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進化と魔法

二十一階層からのモンスターはみんな魔法を使った。

ミミックは観察する事で、違うけど同じ事に気付いた。

違うけど痛くない魔法、違うけど痛い魔法だ。

痛くない魔法は、仲間に当てるのと敵に当てるのがある。

仲間に当てる魔法は早くなったり力持ちになったりする魔法で、敵に当てる魔法は遅くしたり脆くしたりする魔法だ。


違うけど痛い魔法はビリビリしたりカチカチになったりアチチな炎と違う魔法だ。

ゴブリンは痛い魔法を使ってくるし、スケルトンは痛くないけど見えなくなったり遅くなる魔法を使ってくる。

大きなネズミは早くなったり力持ちになる魔法を使ってくる。

他の魔法は使わないから、きっと使えないのだ。

ミミックはそう判断した、ミミックが分類と種類分けをした瞬間である。


魔法は恐いなと思いながらミミックはダンジョンを攻略していく。

階段を見つけてはガタゴト落ちて行き、擬態して食べる生活だ。

狙うのは攻撃してこないスケルトンである。

そうして光る石やスケルトンを食べていると、ある日眠くなった。


「ミミク……」


これは……と、ミミックは確信した。

知っているぞ、コイツは進化って奴だ。

ミミックは知らないことだが、自分よりも階級が上か同じ物を食べる事でモンスターは経験値を溜めて進化する事が出来る。

直前に食べたスケルトンはミミックよりも階層が上のスケルトンライダーだったので経験値がたくさんあった。

極めて発生条件が難しいが、他の四足歩行モンスターの骨が近くにある時に進化すると発生するモンスターだ。

このスケルトン進化前がネズミと相打ちになり、その時に偶然経験値が溜まって誕生したのがスケルトンライダーだった。

なんか、いつもより量が多いなと思ったスケルトンは自分より階級が実は上のモンスターだったのだ。


そしてミミックはゆっくりと意識を飛ばす。

身体の中に溜まっていた熱、経験値が消えていく。

冷えるように抜けていく、進化の為に消費されたのだ。

進化、それは喰らった魂を用いて限界を超える現象。

階級突破とも呼ばれるそれは、ミミックの願いに沿って進化を果たす。

魔法が怖いという苦手意識に従い、肉体を変化させモンスターとしての格を一段階上昇させた。


次の日、目が覚めるとミミックは自分の身体に違和感を感じた。


「ミミ?」


何か、重いのである。

蓋が、ちょっと重いのだ。

何だろうかと蓋を開けて目で追ってみる。

しかし、自分が進むと蓋は逃げるように動き見えそうで見えない。


「ミミー!」


ミミックは無駄と分かるまで自分の蓋を追い掛けて、その場で回った。

無駄と理解したミミックは別の方法を取る事にした。

それは、武器を合成して反射させて見る方法だ。

ミノタウロスがやってた奴である方法で、ミミックは保管していた剣を吐きだした。

カランコロンと落ちた剣を上から覗く。


「ミミィ?クゥゥゥ!?」


何だこれ?うおおお!ミミックに驚愕が走る。

なんと、自分の蓋に大きな石が付いていたのだ。

ゴツゴツでキラキラする赤い石だ。

何か、ピカピカなので強そうである。

ミミックの理論がそう判断した。

ゴツゴツの剣は強い、ピカピカの剣も強い。

だから、ゴツゴツでピカピカはもっと強い。

ミミックは知らなかったがそれは魔法を吸収する魔石の一種だった。

宝石が装飾のように付いていたのだが、ミミックは強そうとしか思っていなかった。


宝石の力に気付いたのはそれから数日が経ってからだ。

進化したから強くなった、何がかは分からないが強くなった。

そう確信したミミックは擬態する。

待ち構えるミミック、そんな場所にやって来たのはゴブリンシャーマン三匹だ。


「おい、宝箱だ!」

「待て、通路のど真ん中にあるのはおかしくない?」

「おかしくないだろ」

「そうだな」


自分の目の前でゴブリン達の高度な会話がされていく。

自分には分からないが知的すぎる鳴き声の応酬だ。

そして、二匹のゴブリンがミミックに騙され近づいてきた。

一匹食べると、二匹のゴブリンと戦う、たぶん大丈夫だなとミミックは理解していた。

しかし、近付いていなかった残る一匹のゴブリンが鳴いた。


「宝箱は攻撃してからって先輩が言ってたろうがー!」


ミミックは急激な緊張に襲われた。

目の前で、後少しというゴブリンを他のゴブリンが止めたのだ。

きっと、それは危ないと言ったに違いない。

バレちゃったのである。


「そうだった」

「でも面倒だぞ」

「俺がやるから面倒だぞ」

「面倒なのか?」

「面倒だからやるぞ」

「何言ってるんだ?」


ミミックの目の前で高度な議論が飛び交う。

戦闘前の人間やゴブリンがよくやる行為だ。

これをやる奴らは普通より強い。

普通ってのはいつもってことだ。

いつもより大変だから、普通より強いのだ。


「ミミィ―!」

「うわ、ミミックだ!?」


攻撃される前に逃げる。

いっぱい痛くなりそうならこうしたらいいと言う、経験から導き出した行動だった。

ダメそうなら逃げるが一番である。


「ファイアー」

「サンダー」

「アイスー」


ゴブリン達の鳴き声が聞こえた。

これはヤバい、痛くなるぞ。

そう思ったミミックだったが、当たる瞬間いつもと違っていた。

痛いではなく頭が熱いのだ。

それも一瞬で、既に熱くはない。


「ミミィ?」

「効いてないぞ」

「馬鹿だな、当たってるから効いてるんだよ」

「そうなのか、無傷だから効いてないと思った」


ゴブリン達が自分を見てびっくりしてる様子にミミックは察した。

やっぱり強くなってたんだ、と。

強いから、魔法は痛くなかった。

痛くない魔法なら、スケルトンとネズミと同じ。

仲間に当てないなら、スケルトンと同じ。

あれは、ゴブリンだけどスケルトンだ。

完璧な理論だった。

だから突撃した。


「ミミィー!」

「うわぁ!?」


まずは一体のゴブリンが箱の中へと落ちて行く。

箱が勢いよく迫ってきて避けれなかったのだ。


「ミミミミミ!」

「調子に乗るなー!」

「やっぱり効いてないぞー!」


目の前に炎が当たった。

だが、ちょっと熱いだけでそのままゴブリンに近付き蓋で頭を殴った。

開いた蓋を勢いよく閉じたのだ。

すると、そのまま何回かの開閉でゴブリンは箱の中に落ちる。

勝ったのだ。


「ミミミ、ミミック!」

「お前も食べてやるだと!」


最後の一体は言葉は分からないが気迫はすごかった。

でも、体当たりで静かになる。

ミミックはこの時、悟った。

魔法が使えないゴブリンはただのゴブリンだ。

ただのゴブリンならたくさんでも勝てる。


階級的には同じなのだが、ミミックがそれを知る術は無い。

ただ、その非を境にミミックはスケルトンだけでなくゴブリンも積極的に襲う様になったのだった。


「ミミィー!?」

「チュー!」


ただ、まだ巨大なネズミ達には敵わず逃げるのだった。



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