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脱出と第二の扉

それは肌色のゴブリンだった。

モンスターの素材から作られた装備を付けて、不可解な形の武器を持つ。

ひのきの棍棒にしては危険な感じのする武器を持った集団。

ミミックは気付いた、人間という奴だ。


「おっ、宝箱発見」

「待て、罠かもしれないから扉は開けておけ」

「そうそう、えっと……地図に罠のマークあるよ」


それは三匹の集団だ。

オス二体に、メス一体の集団が部屋に入ってくる。

彼らは部屋の正体を看破したのか不思議な鳴き声で意思疎通を行っていた。

唐突に、オスの一体が武器を扉へと構えた。

棍棒の先、そこから赤い揺らぎが生まれる。

それは、炎という奴だ。ダンジョンの明かりとして偶に壁にある奴である。

それが扉を包んでいた。扉は黒くなって小さくなっていく。

アレは、魔法という奴だ。

ミノタウロスが言っていた不思議な攻撃だ。


「室内で燃やすと、毒が蔓延するんだからやめろよ」

「風の魔力が火の魔力によって減少するから呼吸が苦しくなるんだ。これくらいなら問題ない」

「そうそう、それより宝箱開けよう」


恐らく勝てない相手だとミミックは感じた。

ここは隠れてやり過ごそう、幸い自分は部屋の片隅。

目立つ位置にいるミミックの方が囮になるはずだった。


彼らは時たまゴブリンがするように軽く宝箱を武器で攻撃する。

すると、それに反応して別個体のミミックは動き出した。


「おっ、ミミックかよ!」


不可解な形の武器が、ミミックに当たる。

それはミミックを両断する剣だった。

錆びた剣と違うちゃんとした剣の攻撃。

それはミミックをバラバラに切断した、砕くでなく切断だった。


ミミックが死ぬと、カランコロンと石が生まれた。

光る石、それを彼らは回収する。


「やっぱ小さいな」

「最深部の物と比べるなら小さいだろうさ、さっきのミノタウロスとはやはり事情は変わるだろ」

「アレより下層だから強いはずなのにね」


どうやら彼らは光る石が目当ての用だった。

会話は分からないが、何だか楽しそうだったからだ。

このまま出て行くだろうから、自分はあの壊れた扉から外に出てみよう。

そう考えていたミミックを、彼らの一人が見つけた。


「おい、あそこ」

「うん?あ、壁と同じ色の宝箱」

「おぉ、隠し宝箱だ」


近付いてくる彼ら。

ミミックはゴブリンすら気づかなかった自分に気付いた彼らに慄いた。

やはり、まだ自分には勝てない存在だったのだ。


コンコンと武器が数回当てられた。

ミミックは制止したまま、開けられる。


「おっ、これは……」

「ゴミクズですね、錬金術で失敗すると出来るんですよ」

「きっと誰かの悪戯だね、ざまぁ」


彼らは自分が作った、黒い石を投げ捨てて怒った様子だった。

硬くて飛ばすには最適なそれを捨てるとは、余程自身の攻撃手段に自信があるのだろう。

再び、戦わなくてよかったと確信した。


彼らはそのまま部屋から去って行く。

しばらくして、ミミックは焼け落ちた扉を壊して部屋を出た。

壊してから振り向けば、光に包まれて元の状態に戻る扉。

魔法という奴で小さくなっていたそれは完全に傷を癒して、前の木で出来た扉になったのだ。

完全破壊されたことによる再生現象を初めて見るミミックは傷が癒えたのだと勘違いして納得した。


部屋から出て探索する。

随分と懐かしいと感じながら進んでいくと、廊下に光る石が落ちていた。

何だろうか?ミミックは取り敢えず食べてみた。

すると、暖かい何かが込み上げてきた。

何となく好きな感覚だった。


ミミックは光る石を食べると、少ない量でモンスターを食べるのと同じくらいお腹が一杯になると知った。なるほど、彼らも拾っていたがこれを食べる為だったのか。

ミミックはその後、どうしてもと言う時以外は光る石を探した。

たまにモンスターを喰らうが、ほとんど光る石だ。

その方が簡単にお腹がいっぱいになるからだ。


それから、ミミックは階段を見つけては降りた。

たまに人間を見つけるが奴らはどうやら個体差が激しいようで、ゴブリンを圧倒したかと思えば違う個体は為すすべもなく食べられていた。

もしかしたら、姿が変わらないだけで人間も進化などするのかもしれない。

普通のゴブリンが進化したゴブリンと同じ強さという訳だ、人間は恐ろしい。


ミミックは少しずつだがダンジョンを攻略していく。

自分で進んだり、時には人間の後を追い掛けたりしてだ。

人間の後は高確率で階段へと向かっているので探索が捗った。

人間はそれぞれが独特の鳴き声で意思疎通を図っている事も分かった。

彼らはモンスターのように知能があるが、個体差によってはゴブリンよりも頭が良い者がいる。

見ても違いが分からない、それが人間と言う種族の特徴のようである。


人間に見えるのにゴブリンみたいに弱くて馬鹿な者。

人間に見えるのにスケルトンみたいに喋らない者。

人間に見えるのに松明みたいに炎を出す者。

人間と言う種族が一番不思議な種族だった。


長い時間を掛けて、ミミックはダンジョンの二十階層に到達していた。

ミノタウロスの時のような扉に到達したのだ。

ミミックとしては何か今までと違うなと言う程度の感覚だった。


到達してからミミックは扉を開けるか開けないか悩んでいた。

モンスターボックスの事がトラウマになっていたからである。

それに、扉を開けて入っていく人間達は殆どが武器や防具の装備に姿を変えて戻ってきた。

死んだ者の装備をフロアマスターが外に転送しているのだがミミックは当然知らないので、中で何かがあって装備になって戻ってきているのだと思っている。


ミミックは考える、どうして人間は物になって戻って来るのか。

ミミックは転送されて扉の前に置かれた装備を捕食しながら悩んでいた。

最近は岩に擬態してタイミングを見計らって装備を食べる生活をしていた。

安全であると確認せずに行動する危険を、モンスターボックスで学んだのだ。

ある日の事だ、いつもよりもたくさんの人間が扉の前にやって来ていた。


「おい、変わった様子はあるか?」

「無いです、しかしどうしてアイテムが消えているのか?」

「取り敢えず実験してみるとしよう」


人間の一人が、歌いだした。

ミミックの目の前でクルクル回りながら杖を掲げる。

すると、どうだろうか。ミミックの目の前に五匹のゴブリン軍団が現れたのだ。


「敵は三匹のゴブリンシャーマンだ。恐らく死ぬだろうが突撃せよ」

「ゴブ!」


扉は開けられてゴブリン部隊が突撃した。

そして、暫くするとゴブリンの装備だけが扉の前に転送された。

ミミックはゴブリンが装備に変わって戻ってきたか、と思った。

しかし、今回は人間がいるので装備に変わったゴブリンを食べるのは我慢して周辺の岩に擬態し続ける。

人間達は装備を見ながら再び喋り出した。


「変ですね?装備は転送されてます」

「誰かが持っていったか。もしくはアイツらが集めているのか?」

「まさか、それなら転送しないでしょ。奴等は自分が気に入った装備以外はフロアの外に出すんですから」


たくさんの人間達は何やら会話のようなものを暫くしてから、ダンジョンから出て行った。

彼らは何がしたかったのか、言葉を理解できないミミックには分からなかった。

ただ、人間の使う単語。敵、ゴブリン、アイテムだけは聞き取れた。

どうやら、この先にはゴブリンがいるようだ。ならば、勝てるかもしれない。

ミミックは扉の先へと進んだ。

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