表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/12

添い寝イベント

 俺はベッドに倒れ込んだ。

 心臓がばくばくしている。

 変な汗が出ている。


 ふと、考えた。


 俺は今、女の身体だ。

 つまり——処女なんだ。


 前世では、三十二年間童貞だった。

 一度も女性と関係を持てなかった。


 それなのに——


 この世界で、俺が先に処女を失う?


 男に抱かれて?


 この身体で?


「——冗談じゃねえ!」


 俺は思わず叫んだ。


 童貞より先に処女喪失とか、ありえない。

 絶対に、絶対に嫌だ。


 俺は男に抱かれたくない。

 この身体を、男に差し出したくない。


 でも——このままメイドを続けていたら、いつか結婚させられるかもしれない。


 貴族の子息とか、騎士とか、そういう男と。


 想像しただけで、吐き気がした。


(俺、どうすればいいんだ……)


 答えは出なかった。


(落ち着け、落ち着け……)


 深呼吸を繰り返す。


 この身体に、慣れてはいけない。

 でも、どうしても気になってしまう。


 俺は枕に顔を埋めた。


◇ ◇ ◇


 そんなことを考えていると、ドアがノックされた。


「リリア、起きてる?」


 お嬢様の声だ。


「お、お嬢様? どうされました?」


 ドアを開けると、お嬢様がネグリジェ姿で立っていた。


 また薄い生地だ。

 月明かりに透けて、シルエットが見える。


「悪い夢を見たの。一緒に寝てもいい?」


 ——え?


「お嬢様、それは——」


「お願い、リリア」


 涙目で見上げられる。


 断れるわけがなかった。


◇ ◇ ◇


 俺の狭いベッドに、二人で入った。


 お嬢様が俺にぎゅっとしがみつく。


 柔らかい身体が、全身に押し付けられる。

 薄いネグリジェ越しに、体温が伝わってくる。


「リリア、あったかい……」


「お、お嬢様……」


「このまま、朝まで一緒にいて」


 お嬢様が俺の首筋に顔を埋める。


 吐息が肌に当たる。

 くすぐったい。そして、熱い。


「リリアの匂い、好き」


「っ……」


 足が絡み合う。

 太ももが触れ合う。

 お嬢様の柔らかい胸が、俺の胸に押し付けられる。


 薄いネグリジェ越しに、体温が直に伝わってくる。

 というか、ほとんど素肌に触れているようなものだ。


「リリアの体、柔らかい……」


 お嬢様がさらに寄り添ってくる。

 足を俺の足に絡ませ、腰に腕を回す。


「お、お嬢様……!」


「ん……気持ちいい……」


「おやすみ、リリア」


 お嬢様が目を閉じた。

 やがて、安らかな寝息が聞こえ始める。


 俺は——一睡もできなかった。


◇ ◇ ◇


 翌日。

 そしてその翌日も。


 お嬢様との距離感バグ生活は続いた。


◇ ◇ ◇


 ある朝のこと。


「リリア、今日は特別な日だから、お化粧してあげるわ」


 お嬢様がメイク道具を持って現れた。


「え、お化粧……?」


「そう。女の子なんだから、覚えないとダメよ?」


 俺はドレッサーの前に座らされた。


 お嬢様が俺の顔を覗き込む。


 顔が、近い。


「まずはファンデーション」


 お嬢様の指が、俺の頬に触れた。


 すべすべと肌を滑る感触。


「リリアの肌、すべすべね。羨ましいわ」


「あ、ありがとうございます……」


「次はアイライン。目を閉じて」


 俺は目を閉じた。


 お嬢様の吐息が、顔にかかる。

 心臓がうるさい。


「ん……もうちょっと右……」


 お嬢様の手が、俺の顎を固定する。

 至近距離で顔を覗き込まれている。


「はい、できた。目を開けて」


 鏡を見ると、そこには——


 見知らぬ美少女がいた。


「わあ、可愛い! やっぱり化粧映えするわね」


「これが……俺……」


「リリア、今『俺』って言った?」


「い、言ってません!」


「ふふ、バレてるわよ♪」


 お嬢様がにやにや笑う。


「次は口紅ね」


 お嬢様が俺の唇に、紅を塗り始めた。


 くすぐったい。

 そして、なんだか恥ずかしい。


「ん……動かないで」


 お嬢様の指が、俺の唇をなぞる。


「っ……」


「はい、完成♪」


 鏡の中の俺は、完全に女の子だった。


 ——いや、最初から女の子の身体なんだけど。


 でも、化粧をすると、余計に女らしく見える。


「とっても綺麗よ、リリア」


 お嬢様が俺の肩に手を置いた。


「これで男の人にナンパされても大丈夫ね♪」


「されたくないです……」


◇ ◇ ◇


 トイレに行きたくなった。


 当たり前のことだ。

 生理現象だ。


 でも——問題がある。


 俺は今、女の身体だ。


 女性用トイレを使わないといけない。


 俺は恐る恐る、女性用トイレに入った。


 ——個室しかない。


 当然だ。

 女性には立ってする器官がないのだから。


 俺は個室に入り、スカートをたくし上げた。


 下着を下ろす。


 そして、座る。


 ——なんか、変な感じだ。


 三十二年間、立ってしてきたのに。

 座ってするのは、すごく違和感がある。


 用を足す。


 ——終わった。


 紙で拭く。


 ——これも慣れない。


 下着を上げる。スカートを下ろす。


 鏡の前で身だしなみを整える。


 ——やっと終わった。


 たかがトイレに、こんなに時間がかかるとは。


 男って、楽だったんだな……。


【作者からのお願い】

もし、「おもしろい」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマーク登録をしていただけるとうれしいです。また「いいね」や感想もお待ちしています!

また、☆で評価していただければ大変うれしいです。

皆様の応援を励みにして頑張りますので、よろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ