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チャイムが校内に響く。本日の授業もようやく終わった合図だ。学生には必要不可欠とも言えるものでもある。
「ふわぁ…。ようやく終わりか。なあ要。たまにはゲーセン行かないか?」
自身で言うのもなんだが、黒髪、黒目と典型的な日本男児の顔立ちをした学生の俺、遠藤 不惑(えんどうふわく)は、近くの席にいた幼稚園からの親友、要 凌(かなめりょう)に話しかけた。
「今日か~。ついさっき急ぎの用事が入っちゃったから今回はパスかな」
「あり。なんだか最近付き合い悪いな」
ここしばらく気が向いて遊びに行こうとするとしょっちゅう断られる。高校生になり大体一年と少しだが、このところあまりどこかに行った記憶が無い。
「要領良くやっても、問題は後からどんどん来るからね」
どこか遠くを見ながらの言葉に思わず首を傾げる。
「あっと…単なる独り言だから気にしないで」
慌てたような言葉にさらに不信感が増す。
「ふーん…ま、別にいいけどな」
そんなところで担任が入ってきたから話は打ち止めとなった。結局、その後ホームルームが終わるなり要はすぐに消えていた。今思うと、それは本当に消えていたのだが。
因みにそれに気が付いた直後、掃除当番だった要の掃除を担任から指示されたのだった。何故俺が。
「さてと、今回の問題はどんな話なの?」
「今回のは童話、赤ずきんだよ。多分数は多めかな」
ホームルームが終わった直後、掃除をサボって急いで校舎の人目につきにくいトイレに駆け込み、隣を浮遊する生命体に声をかける。
「で、今回の任務はキミと彼女ね」
「ん、了解。それじゃ、今回も要領良く行くとしようか」
その言葉を合図に生命体が何かを口ずさむ。
それが途絶えると同時、彼の姿はこの世界から消失していた。