第9話 パーフェクトゲーム
ゲーム内ですが、初の無双フェイズです
アナウンスが終わると同時に、数メートル手前でコウモリのようなモンスターが三体現れた。
おいおい、ガンシューティングなのに人型の敵じゃねえのかよ!?
若干の困惑を抱える俺だったが、銃を構えて速射する。
三発全ての弾がそれぞれに命中。三体のコウモリが落下して消滅した。
えっと、弾は一丁につき二十発か。ベレッタと同じくらいだな。視界内に残弾数が出てくれるのはありがたい!
続けざまに現れた狼型のモンスター二体にも、二発の弾で対応する。
頭を狙い――命中。こちらも最小限の動きで対象を仕留めた。
「うっし! 次っ!」
今度は空中と地上との混成の敵だ。地上にはゴブリンのようなモンスターが三体。空中には目玉の球体に翼と足を生やしたやつが二体羽ばたいている。
ここは、先に飛んでる面倒なやつを落とす。
俺はすぐさま、自分の左右に飛んでる目玉モンスターに照準を合わせてトリガーを引いた。奇しくも、目玉の中心部分をそれぞれの弾丸が撃ち抜く。
「ギャアアァァ!」と奇声を上げながら、撃たれた二体のモンスターが地に落ちて消滅。
だが、その間にゴブリンたちが走り出していた。
俺はそのうちの二体に銃口を向け、冷静に見据えて再度トリガーを引く。
やつらが持っている棍棒の射程内に入るよりも先に、その頭を撃ち抜いた。
そして残りの一体が跳躍して棍棒を振りかざす。
「残念。そいつには当たってやれねえわ」
水夜蛟。俺が扱える『気』によって神経を研磨させる技。
それを用い、俺は一瞬でゴブリンの背後へ回り込んだ。
「ギッ!?」
「チェックメイト」
パンッ! という乾いた音と共にその後頭部に風穴が開いた。
「ふう……」
間髪入れず、後方に大型の気配が現れる。
すかさず、振り向きざまに一発。放たれた銃弾は吸い込まれるように突き進み、ミノタウロスと思わしき敵の眉間を撃ち貫いた。
立ち尽くす巨体は、斧を振り上げた体勢のまま後ろへ崩れ、轟音を立てて倒れる。
そのミノタウロスも同様に光となって消えた。
「へへっ! ヘッドショット&ワンショットキルッ! ってな!」
やべえな。今のところパーフェクトゲームじゃねえか? 全ての敵を一発で沈めたとか、嬉しくて仕方ねえぜ。
ルーム外には大型のモニターが設置されており、中の様子が映し出されている。
歌恋たち以外にも、何人もの学生たちが駿のプレイを見ていた。
「マジかよ!? ミノタウロスも一撃で倒したぞ!?」
「あれって確か、転校生の守住ってやつだよな? すっげー!」
「このゲーム初プレイでヘッドショット連発って、あいつナニモンだよ?」
そんな学生たちの驚きの声があがる中、友明たちも感嘆の声を漏らす。
「すごいよ駿くん! まさかここまで上手いなんて!」
「まさに一撃必殺……!」
「……格闘技に加え、この射撃センスはすごいですわね」
「ねえねえカレンちゃん。私ずっと疑問に思ってたのだけど、シュンくんってかなり変わってない? 格闘技習ってたのに、オタクな上にゲームが上手いって変。普通は遊んでる時間なかったり、習い事しながら趣味に没頭出来る人って少ないよね?」
純粋な疑問をぶつける愛奈。
普通に考えれば、格闘技を習っていた人間がゲームをやり込んでいるのはおかしな話だ。
だが、それには深い理由があった。
「えっと……そ、だよね。普通じゃないよね……」
「……歌恋?」
それに歌恋は言葉を濁してしまう。
言うべきか、言わないべきか。これは自分一人だけの問題ではない。駿とも話し合って決めないといけない話題なのだ。
(友明くんたちは、あたしの退学の話であんなに必死になってくれた。カサルナちゃんたちも、色々手助けしてくれた大切な友達。言わなきゃいけないよね。あたしたちに何があって、駿ちゃんがゲームや漫画とかにのめり込んだのかを……)
少しだけ目を伏せ、歌恋が意を決して愛奈を見つめた。
「ごめん愛奈ちゃん。このゲームが終わったら、駿ちゃんに確認を取ってそのことについて話そうと思う。駿ちゃんがなんで、そんな趣味に目覚めたのかを。その理由を……」
「え? ……あ、うん?」
何故か真剣な表情をしている歌恋。
愛奈を含んだ全員が、歌恋のその表情に疑問を感じていた。
「ちっ! 片方の弾が切れたか……! リロード!」
俺は目の前に現れたマガジンを確認しながら、マガジンキャッチボタンを押し、用済みとなった弾倉を落下させた。
新たなマガジンとグリップの軸位置を合わせると、俺は上げた膝に叩きつけるようにして乱暴に装填を完了させる。
そこからもう片方の二の腕の内側でスライダを動かし、装填した銃のトリガーを無理矢理引いた。
目の前に迫っていたオークを装填した銃で撃ち。スライダを動かした腕の銃で、飛んでいた側面のハーピーを撃ち抜く。
再び、一発ずつの弾丸でそれぞれの敵を倒せることが出来た。
「――ふう! あっぶねえ! 今のちょっとやばかったぜ」
額の汗を拭いながら、もう片方のマガジンも入れ替える。
しかし、そこからしばらくの間、敵が現れることはなかった。
シーンと静まる周囲。気を尖らせて警戒する俺の視覚に『WARNING!!』の赤い文字が大量に浮かんだ。
ボス戦って訳か。このままノーダメージでクリアしてやるよ!
現れたのは、床に出来た影から這い出る化け物。
異形な姿を持つ黒いそれは、獣とも竜とも呼べる形状だった。
「さっさとお前を倒して、このゲームを終わらせてやる!」
目の前で「グルルゥッ!」と唸り声をあげる化け物。そいつは跳躍し、壁へと張り付く。
動きを冷静に追いながら俺は銃弾を当てていく。ヘッドショットを何発も当てるが、敵のHPゲージはなかなか減らない。
てことは、弱点がどこかにあるタイプか……まずはそこを探らねえと――くっ!?
壁に張り付いていた化け物がこっち目掛けて強襲してきた。鋭い爪で切り裂こうとしてくるが、なんとか横に飛び退いて回避する。
そのすがら弾を当てていると、胸部にあるクリスタルへ命中した。当たった瞬間、化け物が唸り声をあげて怯むを確認する。
「OK! そこかっ!」
全弾を撃ち尽くすように俺は両手のハンドガンを撃ち続けた。
しかし、削り切る前に壁に張り付かれてしまった。そのせいで胸部のクリスタルが隠れてしまう。
壁に張り付いてる間に両方の銃をリロードし、もう一度仕掛けてくるのを待ち続ける。
クリスタルへ当てたときのHPゲージの減る量はわかった。上手くいけば、次で削り切れる。なら、タイムアタック狙いで賭けてみるのもありだな。
俺がニヤリと笑みを浮かべると同時に化け物が飛びかかってきた。
「グガアアアァァッ!!」
「落ちろおおぉぉおおおっ!!」
胸部のクリスタルへ向け、俺は撃てる限りの弾丸を撃ち放つ。
それでも止まらぬ化け物は、振り上げた腕を勢い良く下ろし――接触する直前で霧散する光となって消滅した。
「……はあ、はあ……俺の勝ちだ」
光が舞う中、俺は笑みを浮かべて静かに呟いた。
「ゲームクリア。プレイヤー守住駿様お疲れ様でした。戦績を確認。オールヒット、クイックタイム、ノーダメージ、ヘッドショットキルによるボーナスを加算…………スコア二万七千三百点。現段階で第一位のスコアを叩き出しました。おめでとうございます。あなたがトップランカーです」
「おお……いよっしゃああぁあっ!」
まさにパーフェクトゲームだ。俺は初挑戦でトップスコアでゲームをクリアした。
ゲートから出てきた俺をみんなが盛大に歓迎する。
だが、そんな中で歌恋一人が、神妙な顔付きで俺のことを出迎えた。
「駿ちゃん」
「ん? どうした歌恋?」
「愛奈ちゃんがね、駿ちゃんの趣味に対して疑問を抱いてたの。他のみんなも言わないけど、きっとそうだと思う」
それを聞いて、友明たちはなんとも言えない顔をしていた。
「そのこともを含めて話そうと思うの。あの日、クリスマスに何があったのかを」
「……そうか。お前は良いのか? 話す覚悟が出来たってことで良いんだな?」
「うん。みんなには言いたい。ちゃんと知ってもらいたい」
歌恋の真剣な目が生半可な気持ちで言ってるんじゃないと告げていた。
そうか。やっと、こいつらに話せるときが来たって訳か。
「わかった。なら人がいないとこに移動するか。俺たちが過去にどんなことを体験したのか話すために。ちょっとばかり長くなると思うけど、みんなは良いか?」
俺は四人の顔を順に見ながら聞く。それに対して四人は頷いて答えた。
俺たちは人気のない休憩スペースまで移動し、輪になってテーブルを囲んだ。
「んじゃ、これから俺と歌恋の過去を語るとするか。俺たちの生き方が変わった、あのクリスマスの話を……」




