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プロローグ
初めて考えた話をようやく形にすることができました。
お楽しみいただけたら嬉しいです。
いつもと違う。
ザントが感じたのは、違和感だった。
獣たちが騒いでいる。そのせいで、今日の狩りはうまく進んでいない。
緊張?だが、自分たちよりも強いものに怯えている気配はない。
(・・・何か、異物が迷い込んだか)
誰かが家畜用にと持ち込んだ動物が逃げたか何かだろう。
(なんにせよ、迷惑な話だ)
獣の動きから、異物の場所を探る。
さっさと取り除くに限る。
程なくして、ザントは倒れていたそれを見つけた。
「・・・人間?」
横たわり、動けなくなっているのは人間。しかも、まだ少女と呼んでもおかしくない年頃に見える。
穴の開いた靴、泥だらけの服を見るに、歩き疲れて倒れたか。見たところ、外傷はなさそうだ。
近付いてみると、柔らかそうな栗色の髪の間から、顔が見えた。息がある。
「・・・ちっ。めんどくせぇな」
ザントは心底いやそうな顔をした。
「人間の運び方なんか知らねえぞ」
そう独りごちると、いつも仕留めた獣を運ぶ時のように、少女を右肩に担いで歩きだしたのだった。