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March On  作者: awa
12/12

Epilogue

 先月──十二月二十八日の夜、電話をかけた時にはもう、リタの携帯電話は解約されたあとだった。

 リタのことだ。きっと、私を傷つけてしまったと、とても後悔しているに違いない。突然襲った現実にどうしていいかわからず、それでも止まれない自分自身を責め、私を巻き込むような気がして、それが嫌でまた、私と離れることにしたのだろう。

 ねえ、リタ。“運命”を信じる?

 “運命”で結ばれたふたりは、なにがあっても、何年連絡をとりあっていなくても、それが本物なら、また恋人として、友達として、昔のように笑い合えるという話。

 私は、友達の言った言葉を、信じてみたい。その“運命”を、信じてみたい。だから、今は追わない。

 大晦日のカウントダウンの時、空に打ち上げられた花火を見て、私がなによりも一番に願ったのは、あなたと彼の幸せだった。私があの日みた夢のように、いつか彼と結婚して、可愛い赤ちゃんを授かって、幸せに、うんと幸せになって。

 きっといつか、私たちはまた再会して、友達に、親友に戻れると信じている。十年後か、二十年後か、もしかしたらお互い、おばあさんになっているかもしれないけれど──それでも、また昔のように笑い合えると、そう信じている。

 もし世界中がリタの敵にまわっても、私だけは、リタの味方でいる。あなたはひとりではない。私はいつだって、あなたの親友でいる。忘れないで、リタ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 雪が静かに舞い降る夜。一度目よりも、少し長めの、二度目のキス。

 唇が離れ、マリーはそっと目を開けた。ギャヴィンが微笑む。とても可愛い笑顔だ。彼はハンサムというのとは少し違うが、童顔で、可愛い。モテるだろう。地味なだけの自分にはもったいない気がする。というか、もったいない。だがギャヴィンは、自分のことを好きだと言ってくれた。そして、キスをしてくれた。

 照れたように彼が笑う。「どうしよ。さっきから、心臓がドキドキしっぱなしなんだけど」

 それはマリーも同じだ。「私も。ありえないほど速い。だけどすごく落ち着く。変」

 「うん、俺も。離れたくないから、ジャックたちのとこ、行こうか」

 嬉しい言葉だ。「名案ね。そしたらキスはできなくても、一緒にいられる」

 「そういうこと」

 ふたりは笑ってまた、キスをした。頬に雪が落ち、すぐに溶けた。

 何度かキスを繰り返してやっと、お互いにキリがないことに気づいた。やっと立ち上がる。

 「手、つないでいい?」

 そう言って差し出されたギャヴィンの手を、マリーは笑顔で握り返した。

 「もちろん」

 どれくらい外にいたのか、彼の手は、とても冷たかった。

 手をつなぎ、ふたりは並んで歩きだした。

 「君の手、あったかい」ギャヴィンが言った。

 笑顔ひとつに、言葉ひとつに、いちいちドキドキしてしまう。「そりゃ、さっきまで家にいたわけだから。それにしても冷たすぎ。カイロ持ってこようか。」

 「ううん、いい。もうあるし」

 つないだ手がぎゅっとされる。鼓動が速くなると同時に、彼女の口元はゆるんだ。

 「夕飯は?」彼が訊いた。

 「まだ」

 「もしかして、もうすぐ出来上がりみたいな感じだった?」

 「そうだけど。でもいい。あなたが食べてないなら、一緒に食べる」マリーは押しが強いわけではないが、強情な部分もある。

 ギャヴィンは笑った。「そっか。じゃあ君の荷物取ってから、そこのコンビニ行こうか。ついでにあいつらにも肉まんとピザまん買って」

 「冷めない?」

 「手と違って、肉まんはレンジOKだから、レンジであっためればいいよ。僕らはできたてを食べながら歩くわけだけど」

 マリーは思わず笑った。「やめて、手をレンジとか、すごく怖いんだけど」

 「レンジのターンテーブルに乗せた手首がぐるぐると──」

 「やだ、やめて! 怖い、すごく怖い!」怖いと言いながらも彼女は笑っている。

 彼も笑う。「一泊なのか二泊なのかは知らないけど、日曜は映画、観に行こう。センター街での思い出を、君との思い出ばっかりにする」

 素敵な話だ。「そうね。でもちょっとは、友達との思い出を残させて」

 リタやアニタ、ジェニーやレナ、他の友達たちとの思い出がある。

 「五十パーセントもらえれば、じゅうぶん」

 欲張っているのか控えているのか、よくわからない割合だ。「じゃ、契約成立」

 ふたりはマリーの家がすぐそこに見える位置に着いた。好きな人と歩く道は、時間は、とても短い気がする。実際、公園からそう離れているわけではないけれど。

 立ち止まったマリーが彼に言う。

 「ここで待ってて。すぐに戻ってくる」

 「うん。そのまえに、もう一回」

 家から見えないよう電柱に隠れ、マリーはまた、ギャヴィンとキスをした。

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