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背中流しの罠

 翌日。


「リリア、服がちょっと乱れてるわ。直してあげる」


 お嬢様が、俺のメイド服に手をかけた。


「え、そうですか——」


 言い終わる前に、お嬢様の手が俺の胸元に入った。


「っ——!」


「ほら、ここ、ずれてるでしょ?」


 お嬢様の指が、俺の下着に触れる。


「お、お嬢様! 自分で直せます!」


「いいからじっとして」


 お嬢様が俺のブラジャーの位置を調整する。

 その手が、胸のふくらみに触れる。


「んっ……!」


「あら、声出ちゃった♪」


「お、お嬢様!!」


「はい、直ったわ」


 お嬢様が満足そうに笑う。


 俺は——顔から火が出そうだった。


◇ ◇ ◇


 またある日。


「リリア、コルセット、きつそうね。緩めてあげる」


 お嬢様が俺の背後に回った。


「え、いや、大丈夫です——」


「ダメよ。苦しいでしょ?」


 お嬢様がコルセットの紐を解き始めた。


 背中が、徐々に露出していく。


「ほら、脱いで」


「え、ここで!?」


「私しかいないじゃない」


 お嬢様が俺の肩に手をかけ、ドレスを下ろし始めた。


「ちょ、ちょっと待って——」


 ドレスが、肩から滑り落ちる。


 上半身が、下着姿になった。


「うん、やっぱりきつかったわね。跡がついてるわ」


 お嬢様が俺の腰を撫でる。


「っ——!」


「ここ、赤くなってる。可哀想に」


 お嬢様の手が、俺の腰から腹部へと移動する。


「お、お嬢様! もう大丈夫です!」


 俺は慌てて距離を取った。


「あら、残念。もっと見たかったのに」


 お嬢様がにやにや笑う。


「お嬢様は、俺で遊びすぎです!」


「リリア、今『俺』って言ったわよ?」


「っ——!」


「ふふ、バレてるわよ♪ お兄さん?」


 ——え?


 今、お嬢様、何て言った?


 「お兄さん」って言った?


 ——もしかして、バレてる?


 俺の中身が男だって、気づいてる?


 なぜ? どうして分かる?


 ——いや、追及するのは怖い。


 下手に突っ込んだら、本当にバレるかもしれない。

 ここは、聞こえなかったふりをしておこう。


 俺は何も言わず待っていると、お嬢様は何事もなかったように微笑んだ。


◇ ◇ ◇


「ねえリリア、背中流してあげるわ」


「い、いえ! 私がお嬢様の背中を——」


「いいから、こっち向いて。ほら」


 有無を言わせず、俺の身体が回される。


 ——って、タオルは?


 お嬢様の素手が、俺の背中に直接触れた。


「っ——!」


「あら、素肌の方が気持ちいいでしょ?」


 タオルなしだった。

 お嬢様の指先が、俺の背中をなぞる。


「リリアの肌、本当にすべすべね。羨ましいわ」


「あ、ありがとうございます……」


 石鹸を使っているせいで、お嬢様の手が滑らかに動く。

 背中全体を、ゆっくりと撫でまわされる。


「んっ……」


 思わず声が漏れた。


「肩こってる? ここ、硬いわ。揉んであげる」


 お嬢様の手が、肩を揉み始めた。

 力加減が絶妙で、気持ちいい。


「気持ちいい?」


「は、はい……」


 正直、気持ちいい。

 でも、それ以上にドキドキする。


 ふと、お嬢様の胸が俺の背中に押し付けられた。


「っ——!?」


「あら、当たっちゃった♪」


 お嬢様が悪びれもせずに言う。

 いや、どう考えてもわざとだろ。


 柔らかい二つの感触が、背中に広がっている。

 温かい。そして、とても柔らかい。

 先端の感触まで、はっきりと伝わってくる。


 お嬢様が少し動いた。


 胸が、俺の背中で潰れて広がる。


「んふふ、気持ちいいわね。リリアの背中、温かい♪」


 ——お嬢様! あなたの胸が! 俺の背中で!


 俺の理性が激しく削られていく。


「次は私の番ね」


 お嬢様が背中を向けた。


 白い背中が目の前にある。

 なめらかな肌に、背骨のラインがうっすらと浮かんでいる。

 肩甲骨が動くたびに、筋肉がなめらかに波打つ。

 腰にかけて描く曲線は、まるで芸術品のようだ。

 そしてその下には、形の良いお尻が丸く突き出ている。

 俺は慌てて視線を上げた。


「早くして、リリア」


「は、はい!」


 俺は震える手で、お嬢様の背中を洗い始めた。


 タオル越しに伝わる柔らかさ。

 時々漏れる、お嬢様の吐息。


「んっ……そこ、気持ちいい」


 俺の理性が削られていく。


「もう少し下も」


 手が腰の方へ移動する。


「もっと優しく……んっ……」


 お嬢様が小さく腰を揺らす。

 艶っぽい声が漏れる。


「あ……そこ……いい……」


 俺は全身の血液が沸騰するのを感じた。

 指先に伝わる、お嬢様の柔らかい肌。

 時折漏れる、甘い吐息。


 俺は元おっさんなんだ。

 こんな状況、耐えられるわけがない。


◇ ◇ ◇


 お風呂から上がった後も、試練は続いた。


「リリア、髪乾かして」


 お嬢様がバスローブ姿でドレッサーに座る。

 バスローブの隙間から、白い太ももが覗いている。

 しかも、帯の結び目が緩いのか、胸元も大きく開いている。

 谷間がはっきり見えている。

 いや、谷間どころか、胸の形がほとんど見えている。


 お嬢様が動くたびに、バスローブがさらにはだける。


 もう少しで、先端まで見えそうだ。


「リリア? どこ見てるの?」


「み、見てません!」


 俺は必死に視線を排水溝に固定した。


 タオルで銀髪を乾かし始めた。


「リリアって、不思議な子ね」


「そうでしょうか」


「普通のメイドなら、こんなに緊張しないでしょ」


 ドキッとした。


「女同士なんだから、もっとリラックスしていいのよ」


 ——女同士。


 そうだ、今の俺は女だ。

 お嬢様と同じ、女なんだ。


 でも、中身は三十二歳の、女性との経験が皆無なおっさんなんだ。


「リリア? 顔、赤いわよ?」


「の、のぼせたようです……」


「ふふ、可愛い」


 お嬢様が俺の頬に手を当てた。


 冷たくて、気持ちいい。


「熱いわね。大丈夫?」


「だ、大丈夫です……」


 お嬢様の顔が近づいてくる。


 額に、唇が触れた。


「っ——!?」


「熱、測ってあげたの。大したことなさそうね」


 お嬢様がいたずらっぽく笑う。


 俺の心臓は、完全に限界を超えていた。


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