼の段階で生徒会室の可能性は低いと考えていた。

 しかし、実際に力添えをしてもらったのにダメだったとなると心に来るな……。


『いいよ。気にしないでくれ。別邸となると会長の家だけど、本当に潜入するつもりかい?』

『ええ。データを手に入れるためには致し方ありません。虎穴に入らずんば虎子を得ずですから』


 生徒会室の捜索はここまでだ。データがないとなれば、次の目標は別邸となるな。

 しかし、落胆から気を緩めかけたそのとき――。


『――っ下の階から誰か来ます! ……くっ! 財前です!』

『何っ!?』


 唐突に美鏡からテレパシーが飛んできた。知らされたのは本命の接近。

 生徒会室は四階の西側にあり、美鏡が見張ってる方角だ。階段なら、二十秒あれば部屋に辿り着いちまうか?


『……みかがみさんは渡り廊下を使って逃げて』

『分かりました!』

『野々宮と小野先輩はどうする!?』

『その距離だと、生徒会室から出て走り去るところを見られる可能性が高い。野々宮くんは一旦こちらで匿おうと思う』

『おれなら大丈夫。……もりずみくんとりんどうさんも撤退を……』


 野々宮の言葉に従い、俺は渡り廊下を通って移動した。そのまま渡り切った先にいた歌恋と美鏡に合流する。


「くそっ! あの野郎もう少し遅く来いよ! けど、お前ら二人も無事みたいだな。良かったぜ」

「ええ。ですがすみません。私がもう少し早く気付いていれば……」

「美鏡さんのせいじゃないよ。だから謝らないで」


 俺は二人が無事なことを確認し、野々宮たちの状況に気を配る。


『野々宮たちは無事か?』

『……うん。とりあえずクローゼットに隠れた……』

『オレはパソコンで作業しながら会長と会話をしてる。けどごめん。会話に集中したいから、墓穴を掘らないためにもリンクを切ってくれないかな? ここまできてヘマは出来ない』

『わ、わかりました』


 その申し出を受け入れ、俺は小野先輩とのリンクを切った。


『大丈夫……おれの位置からでも二人の会話は聞こえます。何かあったらお三方に伝えますのでご安心を……』

『頼む野々宮』


 とはいえ、野々宮は財前が部屋を出るまで合流出来ないか。

 このままだと、別邸は野々宮抜きで潜入しないといけない。それだと役割分担に支障が出ちまうな……。


『……おれの代わりにダメもとで有栖を』

『ああ。三人じゃさすがにきつい。先にあいつを探してみるわ』

『野々宮くんも見つからないように気を付けてね!』


 俺たち三人は有栖を探すために校内を散策する。

 まだ残ってるかはわからないが、まずは有栖が所属する一年F組へ向かうことにした。

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