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ズルと魔法

扉を開けてミミックは進む。

そこはミノタウロスの時のように広い部屋だった。

そこに奴らはいた。奴らは人間の言っていた通りゴブリンだった。

人間の頭が良い奴のようにローブと杖を持ったゴブリンが三体。


ミミックはその瞬間、頭の中で彼らの正体を予想した。

まず彼らはきっと頭が良い存在である。

今までローブと杖を持った人間が群れのリーダーである場合が多かったからだ。

後方で指示を出している仕草が多かった、前線で指示を出すゴブリンとは違う戦闘方法だったが指示を出すならきっとボスなのだ。


そして、次に魔法を使ってくる。

ローブと杖の人間は、炎ばかりではなかったが不思議な攻撃をする。

そう、魔法を使うのだ。

恐らく一対一ならミノタウロスが圧倒するが、三体同時に不思議な攻撃をされたら敵わない。

下に行くほど強くなると言っていたが、数が多いと弱くても強いのだ。

弱いのがたくさんは強いのである。


「おいおい、なんだ?今度はモンスターのようだ」

「コイツ……動くぞ!?ミミックの癖に動いてやがる!」

「まぁ、取り敢えず侵入者は殺そうぜ」


ミミックは戦慄した。

目の前のゴブゴブしかいわない奴らが、ミノタウロスのように流暢に会話したからだ。

モンスター共通言語、それはある程度強くないと覚えられないとミノタウロスは言っていた。

つまり、弱い奴等と思っていたが彼らはミノタウロスと同等かそれ以上。

ゴブリン三体でなく、ミノタウロス三体分の強さなのだ。

な、なんて知的な会話なんだ。難しくて良く分からないけど、ヤバい気がする。


ミミックは本能に従い逃走を計る。

しかし、ゴブリン達の方が早かった。


「オラァ!」

「ミ、ミィー!?」


な、何ー!?炎を飛ばしただと!

予想通り奴らは魔法が使えた。

炎の塊が放物線を描いてミミックへと当たる。

ポフッと着弾した炎はミミックを少しだけ焦がして、すぐさま消え去った。

だがしかし、人間なら火の粉程度の炎でもミミックには大きな火炎攻撃にしか見えない。


「ミィー!」


ミミックは泣き叫びながら脱兎の如く扉から逃げ出した。

ミミックは自らの身体を燃やした恐ろしい魔法に戦々恐々としていた。

恐怖だ、見るだけなら平気だが触れてみて分かった。

炎と言うのは恐ろしい物だ。


まだ、自分では奴らに勝てない。

ミミックは自分の弱さを自覚して久しぶりにモンスターを狩りに行く事にした。

ミミックはそのまま階段前まで移動した。

そして、階段を昇ろうとして滑り落ちて進むことが出来なかった。

そう、ミミックは階段を昇れなかったのだ。不覚である。


戻る事は叶わず、ゴブリンにも敵わず。

八方塞がりという奴だった。

ミミックは階段を昇るのを諦めて再び考える。

どうやって倒せばいいのか、自分に何が出来るのか。


ミミックが出した答えは今まで食べていた武器を合成する事だった。

強い武器を飛ばして倒せばいいのだという考えだった。

そして、来る日も来る日もアイテムを食べてから合成していく日々。

最初は黒いゴミクズと呼ばれる物ばかりだったが、偶に変な液体が出来た。

食べると元気がでる不思議な液体だ。何とヒリヒリした炎の当たった部分が痛くなくなったのだ。

良く分からないが元気が出る液体だ。

他にも、人間が使う剣が出来た。ゴブリンが使う何も切れない鈍器で無く、切断できる剣だ。

ゴブリンが使うような剣をたくさん合成すると大きくてスゴイ剣が出来る。

似ている物との合成はゴミクズにはならないようだった。


そんなある日、またいつものように人間が来た。

しかし、人間は扉を開けてから中に入らなかった。

いつもと違う行動である。


「おい、教官がダメって言ってただろ」

「こんな初心者ダンジョンでズルしても問題ないさ」

「そうだよ、バレなきゃいいんだよ」


人間の群れは背中から曲がった細長い棒と、長い槍を持った。

ミミックはそれが弓矢と呼ばれる武器だと知っている。

遠くから敵を攻撃する武器だ。


人間達は扉の外からゴブリン達に攻撃した。

角度的には見えないが、ゴブリン達の怒った声が聞こえる。


「クソ、テメェらよくもやったな」

「敵討ちだ、ゴラァ!」


扉のすぐ近くで、ゴブリン達の怒鳴り声がはっきり聞こえた。

どうやら、三体の内の誰かが倒されたらしい。

対する人間達はニヤニヤ笑っていた。


「スゲー、本当にアイツらの攻撃が来ない」

「アイツらは出て来れないし、攻撃もフロアから出てこないんだ」

「でも、フロアボス以外使えないだろ。楽でいいけどさ」


人間達の攻撃が繰り返される。

ゴブリンは扉の前で矢に射られながら、杖を人間達に向けていた。

しかし、炎は空中で霧散する。

突撃したゴブリンは見えない壁にぶつかったかのように、弾き飛ばされる。

いつしか、ゴブリン達は全滅して光る石に変わった。


「さぁ、次行こうぜ」

「ったく、何で最下層まで行かなきゃギルドに登録できないんだろうな」

「おい、速く魔石を集めて行くぞ」


人間達は鳴き声を上げながら、石を拾って扉の奥へと進んでいった。

ミミックは今回の戦いに疑問を抱いたのだった。


人間達が消えてからミミックはゴブリン達がいなくなった部屋で考察する。

どうしてゴブリン達は一方的に攻撃されたのか。

当然、抵抗する意識はあったはずである。


ミミックはそこで、ふと思い出した。

ミノタウロスは外に出れないと言っていた。

と言う事はゴブリン達は外に出れなかったんじゃないかと。

だから、突撃した時に後ろに弾き飛ばされたのだ。

そして攻撃、あれも弾き飛ばした何かによって消されたんじゃないのだろうか。


そう結論付けて、納得したミミックはゴブリンが復活する前にフロアを下りる事にした。

モンスターを狩らなければ進化できないからだ。

ミミックは、燃えない身体を手に入れる為に新たな階層へと降りていくのだった。

二十一階層、そこは今までと違う魔法を使うモンスターが増えるフロアだ。

ミミックは当然、そんなことは知らないので今まで通り行動していく。


最初に現れたのは毎度お馴染みなスケルトンだ。

スケルトン、無関心で丸呑み出来るカモである。

ミミックは幸先が良いと、スケルトンの背後から襲いかかった。


「ミミィー!」

「…………!?」


しかし、そのスケルトンは今までとは違った。

スケルトンは振り向きながらミミックの攻撃を避けたのだ。


「ミミ……クッ……!」


なん……だと……!思わずミミックは驚愕の声を漏らしてしまった。

まさか、不意打ちを避けるとは思わなかったのだ。

スケルトンはすぐさまに剣をミミックに向ける。

すると、剣の先から黒い靄がミミックへと跳んで来た。

良く分からないが危険と判断したミミックは、視線を逸らさずにバックで逃げて行く。

しかし、それも長くは続かず壁に背中がぶつかり黒い靄に当たった。

ミミックは目の前が真っ暗になった。


目の前が暗くなって長い時間が経過した。

いつしか黒い靄は晴れて、視界が戻ったが既にスケルトンはそこにはいなかった。

不思議な攻撃だった、魔法だろうか。

痛くない魔法もあると初めて知ったのだった。

それからミミックは新たな階層を探索していく、いつしかスケルトンに襲われるゴブリンを見てミミックは黒い靄の正体に気付いた。

アレは視界を覆って見えなくする魔法だと。

ミミックの冒険はまだ続いて行くのだった。

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