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流石です、大魔王様!

宇宙と星の間に存在する成層圏、そこには大小様々な小惑星が飛んでいた。

と言っても、その幾つかは小惑星に擬態したミミックであった。

彼らは自分たちの興味が湧くままに空を目指し、帰る事を放棄していた存在である。

そんな中、上空から地上を観察する事を目的としていたミミックが天体の観測や惑星移動を目的としていた者達に声を挙げた。


『おい、誰かアレを見てくれ』

『見る必要はないだろ、お前の視覚情報を共有する』

『地上での事は管轄外だ、他を当たれ』

『おい、見ろって!勇者と魔王が戦ってるぞ』


その言葉に、共有された情報を確認する。

しかし、ミミック達は第一発見者のミミックに対して呆れるように溜息を吐いた。


『ただの魔王じゃないか』

『大魔王じゃないなら珍しくもない』

『あれと同じ種類はもう手に入っている』


そんな事で呼ぶんじゃないと口々に文句を言った。

というのも、魔物の大体1割が魔王という存在であるからだ。

これは宇宙から地上を観測したミミックが発見したからなのだが、結構な数いるのである。

知性あるモンスターが最終進化する事で到達する存在と言うだけで、時間さえあれば自然に発生するのだ。

しかも困った事に強ければ強い程内包する経験値が大きく、死んだ瞬間に拡散する物だから魔王の死後には雑魚モンスターが大量発生する。

そこからお互いを喰らい合い、また新たな魔王が生まれる。

これが魔王の発生メカニズムである。


因みに魔王と言ってもピンからキリであり、経験値を蓄積する都合上、存在する長さに比例して強さが違う。

強い奴で言えば魔王ですら、話す事すら恐ろしい存在もいる。

彼らは大魔王と呼ばれる10体の魔王であり、並みの魔王なら一撃で仕留められるような強大な存在だ。

ミミックもある大魔王と出会った事があった、アレはどのくらい前の事だろうか。




途方もない程に昔の出来事だった。

1匹いれば10匹いる魔王として名を知られていた頃、ミミックは魔王達が鬱陶しくなった。

というのも、好戦的な奴らがミミック狩りなるものを初めて個体数を減らしていったからだ。

彼らの言い分としては隠れ潜むミミックの魔王を呼び出す為との事だが、全て本人なので意味がない行為だった。

そう、意味のない行為で多くの個体を減らされたのだ。

流石にミミックも鬱陶しく思った。


なので、二度と馬鹿な真似が出来ないように全ての魔物達への見せしめとして、意趣返しに魔王狩りを開始する事にしたのだった。

何時か進化する魔王候補達への忠告である。

正直、殆どの魔王はとばっちりだが狙われる事となった。


『さて、諸君。これより魔王のサンプルを採取しようと思うのだがこのままでは瞬殺されるだろう。何か良い意見はないか?』

『そういえばどこかのミミックがモンスター合成に付いて詳しかった。戦闘用の肉体を作る事を提案する』

『損害してから作り直す事を考えると非効率だ。それなりに頑強な物がいいと思われる』

『大抵の魔法は解析からの術式分解で無力化出来る。物理的な脅威を考慮するべきだろう』

『有機物型の魔王が大半なので、肉体構成は破壊しにくい無機物の物が良いだろう』

『ではそのような形に変化させよう』


こうして、全ての個体が自分の理想とする姿形を思い浮かべ、それぞれの分野の技術の粋を集めた戦闘用の肉体の作成が始まった。

それはとある国の国家機密だったり、遥か昔に失われた古代の魔法だったり、絶滅した古代の生物や宇宙から落ちてきた謎の鉱石など、技術と材料をふんだんに注ぎ込んだ製作だった。

そして、ついに戦闘用ミミックが出来上がる。


『これが最強のミミックか』

『約半数によるミミックネットワークでの高速解析により未知の魔法でも無効化が出来、未知の金属や古代生物を材料にしたボディーは現在の魔王が放てる攻撃では破壊不能、さらに機能性を重視した形は最も美しいデザインを専門としたミミックに監修して貰いました』

『自画自賛になるが、これは美しいな』


そこには、山ほど巨大な黄金の箱があった。

ミミック達の試行錯誤の結果、原点に戻り最初期のデザインとなった謂わば金で出来た箱である。

因みに何故ここまで巨大なのかと言うと高速解析する都合上、必要な大きさであったからだ。

また、高濃度の魔力を含んだ金属であった為に見た目が金ぴかなのであった。


「ミィーミッミッ!」


野太い声が轟いた、突如世界に現れた黄金の箱。

それは魔王だけでなく光る物が好きな魔物や人間達すら惹きつけた。

最初に辿りついたのは鳥の魔王だった。


「コイツはスゲェー!俺様の物だぜ、カァー!」


黒い羽を羽ばたかせながら、それは黄金の箱に近付く。

瞬間、箱が一段と大きくなった。

否、大きくなったのではない、近づいていたのだ。


「な、なにが起きたか分からないと――」

「ミィー!」


言い終わる前に鳥の魔王はその黄金の箱が、巨大ミミックが蓋を開いて飲み込んだ。

まずは一体目の魔王を捕獲したのである。

その後、数か月掛けて多くの人間が群がっていた。

ミミックの周辺では人々が所有権を主張して争っていた。

そんなミミックの元にやって来たのは、鳥の魔王が喰われるのを見て恐れ慄いた魔王達の代表だ。

ミミック狩りをしていた魔王のせいでとばっちりを受けたくないと、交渉しに来たのだ。


「ミミィー!」

「えっ?」


ミミックが地平の彼方からやってくる魔王を発見した瞬間の事だった。

パコッ、と蓋が開いて内側から巨大なビームが薙ぎ払うように放たれた。

魔王以外耐えられないレベルの魔法による攻撃だ。

結果、ミミックの視界には荒野とボロボロになったゴーレムの魔王がいた。


「ぐおぉぉぉぉ」


交渉に来ていた彼は半死半生になっていた。

最も防御力がある魔王なのにボロボロである。


「ま、待て!俺が死んだら他の奴らが――」

「ミィー!」


言い終わる前に飲み込まれるゴーレムの魔王、欲しかった物が手に入りミミックはご機嫌である。

その後、今度は共通の敵として魔王達が徒党を組んで攻めて来た。

しかし、相手にはならず驚きの吸引力によって全員捕獲されてしまった。

そしてこのミミック、留まる事を知らない。

徒党を組んだ魔王達の部下、魔王の眷族を吸収し、自身の分身体をバラ撒いて隠れ潜む魔王を見つけては捕らえて行ったのだ。

相手からしてみれば、突如頭上に巨大な山が転移して来ていつのまにか飲み込まれていたのだから回避できない。

こうして、人類や魔物達に多大な被害を出してミミック以外の生物が殆どいなくなってしまった頃の事だった。


魔王はいないか、と探しているミミックの目の前に魔力を感じない小さな子供が立ちはだかった。


「ミィ?」

「やぁ、初めましてだね。僕はパルピィ、一応大魔王って呼ばれてる者だよ。言いたい事があって来てみたんだ。まぁ、一言にまとめたから長くはないよ」

「ミィミィ~」


ほぉほぉ~とミミックは子供を観察した。

魔力を感じない、中性的な子供、分類上人間達がショタと呼ぶタイプの物だ。

これが大魔王か、と疑いの目線を浮かべるミミック。

まぁ、取り敢えずサンプルにでもするかと動き出そうとした瞬間だった。


「あっ、ダメだよ。もう、メッ!」


瞬間、目の前が真っ暗になった。

と、同時に気付く。

いつの間にか、個体数のリンクが半分にまで減っていたのだ。

何をされたのかは分からない、ただ戦闘用のミミックとリンクして情報を処理をしていた個体以外全てが消失していた事は確かだった。


現在繋がってるどの個体の情報を統合しても、大魔王と名乗る子供を特定できる者達が消えていた。

混乱するミミック、数秒後にその答えは一番近くにいた個体に齎される。


「ごめん、軽く怒ったら爆発しちゃった。思ったより脆かったよ」

「ミ、ミィ……」

「魔王とか、僕が育ててるのもいるから全部取らないでって一言に込めてお願いしたら、情報量が多すぎて処理しきれずに爆発したみたい。まだ君には圧縮データのような物は早かったね。まぁ、用件は終わったからさ、じゃあね」


いきなり目の前に現れた大魔王は、そう言ってから消えていた。

魔力を感じない事から転移ではない事は確かだった。

転移でも超スピードでもない、最も恐ろしい物の片鱗を味わったのだ。


「ミィ……」


いったいどうなってるのか。

嵐のようにやって来て去っていた大魔王を、いつか調べたいなと溜息を吐くミミックだった。

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