行方不明
ー一日目ー
なんてことのない日常だった。
だが学校から帰り終わった後の家で地区の放送を聞いた。
「○○××さんが行方不明です。服装は赤のジャー…」
行方不明か…
ー二日目ー
「おい、大介!」
「なんだよ、騒がしいな遼太郎」
その顔は希望であふれていた。
「今日!新しく出来た喫茶店行こうぜ!」
えっ、でも…
「遼太郎、ゴメン!今日はバイトが…」
あの顔が嘘のように暗くなっていく
「そっか…また次な!」
「おぅ!」
「あっ、それよりさ…」
俺、佐藤 大介の日常は平和だ…………った。
ー三日目ー
遼太郎は学校を休んだ。
どうせ、またサボってる、はずだ。
ー三日目 夜 ー
家に帰ると遼太郎から着信があっていた。
狂ったように…
なぜなら
12:13 不在
が四十個あったのだ。
一分間の間に四十回。
反射的に思った。
かけ直さなければ
プルルル ガチャ
予想以上にとるのが早かった。
待っていたかのように…
「もしもし…大介君…?」
俺はピアノをやっていたため部屋は完全防音だ。
そのせいか、明らかに男の声ではない声に動揺した。
だがこの声は…
「遼太郎のお母さん?」
「大介君、窓…開けてみて」
ぞっとした。
TVでよく見るように電柱のそばに立ってたりするのかと思った。
だが何故か不思議と恐怖心はなかった。
ガラガラガラ
開けて真っ先に飛び込んできたのは電柱でも人でも臭いでもなかった。
あったのは…
聞きなれた親友の名前。
「石田 遼太郎さんが行方不明です。服装は黒のズボ…」
「嘘…だろ…」
「学校の先生にたずねても
出席は取れてるけど見てない、って
授業の前に休み確認するから確実に教室内に居たけど意識してなかったって
誰に聞いてもそういうのよ!!ねぇ、大介君知らない?」
いや居たよ…確かに…
「大介君?」
だって一緒に喋ったろ…
「大介君!!」
喫茶店の話だって…
「すいません、切ります!」
「ちょ、ちょっとま…」
ブチ! ツーツーツーツー
探しに…探しに行かなきゃ
俺だけがあいつの存在を判ってるんだから
きっときっと…喫茶店!
「はぁーハァー、閉まってる」
辺りは店がなく。車が通りがなくて真っ暗だ。
ガサ
ん?
ガサガサ
喫茶店の…裏か?
川…だな、いや橋になってるな
そうだ、絶対そうだ
「遼太郎」
「大…すけ?」
「やっぱりお前!」
「大介…俺無理だ」
「何を…」
「誰に何を言っても無視される!
聞こえてないのかよ!親も俺が居るのに居ない居ないって!」
何…言ってるんだ
「お前だけに見えても、仕方ないんだよ!!」
橋に足をかける。
やめろよ…やめろ、やめろ!!
「遼太郎!」
バチャーーン!
甲高い水の音が鳴り響いた。
ー四日目ー
朝、遼太郎が死体として発見された。
学校で教師が何か言っていたが、何を言っているのか
分からなかった
ー四日目 夜 ー
何もない日常のはずだったのに…
昨日のことが鮮明に思い出される。
「母さん!俺!」
「…」
「母さん?」
電話…か?でも反応くらいしてくれても…
「もしもし!息子が居ないんです!探してください!」
「何言って…母さん!ここだよ!母さん!俺は…」
「石田 大介さんが行方不明です。服装は青の上着…」