橋
――――この恋は……。
うまく行きそうにない、そんな予感はしていた。
御言橋に差しかかるあたりで、重く立ちこめた雲から雨が降り始めた。傘のない身体に雨粒が当たる。濡れた木製の橋板に何度も足が滑る。それでも俯いたまま歩き続けた。
――――涙は恥と教えられてきた。
とても静かな、身体が冷え切るような感情にとらわれている。このままではいけない、何かしてなくてはならない、けれど何をしても変わらない。そんな気がしていた。
橋を半分まで渡ったとき、目の片隅に明るいものをとらえて、思わず顔をあげた。
この橋が架かる白川の上流、その空には一点の雲の切れ間があって、明るい陽の光がいくつかの筋となって降りそそいでいた。山裾の家々が浮かびあがるように照らされている。あの人の町だった。
――――そうか。
歩みを止めて、欄干に両手をついたまま、そこに佇んだ。
やはり、住む世界が変わってしまったようだった。あの人ともう二度と逢うことはない、そう思った。目をそらしていたはずのアンハッピーエンドがやってきたようだった。
不意に、こみ上げた感情が胸をつく。まぶたが融けるように熱くなった。
このままずっと泣いていたかった。でもそんなことできなかった。