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第24話 決戦に向けての準備

 ――翌日の土曜日。


 試合が決定したことで街に出かける予定は白紙になった。対戦は明日だ。俺が島を訪れて丁度一週間となる日でもある。

 八百長を取り下げ、友明たちとの真剣勝負となった今。俺たちは校庭の隅っこに集って作戦を練ろうするところだ。


「よし、対バカップルへの作戦を練るぞ。あいつらと一緒に過ごしてきたお前なら、バトルスタイルや得意な技について少しは知ってるよな?」

「うん! 愛奈ちゃんとはバディとして一緒に戦ったし。友明くんたちがバディを組んでからのバトルも見てるよ」

「んじゃ、その辺から情報共有だな」


 目配りをして俺はリンクを繋いだ。

 共有により、歌恋が浮かべたイメージが俺の頭に流れ込んでくる。


『愛奈がアシスタスタイルで、防御系のスキルの使い手。友明はアサルトで……刀身が伸びる剣だ?』

『友明くんが使う武器はちょっと変わってるの。刀身にワイヤーが接続されてて、友明くんの意思で展開、伸縮が可能な武器なんだよ』

『……なるほど。マニアックな武器だな。蛇腹剣ってやつか』


 蛇腹剣。文字通り、蛇の腹のような形をした刀身の剣だ。小型の複数の刃をワイヤーで数珠繋ぎのようにした代物。


 通常の剣のように振るっての近接戦に加え、刀身を伸ばすことで、ムチのようにしならせながらの遠距離攻撃も可能だ。

 相手の人数に関係なく戦うことが可能であり、使い手次第では強力な武器になる。


「愛奈ちゃんはシールド系統のスキルに重点を置いてる。その中で特にやっかいなのが……バリアブルウォールだよ」

「バリアブルウォール?」

「そのスキルはね。シールド系統の全スキルを取得して、初めて覚えることが出来るものなの」

「確か、スキルツリー型のシステムなんだよな? シールド系をマスターしてから覚えれるスキルか」


 スキルツリー。枝分かれするスキルを取得していくことで、徐々に強力なスキルを覚えていくことが出来るシステムだな。

 武器であるアーマメント。防具であるエクステリア。更に、方向性を定めるスタイル。

 これら三種類のスキルツリーから多種多彩な組み合わせが作れるらしい。


 後衛である愛奈の場合だと、アーマメントへのポイントの振りは必要ない。よって、残りの二つに集中させることが可能って寸法だ。

 分散しないおかげで、より早く理想の組み合わせを目指せるのが強み。それが、シールド系のスキルをマスターしやすくさせた要因だろう。


 俺は静かに目を伏せる。

 おそらく、そのスキル自体が愛奈の切り札になるはずだ。俺は目を開き。


「そのスキルの効果は?」

「一定値以下のダメージを無効化する壁型のシールドだよ。再使用までは一分。展開後は、発動者の意志で可変させることが出来るんだけど、任意でシールドを消すことは不可能」

「ん? 一定値以下を無効?」


 俺は思わず聞き返していた。

 値がどれほどのものを指すのかはわからないが、それ以上の威力で攻撃をすれば良いだけじゃないのか? しかも、消せないのは欠点のように思える。


 だというのに、それが最終的に取得出来るスキルとしてはあまり強そうには思えない、と俺は素直な感想を抱いた。


「駿ちゃんの反応はわかるよ。強いとは思えないよね? でも、リンクバトルには反衝撃機構が備わっているんだよ」

「反衝撃か……って、まさか!」

「うん。どれだけ強力な攻撃を放とうとしても、システムが人体に多大な影響を与えると判断する威力だった場合、ヒット時の衝撃は和らいでしまう。それはシールド越しでも変わらないの。シールドを破壊してなお強力な攻撃だと判断されたら、シールドへの接触時に先に緩和される」


 それを聞いて俺の頬を汗が伝う。予想通りならまずいな……。


「バリアブルウォールを突破することは、現状不可能ってことか?」

「当たりだよ。バリアブルウォールは実質、()()()()()()()()()()()なの」


 どんな必殺技を放とうが必ず受け切るシールド。一撃一撃に重点を置く我禅流の技とは相性が悪すぎる……。


 俺が苦々しく息を吐く姿を見たせいか、歌恋の顔が曇ったように見えた。

 弱気になるな俺! あいつが頼りにする俺がこんなんじゃ示しがつかねえだろ!


「すまん歌恋。二人でなら勝てるって! 不安がらせて悪かった」

「あぅ……しゅ、駿ちゃん……」


 俺は歌恋の頭を優しく撫でた。この島に来てからも変わらない行為。昔から不安がるこいつの頭を撫でたもんだ。

 歌恋はくすぐったそうに目を細める。さっきまでの不安感は消えたみたいだな。


「あらあら、妬けてしまいますわね。わたくしも撫でてもらうなんてことを殿方からして欲しいですわ」

「へ? カサルナちゃん!?」


 木の陰に隠れてたらしい榊坂が顔を覗かせる。そこから楽しそうな表情で俺たちの側まで寄ってきた。


「思うんだが、どいつもこいつもタイミング良く現れるのは狙ってんのか?」


 二回目だ。歌恋に何かをしているときに誰かが来る。

 数日で二回目となると、なんか計られてるように思えてならない。


「ええ。計っていましたわ。話が一段落着くまでは、と。ですが、そこで頭を撫で始めたのは駿ではありませんの」

「ぐっ……悔しいが言い返せねえ」

「うふふ。これでも社交性と受け答えの経験は富んでいる、と自負してますもの」


 制服のスカートの裾を摘み、片足を引きながら頭を下げる姿は、悔しいが令嬢そのものだ。


「えっと、どうしてカサルナちゃんがここに?」

「愛奈から聞いたのですわ。理事会の件も込みで。友人の大事ですもの。力添えをしたいと思って参上した次第……では納得する答えになりません?」

「良いのかよ? 無関係のお前が俺らに肩入れしても?」

「あら? 今回の件は歌恋の実力を示すべきもの。『歌恋の実力を測ること』が目的ならば、あなたたちにどう肩入れしようが力を貸そうが、問題ないのではなくて?」


 至極当然のように言い切る榊坂。

 確かに実力を測るという項目一点を見れば、試合前に強くなることそのものに規制はないと言えるな。


「という訳で、悩めるお二人にこんなものを用意致しましたわ!」


 榊坂はそう言ってパポスを操作する。

 こんなものってなんだ? と思っていると俺たちのルネに通知が届いた。


「URL? どこのサイトのだろう……?」

「いかがわしいのじゃないよな?」


 俺が警戒するを見て、榊坂が可笑しそうに笑みを浮かべる。疑心暗鬼になってるのが滑稽ってか?


「……あ! これってリンクサポートセンターのURLだよ!」

「なんだそれ?」

「えっとね、ここはランクポイントを交換出来るサイトなの。ポイントと引き換えに未登録のエクステリアとかを入手出来るんだよ」


 エクステリアやアーマメントの強化自体はパポスの操作で行え、装備も初期型のものは用意されている。

 けど、強力なエクステリアやアーマメントを入手するには、このサイトを活用する必要があるってことか。

 お? オプションパーツって装備品もあるみたいだな。


「色々な装備がカタログみたいに載ってる訳か。やべえ、見てるとテンション上がってきた!」


 歌恋の説明を聞きつつ、URLを開いてサイト内のページを閲覧する俺。

 ゲームアバターなどのセッティングを考えるのが好きだから、色々な組み合わせを考えるの好きなんだよな。


「でも、まだあたしたちのポイント少ないから見るだけになっちゃうかも」

「あ……」


 鹿島との勝負で手に入れたポイントは七百十三ポイントだった。歌恋の場合、すでに持っていた分を合わせても二千に届かないらしい。

 エクステリアは最低でも五千。アーマメントでも二千は必要だ。

 現在のポイントだと、歌恋がオプションパーツを二個交換出来るかってところ。


「じゃあ、悩む意味ねえな。残念だ。てか、榊坂はこれを見て参考にでもしろって言いたいのか?」

「参考に? いえいえ、お得なものがあるので是非(ぜひ)にもと思いまして」


 榊坂の言葉を聞いて「お得なもの?」と俺たちは揃って首を傾げた。


「右上に検索ワードを入力出来る項目がありますわよね? 実は裏メニューで、そこに『SK2ZK―2SRN』と入力してくださいな」

「は? なんかの暗号なのか? てか、なんでお前がそんな――」

「いいからいいから。さっさと入力しなさいなー」


 俺は、少々強引な進められ方に疑問を感じながらも指示に従う。

 言われた通りに検索を行うと――今までとは違うページへと飛ばされた。


 『試作用オプションパーツ』と題されたそのページには、今まで同様にカタログの一覧が掲載されている。

 しかし、それまで見ていたものと比べると異質な、かつ激安な引き換えポイントで記載されたパーツの数々が目に付いた。


「なんだよこれ? なあ、榊坂。これは一体どういう――」


 画面から目を離し、振り返って問いかけるが。


「あれ? あいつどこ行ったよ?」

「ふぇ? あれ? ホントだ。カサルナちゃんが消えちゃった」


 あいつは忽然と消えていた。

 周囲を見渡すがどこにも榊坂の姿はない。まるで、初めからそこにはいなかったのかのように消えてしまった。

 榊坂が現れた植林以外は、開けた運動場なので隠れるようなほぼ場所はない。


「…………あ? あいつの気が探れねえ。少なくとも、木の裏も込みで数十メートルにはいねえぞ」

「え? うそ!?」


 気を集中して榊坂を探すが見つけられなかった。歌恋も探ったが結果は同じだ。


「雲隠れするかのように消えやがった。ナニモンなんだよあいつ……」

「確かに何者なんだろ? お金持ちのお嬢様なのは知ってるけど、それ以外のことはほとんど知らないよね?」


 訳がわからんと俺は頭を掻く。歌恋も口元に手を当てて考え込んでいた。

 しかし、悩んでても埒が明かない。榊坂も気になるが、俺たちはパポスの方へ意識を戻す。


「なあ、あいつが消えたのはこのページにウイルス仕掛けてるからじゃないよな?」

「不安なのはわかるけど、友達は信用しないとダメだよ駿ちゃん。でもこれ、試作型ってなんだろ? 開発段階のパーツなのかな?」

「うーん……なんかこう、試作型ってピーキーなイメージがあるもんな。ロボ系でバカ強かったりとか」


 機動なんやらとか、量産機より強いのがデフォだよな。


「言いたいことはわかるけど、駿ちゃんはアニメとかゲームに影響受けすぎだよ。……えと、試作型ホバーシステムに改良型超伝導磁石? うーん、何がなんなのかわかんない」


 各パーツを確認しながら歌恋がパーツ名を挙げていく。


「要は、この中から俺たちが使えそうなのを選んでみろってことだろ?」

「たぶん、そうだと思う」

「んじゃまあ、じっくり探すとしますか」


 終えと歌恋は少し離れた芝生に座り、あれやこれやと話し合いを始めた。




「ははっ! こいつはすげえな!」

「……うん! こ、これなら、もしかしたら……!」


 運動場に一陣の風が吹き抜けた。それを引き起こした歌恋が、動きを止めて恍惚としている。

 なんだかんだで各種パーツを確認し、必要なものを何点かピックアップした俺たち。

 今の風は、そのパーツを試用した結果だ。


 エクステリアなどのを転送した歌恋が俺の元へ駆け寄ってくる。


「今のあたしの実力を考えると、これがベストな組み合わせだよね?」

「ああ、おそらくな。あとはどの場面で使うかだな」


 歌恋が使用したのは『改良型超電導磁石』と『ガイドウェイ・スカート』だ。


 超電導磁石――超伝導体を用いて電気抵抗をゼロにし、発熱に関する問題を解決した磁石のことだ。

 電気抵抗での発熱が発生しないから、永遠と電気を流し続けることが出来るらしい。

 要するに、永久的に強力な磁力を生み出すことが可能な磁石だな。


 スカートの方は防御用として採用した。歌恋のエクステリアは腰部のアーマーが簡易的な軽装だから、補助的な役割で選んだものだ。

 五十センチはある板状のパーツで、内側にはコイルのようなものが装着されている。

 装備時には、板がスカート状に展開されて腰部アーマーのようになる仕組みだぜ。


「鹿島さんのときに浮上した問題。カサルナちゃんたちのような戦い方」

「んで、友明の戦闘データを元にするとこれがベターだな」


 浮上した問題とは、クロスレンジへ近づく手段だ。戦い方は榊坂みたいな突進力。

 技の性質上、武術での戦いはどうしても接近戦を強いられる。クロスレンジが基本の歌恋には、急接近する方法が必要不可欠だった。


「けど、こいつは切り札だ。パーツを使い捨てる作戦上、使えるのは試合中に一回限り。愛奈のシールドの攻略法も考えなきゃ、使えても意味がないけどな」

「うん! 上手くいけば一発逆転が可能な切り札になるけど、バリアブルウォールを突破しないと防がれちゃうもんね。それに、使うタイミングを考えないとこっちが不利になっちゃう」


 次の戦いは、歌恋がこの学園に必要か査定する意味が含まれるらしい。

 つまり勝敗だけじゃなく、理事会へ印象付けるような戦い方をし、なおかつ格上相手に優位性を示せるかがカギとなる訳だな。

 このパーツなら、きっとそれらを満たすことが出来るはずだ。


 日が暮れるまでの間、俺たちはパーツの調整やスキルの一部の取得、友明たちへの対策を練り続けた。

 そして――ついに決戦の日が訪れる。

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