華麗なざまぁがしたいのにっ!!
「すまないが、フィオナ、キミとの婚約を破棄させてもらう」
「な、なんで、私たちずっと愛し合っていたではないですかっ!!!」
舞踏会の最中、突然、私はそう告げられた。
私の心にピキンと亀裂が入る。
前世では不慮の事故で20歳で私は死んだ。
転生したら、私は一国の王女だった。
それからというもの、特に不自由無く暮らしてきたし、婚約者であるハク王子ともいい感じにやってきた、と思ったのに。
しかし、ここで前世の勘が働いた。
私は、きっと、ハクにずっと手の上で転がされてきたのだわ。
きっと、他に好きな人がいるとか、そんなくだらない理由で婚約破棄されるに決まってるわ。
許さない。
絶対に、許さないわよ。
わかっている。
私が不当に婚約破棄されたということは、次に待ち構えているのは華麗なるざまぁ展開だ。
私は、心の傷を復讐心へと変換する準備を始める。
「・・・わかりましたわ」
こっからよ。あんたなんか、簡単に捨ててやるわ。
「・・・ほんとに、・・・・ぼん゙どに゙ずま゙な゙い゙!!!!!」
突然、ハクは下を向いて、拳をぎゅっと握りしめながら泣き出した。
周囲はハクが泣いていることにはまだ気がついていないみたいだ。
落ち着くのよ、これは、演技。
そうやって、最後まで騙そうとしているのよ、これは。
「俺の国と主従関係にあった国から、・・・人質に、俺を寄越せ、と言われてしまったんだっ、・・・・・・クソッ」
ああ、もう!!
どっちなの?
大悪人なのか、もしくは、私の大好きなハクのままなのか。
私は、一応もう少し様子を見ることにした。
「俺、・・・すまない、・・・・フィオナのことは、心から愛していたのだ」
「そ、・・・そんな、」
「俺の力では、・・・どうにもできなかった、」
そういって、彼はまたしくしくと子供のように泣き始めた。
さすがの私も、いくら演技だったとしても心配せざるを得ないので、彼に寄り添い、背中をポンポンと撫でた。
「僕の、勝手な事情ですまない。・・・でも、こうでもしないと国民が守れないんだ、」
・・・。
ここは、一つ試してみよう。
「ハク、私はあなたのことを、世界で一番愛していたのです!!」
そういうと、ハクの瞳がより一層うるっと、輝いた。
・・・・・・
おい、まだだ。まだわからないぞ。
ざまぁ確定演出をなんとか引き出さなければ、
「だから、国民なんてお捨てになさって、私と婚約しましょうよ、」
よし、
これで、「え、それは、ちょっと、」とか「そ、そそそそれは、さすがにできないよ」とか動揺したら、確実に黒だ。
行けええええええええええ!!!!!!!!!!!!
「・・・なるほど!!!その手があったか!!」
えええええ!?!?!?
どういうこと?
さてはこいつ、まだそのキャラで突き通すつもりだな。
私は、私を不幸にする人間を許さないからなっ!!
「確かに、・・・国民をなげうってでもフィオナと婚約破棄なんてしたくない気持ちはあるんだ。・・・しかし、こんな生活ができているのも国民のお陰。こうやってフィオナと出会えたのも国民のお陰。そんな国民を、・・・僕には裏切ることができないよ、」
黙れ!!ボケゴミが!!
貴族のボンボンに生まれたくせにそんな綺麗事をほざくんじゃねえぞ。
なんなら、綺麗事よりも綺麗じゃねえか!!
おい、まだ諦めねえからな。
絶対に、本性を暴いてやる。
「・・・ハクが行かないといけないのですか?私、一生添い遂げるとお約束したではありませんか!!だから、私も一緒についていきます!!」
心の中でニヤリと笑う。
どうだ、ついてこられたら困るだろうに。
「・・・人質として送られた私は、おそらく向こうの国の姫と婚約させられるでしょう。そこに、フィオナを連れて行くわけには行きません!!・・・ならば、ここで、」
ハクが服の中からナイフを取り出す。
「ここで、自ら命を絶って、それで、フィオナにはもう僕のことなんて忘れてもらえば、それで、・・・」
「ああ、ちょっと!!」
私はハクの手を握る。
「そんなんあかんやんけ。兄ちゃんさ、限度ってあるよ。そんなさ、そもそも舞踏会の途中やん。なあ?わかるやろ?」
人間って、口が悪くなると自然と関西弁になっちゃうよね。
少なくとも、私はそうだよ。
私は彼の顎をくいっと持ち上げる。
「まあ、兄ちゃんさ。ええよ、わかったよ。婚約しよう。ほんで、そっちの国なんか無視してしまえばええやんけ。それに、こっちだって大して立場変わらんやん。同じや。兄ちゃんの親がどっちを選んだかってことやろ?ほな、ワイは兄ちゃんのことを責めるつもりはないねんから。とりあえず、兄ちゃんはあんたの父ちゃんを説得してきてくれや」
ハクの顎から手を離す。
ハクの顔が赤くなっている。
「・・・・かっけえ、」
彼のその一言で、私は正気に戻った。
自分の顔が赤くなっているのがわかったので、私はパタパタと手で顔を仰ぐ。
「ご、ごめん、」
ああ、恥ずかしい、
まあ、ざまぁじゃなさそうだし、良かったか。
そうだな。
変に疑ってた私がよくなかったのだ。
私たち、愛し合ってたじゃないか。
「僕、お父様の説得に行ってくるよ!!もし、ダメなら、その時はまた考える。でも、絶対にフィオナのことを見捨てたりはしないからなっ!!」
そういって、キラリと彼は私に笑いかけた。
「・・・ありがとうございます、」
「すまない。不安にさせるようなことを言ってしまって」
私は、ハクにハンカチを差し出した。
「あ、あの、鼻水とかついてますわよ、」
「あ、ああ、すまない。見苦しいところを見せてしまった、」
そういって、彼は私のハンカチで顔を拭いた。
「・・・私、いつまでも待ちますわ。なんとか、お父様を説得してきてください」
「そうだな。僕も、フィオナの約束に応えられるよう、頑張るよ」
というわけで、私たちは手を繋いで引き続き舞踏会を楽しんだのでした。
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