ボルティック(Voltlik)
雷を司る覚醒の神ボルティック
創世神の中で十四番目に生まれた女神がボルティックである。その名前は古代ラグナ語で『雷光』という意味がある。
彼女は雷属性を司り、覚醒の神格を持つ。ボルティックを象徴するのは銃と太鼓であり、黄色をスピリチュアルカラーとしている。また5月を統治していて、春の終わりと夏の始まりを告げる雷を降らせる神でもある。
虎の姿を持つ神と伝えられている。その咆哮はまさに雷鳴であり、走る雷光が身に宿りその模様となった。
その姿は『逞しくも豊満な体つきで、肌は日に焼けている。その赤髪は雄々しく逆立ち、黄の眼光は何よりも鋭い。人の身にありても、耳を立て音を探り、太き尾を気儘に振るが、その姿をベアストと比べるのは不遜というものであり、その鋭き爪で引き裂かれるであろう』と称される。
人間の内、最も野生に近いベアストに篤く信仰されている。というのも、ボルティックはエアスト大陸の東の果てにある『黒き森』を棲み処としており、そこでベアスト達に狩りを教えたのである。彼女の雄々しい狩りを学び、ベアストは自分達よりも大きな獲物を採れるようになったという。
ボルティックは銃を手にした姿でよく描かれる。銃声は彼女の声と似ており、銃弾は彼女の雷の如く離れた者を撃つ。
ボルティックの持つ銃は火薬式ではなく、彼女の雷を銃身に溜め込み、その磁場で銃弾を放つ電磁銃である。火薬式の銃は彼女の武器を真似て人間が造り出したものだ。
ボルティックは好戦的な神でもあり、戦士を好んだ。
ある時、彼女はガロに対して勝負を挑んだ。彼女は正々堂々とした勝負を好んでいたので、彼女に有利な森林でもなく、ガロに有利な草原でもなく、メルスが奴隷を戦わせている闘技場を舞台に選んだ。
メルスの闘技場で対峙した二人だが、ガロは一向に牙を抜かない。焦れたボルティックが、ガロの頬を掠めるように銃を放っても動かない。臆したか、とボルティックが叫べば、ガロは首を振って否定した。
そして、命繋ぐ狩りでもなく、争いをなくすための長を決めるのでもなく、誇りを傷付けられたのでもないので、抜く牙を持たないが、勝負に逃げる恥を受ける訳にもいかないので此処に立っている、とガロは告げた。
ボルティックはその心意気に感服し、意味なく勝負を挑んだ己を恥じた。そして彼女は、自分を慕って従うベアストの半分に対してガロの元へ行き、その強さを学ぶように言ったという。