メイドになりました
俺の名前はリリア。
公爵家に仕えるメイド見習いだ。
……と言いたいところだが、中身は三十二歳のシステムエンジニアである。
デスマーチ中に心臓発作で死んで、気づいたら異世界。しかも十六歳の美少女として転生していた。
転生窓口で担当してくれたのは、胡散臭い魔法使いコスプレの青年——転生神ツクヨだった。
とんがり帽子に星柄マント。「MAGIC」とか刺繍された安っぽい杖を持っている。
俺が「なんで女の身体なんですか!」と文句を言ったら、ツクヨは肩をすくめながら答えた。
「いやー、これしか空きがなくてですね。あなたの魂に最適な器でしたよ♪ 文句は上に言ってください」
社畜SEが社畜神に当たったのは、何かの因縁だろうか。
最適じゃない。絶対に最適じゃない。
俺はオタクだった。メイド喫茶に通ったこともある。
でも、まさか自分がメイド服を着る側になるとは思わなかった。
◇ ◇ ◇
公爵家の屋敷は、想像以上に豪華だった。
「あなたが新しいメイド見習いね。私はソフィア、先輩メイドよ」
案内してくれたのは、二十歳くらいの黒髪の女性だった。
落ち着いた美人で、胸元が少し窮屈そうだ。
(目線を上げろ、俺……)
「これがあなたの制服。着替えたら、お嬢様のところへ案内するわ」
渡されたのは、黒のワンピースに白いエプロン。フリルのついたカチューシャ。
典型的なメイド服だ。
俺がかつて見てたアニメやゲームのメイドそのものじゃないか。
「更衣室はこちらよ。早く着替えて」
促されて更衣室に入る。
個室かと思ったら、広い共同更衣室だった。
すでに数人のメイドが着替えている。
目のやり場がない。
「あら、新入りさん?」
振り向くと、下着姿の女性がいた。
豊かな胸が、レースのブラジャーからこぼれそうになっている。
「は、はい! リリアです!」
「私はマリア。よろしくね、リリア先輩」
——先輩?
「あ、私、十五歳なので。リリアさんは十六歳でしょ?」
そうか、見た目では俺の方が年上なのか。
中身は三十二歳だけど。
「着替え、手伝いましょうか?」
マリアがにこにこしながら近づいてくる。
「い、いえ! 自分でできます!」
「遠慮しないでください♪ 背中のボタン、一人じゃ大変ですよ」
確かに、この服は背中にボタンがずらりと並んでいる。
抵抗むなしく、俺は服を脱がされた。
前世で着ていたスーツとは違う。ブラジャーを外す手が背中に回ってくる。
「リリア先輩、緊張してます? 肩、ガチガチですよ」
マリアの手が肩を揉む。
柔らかい胸が背中に押し付けられる。
(これ、元おっさんにはきつい……!)
「は、はい、大丈夫です!」
声が裏返った。
◇ ◇ ◇
なんとか制服を着終えた。
鏡を見ると、そこにはフリフリのメイド服を着た美少女がいた。
俺だ。
複雑すぎる。
「あら、可愛いじゃない」
ソフィア先輩が戻ってきた。
「でも、コルセットが緩いわね。締め直すわよ」
「え、これ以上——」
ぎゅうっ。
「っ——!!」
息ができない。
肋骨がミシミシ言っている。
「これで完璧ね」
鏡を見ると、ウエストがきゅっと引き締まっていた。
代わりに、胸と尻が強調されている。
メイド服のシルエットが、こんなに色っぽいものだったとは。
「さあ、お嬢様のところへ行きましょう」
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