夜の自己観察
その夜。
俺は自室のベッドで天井を見上げていた。
今日一日を振り返る。
着替えを手伝わされた。
髪を梳きながら手を握られた。
一緒にお風呂に入った。
背中を洗い合った。
額にキスされた。
(俺、大丈夫なのか……?)
メイド生活初日で、これだ。
明日以降、俺の理性は持つのだろうか。
◇ ◇ ◇
ふと、自分の身体に意識が向いた。
俺は今、ネグリジェを着ている。
胸元が大きく開いた、薄い生地のやつだ。
鏡を見る。
そこには、美少女が映っていた。
銀色がかった茶髪。
大きな瞳。
小さな鼻。薄い唇。
そして——華奢な身体。
俺は、自分の身体を見下ろした。
ネグリジェの下に、ふくらみがある。
胸だ。
思ったより小さい。控えめなサイズだ。
そっと、手を当ててみる。
——柔らかい。ふにゃりと形が変わる。
形を確かめるように、両手で持ち上げてみる。
——軽い。あまり重くない。
お嬢様と比べると、明らかに小さい。
痩せ型の身体だから、仕方ないのかもしれない。
試しに、揉んでみる。
「んっ……」
変な声が出た。
でも、止まらない。
もう少し強く揉む。
「あっ……!」
甘い感覚が広がる。
これが、女性の感じ方なのか。
指先で、つん、と先端に触れる。
「っ……!」
思わず声が漏れた。
電流のような感覚が背筋を走る。
先端が、硬くなっていた。
ネグリジェの薄い生地越しに、その形がはっきり分かる。
——気持ちいい。
いや、まずい。
俺は何をやっているんだ。
でも、好奇心には勝てなかった。
もう少しだけ。
ネグリジェを肩から下ろす。
胸が、露わになった。
鏡の中の自分が、半裸でこちらを見ている。
小さくて、でも形の良い胸。
薄桃色のトップが、ちょこんと膨らんでいる。
控えめなサイズだけど、これはこれで可愛いのかもしれない。
俺は——自分の胸に見惚れてしまった。
「綺麗……」
思わず呟いた。
いや、何を言ってるんだ。
これは俺の胸だぞ。
でも、綺麗なものは綺麗だ。
先端を、指でつまんでみる。
「ひっ……!」
甘い痺れが全身に広がった。
腰に力が入らなくなる。
膝がガクガクする。
——これ、やばい。
でも、止められなかった。
両手で、左右の先端を同時に刺激してみる。
「んあっ……!」
変な声が出た。
足の力が抜けて、ベッドに座り込んでしまった。
息が荒い。
全身が熱い。
下腹部に、変な疼きを感じる。
——だめだ、これ以上は本当にまずい。
俺は深呼吸をして、なんとか自分を落ち着かせようとした。
でも、好奇心は収まらない。
視線を下げる。
細いウエスト。
なめらかな曲線を描いて広がる腰。
ネグリジェの裾をめくる。
白い太ももが現れた。
手で触れてみる。
すべすべだ。
自分の肌とは思えないほど、滑らかで柔らかい。
太ももの内側に手を当てる。
「っ……!」
敏感だ。
触れるだけで、変な感覚が走る。
手が、自然と上へ動いた。
太ももの内側を、ゆっくりと上がっていく——
下着の端に、指が触れた。
「——だめだ!」
俺は自分の手を止めた。
これ以上は、本当にダメだ。
何をやっているんだ、俺は。
これは俺の身体じゃない。
いや、今は俺の身体だけど、元々は——
でも、下腹部の疼きは収まらない。
気になる。
この身体がどうなっているのか、確認したい。
——いや、だめだ。
そこを触ったら、もう戻れない気がする。
俺はベッドに倒れ込んだ。
心臓がばくばくしている。
全身が火照っている。
——俺、興奮してる?
この身体で?
女として?
頭がおかしくなりそうだ。
◇ ◇ ◇
——夢を見た。
暗い部屋。
見知らぬ男が、俺の上に覆いかぶさっている。
顔は見えない。
でも、髭の剃り残しが顎にあるのが分かる。
汗臭い。
男の手が、俺の肩を押さえつける。
「っ——!」
動けない。
逃げられない。
男の手が、俺の服を剥ぎ取っていく。
「や、やめ——」
声が出ない。
男の手が、俺の胸に触れた。
「っ——!!」
違う。
これは、お嬢様の手とは全く違う。
荒々しくて、乱暴で、痛い。
男の手が、さらに下へ移動していく。
太ももに触れる。
脚を開かせようとする。
「やめてっ——!」
——その瞬間、目が覚めた。
◇ ◇ ◇
俺はベッドの上で、荒い息をついていた。
全身が汗でびっしょりだ。
心臓がばくばくしている。
——夢だ。
夢でよかった。
でも、リアルすぎた。
俺は天井を見上げながら、考えた。
あの夢の続きが——もし現実になったら。
男に押さえつけられて。
服を剥がされて。
俺の身体を——
想像しただけで、寒気がした。
処女を奪われる。
この身体を、男に蹂躙される。
そして——妊娠させられる。
俺の腹の中に、知らない男の子どもが宿る。
「っ——」
吐き気がした。
ありえない。
絶対に、ありえない。
俺は男だ。
中身は、三十二歳のおっさんなんだ。
なのに——この身体は女で。
妊娠する機能を持っていて。
——怖い。
この身体が、怖い。
俺は膝を抱えて、うずくまった。
前世では、女性と付き合うことすらできなかった。
童貞のまま死んだ。
なのに、この世界では——
女として生きて。
いつか、男に抱かれて。
処女を失って。
妊娠して。
子どもを産んで——
「——冗談じゃない」
俺は呟いた。
絶対に、絶対に嫌だ。
童貞より先に処女を失うなんて。
男に妊娠させられるなんて。
想像するだけで、全身に鳥肌が立つ。
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