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第七話:昔話と悩み、元気無い君と

___拝啓、陸斗様。


 いや、俺も何で陸斗にこんな事相談しようとしてるのか分からないけど、取り敢えず誰でも良いから聞いて欲しい。


「はぁあ…。本当、どうしたんだろ…」


「なんだ、お前もなんか悩み中なのか?」


 あれ、陸斗の声がする…。

確か、美沙と一緒に海の方に行った筈…なんだけどな。


 …ああ、イマジナリー陸斗かな。

俺の記憶の中の陸斗、みたいな…(真顔)


「聞いてよイマジナリー陸斗ぉお…」


「誰がイマジナリーだアホ瑠伊」


…え?


「うわ”っ居たの!?陸斗!??」


「今気付いたんかよ…」


 はぁあ…と呆れた様な表情で陸斗はそう小さく呟いた。

本物だったんだ、びっくり…。

あれ、でも何でここに…?美沙は…?


「だって、海遊びに行ったんだと思ってたんだもん。さっき美沙に行こって誘われてなかった?」


 そう聞くと、陸斗は「あぁ、」と理解したように声を零した。

そしてそのまま、言葉を続ける。


「なんか、日焼け止め塗り忘れたって部屋戻っちまったんだよ。だから俺も一旦戻ってきた」


「あぁ、そういう事…。美沙もすっかり女子だねぇ…」


 昔は、日焼けなんて全くもって気にせずに、日中暇さえあれば外を駆け回ってたのに。

…まぁ俺も、もう日光を浴びながら外を駆け回るなんて事、したくないし。

そもそもきっと…というか、絶対出来ないと思う。


「だな。…まぁ、美沙は昔からずっと変わらず、どんなところも可愛いけどなぁ」


「待ってやめて急に惚気ないで。結構心に来る、俺の」


 俺なんて彼女いない歴=年齢を今年も更新してしまいそうな、悲し非リア童貞なんだからさ…。

その陸斗の”俺とても幸せですオーラ”は心にダイレクトアタックしてくるんだよぉお…。

ちくしょう幸せになれよ…!!んで俺の大事な幼馴染み泣かすんじゃねぇぞ…!!


「うるせぇな別に良いだろ…。てか、俺等の事は良いんだよ、今はお前の事だ」


「え、俺?」


 何だろ…。俺、陸斗と話さなきゃいけない事なんて何かあったっけ…。

心当たりはあんまりないけれど…。


「さっきの溜息…、何か悩んでたんじゃねぇのか?美沙が戻って来るまでで良いなら話聞いてやるよ」


 …え?

相変わらず…、優しいなぁ。陸斗は…。

今も、昔も、ずっとずっと…。

俺は、陸斗のそういうところが…。


「り、陸斗さまぁあ~!!好き!!」


「だ~っっ!!分かったからくっつくなっての!!」




























「…成程な。確かに…最近、つーか…。昨日から元気無ぇよな、アイツ」


「そうなんだよねぇ…。何かあったのかなぁ…」


 俺が、陸斗に相談したのは…


「冴島、やっぱいつもより落ち込んで見えるよね…」


 そう、俺の最愛の推し_冴島の事だ。


「だってさ、昨日ずーっと溜息ついてたし、ご飯もあんまり食べられてなかったみたいだったし、一君意外とは話してる様子なかったし…」


「待て待て待て待て…。お前どんだけアイツの事見てんだよ。そこまで来ると最早ストーカーだぞ」


「え”。」


 す、ストーカー…?俺が…?

そ、そんなつもり全然…。あ、でもストーカーってそういう自覚無い事が多いって言うし…。えぇ…?


「…冗談だよ。お前は昔っから、人の事ちゃんと見てるもんな。勿論良い意味で」


「あー…。それはまぁ…、そうだけど…」


 きっと陸斗は、俺を褒め慰める為に行ってくれたんだろうけど、俺はあまり…そう思っていない。


 だってこれは…、いちいち周りの人の顔を見て、感情をうかがって、必要最低限嫌悪感を抱かせ、嫌われてしまわないよに…。

所謂、”逃げる為の特技”だから。

それに…。陸斗の言う通り、この特技は…、一歩間違えばストーカー行為にもなりうるだろうし。

まぁそれは、俺は今後もずっと、一線を引いて気を付ければ良いだけだし、多分大丈夫だと思うけど…。


「とはいえ…、俺も流石に分かんねぇなぁ…。冴島の悩み事までは」


「そりゃそう…だよねぇ…」


 俺も、全くもって分からない、人の悩んでる事までは…。

人の心はどうやったって覗き見る事なんてできやしないのだから。

心の中まで読み取れてしまったら、こんなに苦労はしないしね…。


「…あ、分かんないなら直接聞いてみたらどうだ?」


「…え?」


 …相変わらず、簡単に言ってくれるなぁ…。

そんな、難しい事をさぁ…。


「それが出来たらこんなに悩んでないよ俺…。そもそも、俺なんかで力になれる事かどうかすらも分かんないのにさ…」


 そんな状態で、気さくに”どしたの?何か悩み事?俺で良ければ話聞こか?”なんて言える訳ないしさぁ…。

俺にそんな度胸は無い…!!


「それ位ちょっとは頑張ってみろよ。…お、丁度良いところに」


 そういう陸斗の視線の先に、俺も振り返ってみると…。

そこには、見るからに元気のなさそうなオーラをまとった冴島が居た。

…まさか、陸斗…。


「おぉぃ冴島~、ちょっと今良いか?」


「…陸斗…と、紫暮…!?」


 やっぱり…。

こんな時まで俺の予想的中しなくて良いんだよ俺…!!!

人の悩みとかそんなずけずけと聞けないから…!!


「何…なんか用?」


「あぁ、ちょっと聞きたい事が~…」


「陸斗~?日焼け止めちゃんと塗れたから海戻ろ?」


「っお、美沙」


 陸斗が冴島に声を掛けたとほとんど同時に、もう一人新しい声が聞こえてきた。

凛とした、まるで鈴の様な可愛らしい、綺麗な声_美沙だ。


「悪い冴島、俺行くわ。続きは瑠伊と話しといて。後で伝言頼む」


「っぇ?あ、嗚呼…。分かった」


「え。」


 待って待って陸斗、この状況で俺置いていくの…!?

無理だってこっからどうやって質問切り出せば良いか分かんないよ俺…!!


「…で、話って結局何だったんだ…?」


「え、えぇと…。そう、だなぁ…」


ほらぁ無理だって!!!!!

この話は次回にも続くよ!!

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