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進化と食事

ミミックは感動していた。

色や形、知らない物がたくさんあった。

ミノタウロスが言うには同じ赤でも色々な呼び方があると言っていた。

伝えるために色々あるそうだ。

ミミックはこの感動をミノタウロスに教えてあげたいと思いながら迷宮を探索する。

ダンジョンの最深部はまだまだ先だ。


ミミックが探索していくと、柔らかい壁があった。

自分の腕と同じ色で、叩くと他と違う。

そうだ、これは木という奴だ。

ミミックは目の前の扉を仲間か、と観察する。

しかし、それは動かないので仲間ではない。


そうだ、ミノタウロスの時も押せば動いた。

押してみようと、動くが開かない。

何故だ、考えた。


ミミックは暫くして、取っ手の存在に気付く。

何だアレは、ミノタウロスの時には無かったぞ。

ミノタウロスの扉は開いて、これは開かない。

ミノタウロスの扉には無くて、これはある。

何か関係性のような物を直感で理解した。


ミミックはジャンプで取っ手を咥える。

箱と蓋に挟まれてる感じだ。

するとどうだ、独りでにそれは動き出した。

やっぱりそうだったのだ、これが正しいのだ。


中に入ると、自分がいた。

いや、よく見ればミノタウロスのアックスに移っていた自分より小さい。

同じだけど小さい、もしやミミックか?


大きいゴブリンと小さいゴブリン。

同じだけど違う、だからミミックだけど違うミミックなのではないだろうか?

仲間、という奴だな。

ミミックは近づき、そして驚いた。

扉が勝手に閉じた音によってだ。


「ミィ!?」


視界が染まる、赤と黒と赤。

それは、景色の点滅。赤い部屋になったり黒い部屋になったり景色が変わったのだ。

ミミックは驚きのままに制止する。

すると部屋の床が光り出した。


床から様々なモンスターが湧いてくる。

ゴブリンやスケルトン、ゾンビや見たことのないモンスター。

部屋の中がモンスターだらけになった。


そこはミミックは知らない、モンスターボックスという罠であった。

腐肉を漁るヒルや骨を齧るネズミ。ミミックの知らないモンスターも多数いた。


ミミックは目の前で行われる戦いに恐怖した。

スケルトンがネズミに食われて、ネズミがゾンビに食われる。

ゾンビはヒルに食われてスケルトンになり、またネズミに食われる。

ゴブリンはネズミやヒルを食べて、殴られたら動かなくなる。


ミミックは真理を垣間見た。

モンスターはお互いを食べて、生きているのだ。

生態系と言う一端を知った瞬間である。


いつしか生き残ったのはゴブリンだった。

傷だらけのゴブリンは、倒れるように眠る。

次の瞬間、ゴブリンは光り輝き大きく巨大なゴブリンになった。

小さいゴブリンが大きくなった。

あぁ、これは進化って奴だ!


大きくなったゴブリンは起き上がって部屋を見た。

そして自分ともう一人のミミックを見つける。

ゴブリンはそのまま、もう一人のミミックの方に歩き蓋を開けた。

瞬間、その蓋は勢いよく落ちてきたゴブリンを箱の中へと入れる。

食べた、そう思った瞬間だった。


今度はミミックが輝いた。

きっと進化が始まるのだ。

どうやら自分のようになるようだった。

しかし、光が収まるとミミックは石のミミックになった。


「ミミィー!?」

「……ミィ?」


衝撃だった、グルグルでなくカチカチのミミックになったからだ。

シャーと移動すれば、気怠そうなミミックの声が聞こえた。


「ミミミー?」

「……ミック」

「ミィ?」

「……ミックミィー?」


何で君は同じミミックなのに違うの?

何言ってんだお前。

どうして、石になったの?

知らんけど、痛く無い様になりたかったからじゃないか?


そんな会話が為された。

ミミックはそう言えば自分は動けるようになりたいと思ったなと気付いた。

つまり、進化と言うのはなりたい自分になる事なのだ。

だから、こっちはモンスターの戦いで巻き込まれても痛くないカチカチになった。

色々と動き回りたい自分はグルグルになった。

そういうことなのだ、たぶん。


ミミックはそういうことか、と楽しそうに扉に向かって出ようとした。

しかし、扉は取っ手が無いのに押しても開かない。

閉じ込められたという初めての経験だった。


それからどのくらい時間が経ったか。

ミミックは時間なんて概念は知らなかったがずっと同じ場所にいるなとは思っていた。

偶にやってくるゴブリンによって、部屋は赤と黒になってモンスターだらけになる。


石のミミックはお腹が空いても動かないし、自分も我慢すれば辛いだけだった。

でも、ゴブリンによって湧いて来たらやっぱりお腹が空いてるので自分も戦う。

初めて戦った時、全部食べたのだけどお腹はいっぱいにならなかった。

何故だろう、ミミックは考えた。


二度目のゴブリンの時、ミミックは捕食活動をしなかった。

戦いを見守り、今度はスケルトンが生き残った。

生き残ったスケルトンは黒いスケルトンになる。

どういうことだろう、赤ではない。


黒いスケルトンは立ったままだった。

だがスケルトンなら、大丈夫だとミミックはタックルした。

しかし、黒いスケルトンは立ったままだった。

コイツは石みたいに硬いバラバラにならないスケルトンだ!


何度も挑んでは、痛いと思うだけだった。

そのうちミミックは戦う事を止めた。

動けば疲れるし、黒いのは立ったまま何もしないからほっとくのだ。


三度目のゴブリンが部屋に入って来た

また君かと、思っていたらゴブリンは群れだった。

湧いてくるモンスター、黒いスケルトン、群れのゴブリンの戦いが始まった。

今度は黒いスケルトンとゴブリン、そしてネズミが生き残った。

黒いスケルトンが制止したと思ったら、ゴブリンとネズミが光ったのだ。

進化したゴブリンは石みたいなゴツゴツしたゴブリンだった。

進化したネズミは歯がキラキラした鉄みたいな物になっていた。

また、戦いが始まった。


今度勝ち残ったのは、ゴブリンだった。

ネズミはあの硬かった黒スケルトンをバクバク噛み砕きゴブリンに噛み付いた。

しかし、ゴブリンは砕けず逆に殴られて食べられた。

今は鉄の歯があるネズミの骨とウロウロするゴブリンだけがいた。


ゴブリンは前の大きいのと違った。

同じゴブリンなのに石ミミックと自分を開けないのだ。

ゴブリンはネズミの骨を使って、石ミミックを突く。

そして、器用に長い骨で蓋を開けた。

蓋の中を遠くから見たら、ゴブリンは骨の一部を箱に投げ入れる。

当然、骨は吸い込まれる。

何かを確信する様にゴブリンは頷いた。


奴は石ミミックを殴り掛かる。

まさか、そう気付いたのだ。

殴る度に削れる石ミミック。

流石に対抗して飛び上がるが、ゴブリンの方が硬くて削れていく。

そのうち石ミミックは動かなくなった。

バラバラになったスケルトンや殴られたゴブリンみたいに、ずっと眠ってしまったのだ。


ゴブリンは今度、此方へと来た。

同じように骨で蓋を開けようとする。

あんな方法でミミックだとバレるならと、一生懸命蓋を閉じた。

イライラしたのか、ゴブリンは直接ミミックを掴んだ。

ミミックは本能のまま動きだし、掴んだゴブリンごと爆走する。


「ゴブ!?」

「ミー!」


ドゴッと背中が壁にぶつかるゴブリン。

バックで後ろに下がって再び、壁に突進するミミック。

その間にはゴブリンがいて、ミミックと壁の間で苦しむ。

ミミックは蓋を開けて、壁にゴブリンを押し付けた。

苦しみから解放されようと箱へと逃げ込むゴブリン、彼はそのまま奈落の様なミミックの口へと落ちていった。


「ミミィ!?」


次の瞬間、久しぶりに満たされた気がした。

また、ミミックはネズミの骨や石ミミックも食べてみる。

やはり、満たされた。


そして気付いた。

共通しているのは進化している事、つまり進化しているモンスターなら満たされる。

ミミックは再び獲物を待つ。


次の獲物は視界の端で新しいミミックが生まれてから、ずっと先にやって来たのだった。

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