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偽り屋の本音  作者: 高浦
11/12

気分良かったんですけど…ねぇ

「りーくーちゃんっ♪」


「!?璃成…!?

珍しく朝からハイテンションだね…しかもかなり」


「うふふ、まぁねー♪」



低血圧な私が朝からハイテンションな為、心底驚いた様子の陸。

部活が楽しみ過ぎてハイテンションなのだ。



「昨日の部活が楽しくてね、今日も楽しみなんだよー」


「おお!なら良かったよー

璃成一人でちょっと心配だったんだけどさぁ…」


「過保護だねーオイ

大丈夫だよ!寧ろ私部長になったしさ!」


「璃成部長さんなの!?

凄いねー!流石!」


「お前部長か!

やるじゃねーか!」



突然背後から聞こえてきた声に驚き、思わず肩がぴくりと跳ねる。



「秀夜……びっくりさせんなよ」


「あ?こんくらいでビビってんじゃねーよ、ばーか」



私が悪態をつくと、秀夜も笑いながら悪態をつき、肩を組んでくる。


待て待て待て、何だコイツ。本当に鈍過ぎるぞ?

まぁ小学校までは普通に肩を組んではいたが…今は麗羅の事考えろよ!



「えっ、ちょ…秀夜ちょっと」


「…しゅーちゃーん、璃成にくっつかないで?」



察したらしい陸が助け船を出す。

ああ、流石陸…



「おまッ…その呼び方やめろって言っただろ!?」



秀ちゃん呼びの効果で秀夜は肩を組むのをやめ、顔を赤くして叫ぶ。


因みに『秀ちゃん』と言う呼び方は、小学生の時に秀夜と仲が良かった男子が、ふざけて秀夜に付けたあだ名だ。

秀夜はそれを凄く恥ずかしがっていたため、私達は今でもたまに蒸し返すのだ。



「だって秀ちゃんってあだ名似合うよー?」


「どこがだよ!?

お前の事も陸ちゃんって呼ぶぞ!?」


「え、良いよ?

別に俺は―」


「しゅーうやっ」



甲高い猫なで声が、陸の声を遮る様にして響いた。


とうとうお出ましか…笹森麗羅。



「あ?

…んだよ、麗羅」


「あんまり璃成ちゃんと仲良くしないでよぉー、あたし嫉妬しちゃうー」


「…別に、誰と仲良くしようと俺の勝手だろ」



秀夜は、冷ややかな目で麗羅を一瞥すると、腕にまとわりつく麗羅を振り払った。


…不仲なのか?それとも秀夜がシャイなのか?


秀夜は直情的な為、どちらかと言うと不仲に見えるが…それなら恐らく別れている筈。

…どういう事だ?


と言うか、なーにが璃成ちゃんだ笹森麗羅。



「もー、秀夜ってば照れ屋さん何だからぁー!」


「るせぇよ…触んな」



そんなやり取りを見つつ、私と陸は目を合わせる。

陸も怪訝な表情をしている。



「…ほら…自分の席に戻れよ、お前」


「えっ、でも―」


「でもじゃねぇ」


「………分かった、またね」



私を鋭い目付きで睨んでから、麗羅は自分の席へと戻っていった。



「…はぁー…」



深いため息を吐いてから、酷く疲れた様子で床へ座り込む秀夜。


一体何だったのだ、と思いつつも本人には聞き辛い為、敢えて口を開かずに俯いている秀夜を見つめる。


数秒後、陸が口を開いた。



「…お疲れー、秀夜」


「ん…おう、さんきゅ

わりぃな、醜い所見せちまって」



苦笑いしつつも顔を上げる秀夜。



「いーよ、無理して笑わなくて

事情は分かんないけど、醜いとは思ってないし」


「…さんきゅ、璃成

でももう大丈夫だ、ありがとな」



そう言って微笑む秀夜の表情に偽りは無かった。


私には、それがまた理解出来なかった。

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