気分良かったんですけど…ねぇ
「りーくーちゃんっ♪」
「!?璃成…!?
珍しく朝からハイテンションだね…しかもかなり」
「うふふ、まぁねー♪」
低血圧な私が朝からハイテンションな為、心底驚いた様子の陸。
部活が楽しみ過ぎてハイテンションなのだ。
「昨日の部活が楽しくてね、今日も楽しみなんだよー」
「おお!なら良かったよー
璃成一人でちょっと心配だったんだけどさぁ…」
「過保護だねーオイ
大丈夫だよ!寧ろ私部長になったしさ!」
「璃成部長さんなの!?
凄いねー!流石!」
「お前部長か!
やるじゃねーか!」
突然背後から聞こえてきた声に驚き、思わず肩がぴくりと跳ねる。
「秀夜……びっくりさせんなよ」
「あ?こんくらいでビビってんじゃねーよ、ばーか」
私が悪態をつくと、秀夜も笑いながら悪態をつき、肩を組んでくる。
待て待て待て、何だコイツ。本当に鈍過ぎるぞ?
まぁ小学校までは普通に肩を組んではいたが…今は麗羅の事考えろよ!
「えっ、ちょ…秀夜ちょっと」
「…しゅーちゃーん、璃成にくっつかないで?」
察したらしい陸が助け船を出す。
ああ、流石陸…
「おまッ…その呼び方やめろって言っただろ!?」
秀ちゃん呼びの効果で秀夜は肩を組むのをやめ、顔を赤くして叫ぶ。
因みに『秀ちゃん』と言う呼び方は、小学生の時に秀夜と仲が良かった男子が、ふざけて秀夜に付けたあだ名だ。
秀夜はそれを凄く恥ずかしがっていたため、私達は今でもたまに蒸し返すのだ。
「だって秀ちゃんってあだ名似合うよー?」
「どこがだよ!?
お前の事も陸ちゃんって呼ぶぞ!?」
「え、良いよ?
別に俺は―」
「しゅーうやっ」
甲高い猫なで声が、陸の声を遮る様にして響いた。
とうとうお出ましか…笹森麗羅。
「あ?
…んだよ、麗羅」
「あんまり璃成ちゃんと仲良くしないでよぉー、あたし嫉妬しちゃうー」
「…別に、誰と仲良くしようと俺の勝手だろ」
秀夜は、冷ややかな目で麗羅を一瞥すると、腕にまとわりつく麗羅を振り払った。
…不仲なのか?それとも秀夜がシャイなのか?
秀夜は直情的な為、どちらかと言うと不仲に見えるが…それなら恐らく別れている筈。
…どういう事だ?
と言うか、なーにが璃成ちゃんだ笹森麗羅。
「もー、秀夜ってば照れ屋さん何だからぁー!」
「るせぇよ…触んな」
そんなやり取りを見つつ、私と陸は目を合わせる。
陸も怪訝な表情をしている。
「…ほら…自分の席に戻れよ、お前」
「えっ、でも―」
「でもじゃねぇ」
「………分かった、またね」
私を鋭い目付きで睨んでから、麗羅は自分の席へと戻っていった。
「…はぁー…」
深いため息を吐いてから、酷く疲れた様子で床へ座り込む秀夜。
一体何だったのだ、と思いつつも本人には聞き辛い為、敢えて口を開かずに俯いている秀夜を見つめる。
数秒後、陸が口を開いた。
「…お疲れー、秀夜」
「ん…おう、さんきゅ
わりぃな、醜い所見せちまって」
苦笑いしつつも顔を上げる秀夜。
「いーよ、無理して笑わなくて
事情は分かんないけど、醜いとは思ってないし」
「…さんきゅ、璃成
でももう大丈夫だ、ありがとな」
そう言って微笑む秀夜の表情に偽りは無かった。
私には、それがまた理解出来なかった。