第8話 死に損ない少年はオタク系?
時刻は午後の二時を回ったところ。日もかなり高くなり、暖かな日差しが降り注いでいる。
お腹がふくれて眠くなってくる時間だな。
そんな眠気がチラつく俺たちが向かったのは予定にあったゲームセンター。
体を動かすゲームもあるため、食後の運動と眠気覚ましも兼ねている。
「ここがこの市街地のゲーセンか。ゲーセンと考えると、やっぱりここもでかいなー」
大型のアミューズメント施設くらいの広さ。高さも五階建ての建物になっている。
その理由は単純明快、ここが三校舎分の学生を中心とした島だからだ。利用する需要者が多いことで、それ相応に建物が大型化したってことだな。
「どう駿くん? 結構大きいでしょ?」
「ああ。こんだけでかいと建物内の予想がつかねえな。やべえ……すっげーワクワクしてきた!」
「もりずみ君のテンションが上がった……!」
「おう! 昨日から楽しみにしてたからな。さっそく、VRタイプのゲームをやろうぜ!」
テンションが上がっていた俺は先頭に立って歩き出す。
「ふう、駿は子供みたいにはしゃいでいますわね。なぜあそこまでテンションが高くなれるのか……」
「あ、あはは……」
「ルナちゃんは食べ過ぎでテンションダウン中なのであったー」
俺のあとに続いて五人もゲーセンの中に入ってくる。
店内は綺麗に清掃され、近代的な内装になっていた。入ってすぐのところにカウンターがあり、個人情報の登録を行うことで入場が許可される仕組みだ。
俺たち学生はパポス内に個人情報のデータが登録してあるので、素通りでカウンターを通り過ぎることが出来た。
少し進むと、所狭しと設置された媒体の前に私服だったり学生服を着てるやつらが陣取っている。それを横目に眺めながら歩いてると、俺はプライズコーナーを見つけてしまった。
「……ん? おお! これって電装戦隊デジタレンジャーのフィギュアじゃねえか! ははっ……懐かしいなぁ……。ん? こっちには仮面ドライバーシリーズの雷王変身ベルト!? マジか……うちの地元じゃ中古も置いてないんだよなあ。良いなぁ、欲しいなぁ……」
ヒーロー物のグッズが景品として置いてあった。
こういうのは島に来てから買ってなかったからなぁ。俺一人なら余裕で連コするんだが……。
「えっと、駿くんってヒーロー系の番組が好きだったり……?」
「あ、うん。駿ちゃんはそういうの好きだよ」
「なんというか、わたくしには分からない趣味ですわね」
後ろからそんな会話が聞こえてきた。そうだよ。ヒーロー物好きなんだよ。悪いか!
「ってこっちは……パラキュアのパラローズのフィギュア!? しかもこれ、かなり精巧に出来てやがる……! 特に服のディテールがきめ細かいな……素晴らしい!!」
「もりずみ君って、むしろオタク?」
「あ、うん……駿ちゃんはそういうのも理解あるかも……」
「男の子がパラキュア好きなのは、私にもわからない趣味なのだ」
パラキュアはストーリー展開熱いだろ! スーパーでヒーローなタイムの一員だぞ!
ったく、これだから……って、俺もなんだかんだでオタク歴は短いんだけどな。
「えっと駿くん。プライズコーナーもいいけど、先にVRゲームやるんじゃないの?」
「ああ、そうだったな。すまんみんな。目的を見失っちまってた」
留まりたい思いを押し殺す。今度は友明が先導する形で俺たちは店内を進んだ。
「VRゲームがあるのは三階だからエレベーターを使おうか」
「ですわね。歩いて三階まで行きたくありませんわ」
「カサルナちゃん大丈夫? おなか辛くない?」
「お気遣いありがとうございます歌恋。お腹は大丈夫ですわ。とは言え、歩いて昇りたくないのも確かでしてよ」
「まあ食い過ぎの榊坂はともかく、腹がふくれてると階段で行きたくなくなるわな」
なんてプチ愚痴大会になりながらもエレベーターへ乗り込む。乗ったエレベーターは音もなく三階に到達した。
ドアが開くとラウンジにはいくつかのゲートが見えた。
真っ先にドアから飛び出した愛奈を筆頭にし、俺たちもエレベーターから降りていく。
「到着ー! ここがVRエリアなのであったー!」
「ここねさんもテンション高い……」
「愛ちゃんがテンション高いのはいつも通りだよ」
「しっかし、複数入り口があるみたいだが、どんな内容のやつがあるんだ?」
俺は周囲を見渡すように確認する。VRSTG、VRACTなどの文字がゲートに書かれていた。
「リンクバトルの経験者としては、単独でのシミュレーター訓練と例えるのが正しいね。周囲三百六十度に現れる敵を近接武器や遠距離武器を使用して倒すんだよ」
「ゲート毎に使用出来る武器とか敵が違う感じか?」
「そだよ。ファンタジーな世界のモンスターさんを倒すような内容。銃なら、対人やゾンビさんを撃ったりするのもあるの」
友明や歌恋が説明をしてくれたが、当の俺はそわそわとした様子で居ても立っても居られない状態だった。
さっそく、VRSTGというガンシューティングゲームを選ぶために歩き出す。
「……? もりずみ君は格闘技のアクションの方じゃないの……?」
「まあ、それもありなんだがな。組手なんて今まで飽きるほどしちまってる。やるのなら、ゲームだから出来る銃撃戦とかしたいじゃねえか」
「てか、シュンくんってガンシューやれるべさ?」
「うん。駿ちゃんはガンシューティングうまいよ」
そんな歌恋たちの声を聞きつつ、俺はゲートを一人で潜った。
「ようこそVRSTGの世界へ。……あなたはまだ、このゲームをプレイした経験はありませんね?」
システムアナウンスがあるのはありがたいな。未経験なのを知っているのは、パポス内にデータが記録されるからか?
アナウンスの質問に対し、俺は「そうだ」と答える。
「では、最初に説明を致します。このゲームは全方位から迫りくる敵を撃ち倒すバーチャルリアリティー・ガンシューティングゲームになります。まずはウインドウに記載されている中から、あなたが使用したい武器を選んでください」
目の前にウインドウパネルが展開される。そこにはアサルトライフルやショットガンなどの銃が表示されていた。
「俺の選ぶ銃は……あ! なあ、このゲームでのリロードはどう行うんだ?」
「リロードは、その旨を発言することで可能となります。手元に新たな弾倉が現れますので、実際に入れ替えることで完了します」
「なるほど。本物の銃と変わらない感じか。試しにハンドガンを一丁出してくれないか?」
俺の頼みに「分かりました。ハンドガンを転送します」とアナウンスが告げ、手の平に銃が現れた。
どうやら、リンクバトルのように任意の場所に転送されるみたいだな。
その手に握る感触や重みを確かめながら俺は「リロード」と言う。
声に合わせ、目の前に転送されたマガジン。俺はそれを手に取った。
下手をすれば取り損なってリロードが失敗するのか。と思いつつマガジンを差し替える。
……引き抜かれたマガジンは即座に消滅する仕組みか。
「オーケーわかった。ハンドガンをもう一丁出してくれ」
「了解しました」
新たに現れたハンドガンをもう片方の手に持ち、俺は二つのハンドガンを構えた。
「二丁のハンドガンで構いませんか? リロードなどで不便を感じる可能性が高くなります」
「問題ねえよ。ガンシューティングはハンドガン型のコントローラーが基本だからな。これじゃねえとしっくりこないんだ」
手に持つ二丁の感覚を確かめながら俺はそう言った。
「分かりました。では、続けてルールの説明をさせてもらいます。あらゆる方向からランダムに敵が出現しますので、銃を使用して全て倒してください。弾丸はデータ上のものなので、実際には射出されておりません。なので、安全に取り扱える仕様となっています。敵から攻撃を受けることで、あなたはダメージを受けてしまいます。一定値以上のダメージを受けてしまうと、その時点でゲームが終了しますのでお気を付けください」
アナウンスの説明が淡々と流れる。それを聞きながら、俺は軽く体を動かして準備運動をした。
「敵を倒したり基準を満たすとポイントが入ります。ハイスコアを目指して頑張ってください。では、これよりゲームを開始します。スリー……ツー……ワン……ゲームスタート」
その言葉を聞き、俺は二丁のハンドガンを改めて構えた。
「さあ、どこからでも来やがれ!」




