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♯2. 阿呆と幼馴染みと勉強と

「…んじゃ、皆気を付けて帰るように。事故とか事件とかに巻き込まれんなよな」


 面倒くさそうに短くそう忠告し、先生は教室を出て行った。

そう、俺の大嫌いな授業が全て終わり、今は放課後なのである。

あれだけ静かだった教室も、先生が居なくなった事によりたちまち騒がしくなり始めた。


「うがぁ~…!!テストマジ無理詰んだ…。英訳とか熟語とかどうやって覚えろってんだよ~…!!」


 突然後ろの方から聞こえてきた、その大きな声に驚いてつい、そちらの方へ振り返ってしまった。視界に映るのは、頭を抱えながら机に突っ伏しているクラスメイト・広瀬と、「まぁまぁ…」とそれを宥める冴島の姿だった。

…え、俺の推し優しすぎない…?好き…>


「瑠伊~…、ってなんだこの地獄絵図…」


「…あ、陸斗」


 同タイミングで陸斗が教室に入ってきた。俺の名前を呼びながら。

俺と陸斗の自宅はお向かいさんにある為、約束をせずとも一緒に帰る事が多い。

きっと今回もその為に俺を迎えに来たのだろう。多分だけどね。


「ほら、来週辺り中間テストあるじゃん。それに絶望してるクラスメイトの図」


「…あー…、んなもん前もって勉強してりゃ赤点回避位余裕だろ。完全に自業自得だな」


「おいこら聞こえてんぞ十六夜ィ!!」


 広瀬に聞こえないよう、小さめの声で言ったのに、その気遣いを無に帰すように普通の声量で、呆れたような表情を浮かべ陸斗がそう言った。

ああほら、広瀬怒っちゃったじゃぁん…。絶対面倒くさいことになる…。


「…つか、いつもはそんな焦ってねぇじゃん。一。今回はどうしたんだよ」


 はー…、と面倒くさそうに聞く陸斗を前に広瀬は、わなわなと少し震えていた。


「監督に、次赤点取ったらスタメンから外すって言われたんだよぉ…」


 嗚呼。そういえばバスケ部だったっけ、この人。主将が勉学の所為でスタメン落ちってどういう事なのさ…。


「毎回補修で部活遅れて来るからだろ…?諦めてちゃんと勉強するんだな」


 広瀬の頭を優しく撫でながら、そう軽く忠告をする冴島。はいかわいい。


「っあ!!なら十六夜が俺に勉強教えてくれよ~…。お前確か成績良かっただろ~…?」


 やや涙目になりながらも、「頼む!頼れるのはもうお前だけなんだ~…!!」と喚いている。

…そんな嫌なのかな、部活出られないの。まぁでも…、そんだけ好きじゃなきゃわざわざ入部なんてしないか。

俺帰宅部だし、あんまりそう言うの分かんないけど…。


「はぁ…?何で俺が…。冴島に教えて貰えよ。別に成績悪かねぇだろ」


 な、となぜか俺の方へ真っ直ぐ視線を向けそう陸斗が聞いてくる。何で俺に同意求めてくんの…?

俺にもこの会話にっ混ざれって事?無理だよこのタイミングにこのメンツ…。




 俺が何も言えずにいると、先程の陸斗の言葉に返事をするように冴島が口を開いた。


「まぁ確かに、赤点取るほどじゃないけど陸斗とか紫暮ほど成績良いって訳じゃないからなぁ。今回の範囲、数学と日本史怪しいし…」


 そうやや表情を曇らせた冴島が言う。

どんな表情をしてても、推しって可愛いんだなぁ…なんて呑気に考えながら会話には参加せず聞く側に徹底する。



 …あれ、待って。俺の聞き間違いじゃなかったらさぁ…。冴島、陸斗の事名前呼び+呼び捨てした…?

どういう事?の意を込めてじとりと陸斗の方を睨み付けると、それに気付いたのかさっと素早く目を逸らされてしまった。

…あとで目一杯問いただしてやる…。そんな俺からの視線を逃れるようにか、ぱっと口を開き、別の話題を振ろうとしていた。


「それなら丁度負い。2対2で分かんねぇ箇所教え合えば良いんじゃねぇか?それなら俺も一に勉強教えてやれるし、Win&Winだろ。不本意だが」


「お、まじ?俺のために勉強会開いてくれんのか?陸斗やっさし~!!ありがとうな~!!」


「ほんっっっとうに不本意だけどな」


「何で2回も言うんだよ!!あえてスルーしてやったのに!」


「スルーすんな」


 そうわちゃわちゃと会話__というかいいかい?いや、痴話喧嘩も…__を聞きながら何となく冴島の方へ視線を向けると、彼も少し呆れたような、苦笑いを小さく浮かべ2人の方を見ているようだった。

俺の視線に気が付くと、ふにゃりと柔らかい微笑みに表情を変える。

…は?かっわ…。


「んじゃ、俺には紫暮が教えてくれるのか?」


 心強いなぁ、なんて無邪気な、どこか子供の様な笑みを浮かべ俺に声を掛けてくれた。ついぴしゃりと固まってしまう。

…え、幻覚?いや、今確かに冴島の口から”紫暮”って…。



…ん、あれ。ちょっと待って…?


「ちょっと陸斗、2対2って何。俺に拒否権は無い訳?権利剥奪反対」


「当たり前だろ。俺1人で2人一気に教えられるか」


 俺が言った言葉に、今度は陸斗がじとりと軽く睨みを利かせ俺に言い返してきた。

えぇ…。俺だって人に教えられるほど成績良い訳じゃないんだけど…。

てか、そもそもそんな空間俺が耐えられない。無理…。絶対どこかで死ぬ。尊死ぬ。


「無理だよ…!メンツ的にも心の余裕的にも…!!絶対無理…!」


「んな事言うなよ。お前も人見知り直す良い機会だろ?ずっと俺しか友達いないって状況もいい加減な…」


「そうかもしれないけどタイミング…!大体そういうのは自分のタイミングで__…」


 そう2人で言い合いをしていると、ふと横から陸斗ではない、別の視線を感じた。 冴島だ。

少し元気無さげにも見える。何で?さっきは滅茶苦茶楽しそうだったのに…。


「…紫暮来ねぇの…?なら俺は自分で何とかするわ。ありがとうな、紫暮」


 そう、やはりどこか元気無さげに微笑む冴島。

その表情を見て、ちくりとほんの少しの罪悪感。…ああ、もう…!


「わかったよ、俺も行けば良いんでしょ…」


 そんな顔、推しにさせたくないし見たくないから…!

断るなんて選択肢、ファンにある訳無いでしょ…!!


「で、場所は?ファミレスとか、図書館とかか?」


「ん~ん!!」


 そう元気にぶんぶんと首を横に振る広瀬。



 …なんか、嫌な予感がする。


「十六夜か紫暮の家が良いべ!」


「「はぁあああぁあぁっっっ!!??」」


久しぶりに陸斗とハモった。




















「ここが俺の部屋な。頼むから散らかすなよ…。特に一」


「何で俺だけ名指し!?!?」


「お前しか居ねぇからだろ、しそうなの」


 家に着くや否や、陸斗と広瀬がまた軽い言い合いをし始める。



 広義の結果、俺の家には妹や母親が居て騒げないからと、陸斗の家で行う事となった。

…いや、理由が騒げないからって何?勉強する気ないじゃん…?

まぁ、結果俺の部屋じゃなくなったから良いんだけどさ。


「じゃ、俺飲み物持ってくるから先始めてろな」


「っあ、俺手伝うよ。2人共何が良い…?」


 恐る恐る2人に聞いてみると、各々飲みたい飲み物を口にした。広瀬はコーラ、冴島は珈琲と。

…え、冴島って珈琲飲めるんだ…?いちごみるくとか甘い物ばっか飲んでそうなイメージなのに…。とてつもなく格好良いギャップだ…。尊…。



 そうじーん…、と1人感動していると、「おら早く行くぞ」と半ば無理矢理引き摺られる幼馴染みには優しくしてぇ…。



 自分で申し出た筈なのに、渋々…と俺は陸斗と一緒にキッチンへ向かった。



「そういや、陸斗の部屋来たの何気に久しぶりだけど何も変わってないね」


「ん~?そうか?」


 冷蔵庫からペットボトル飲料を取り出したり、お湯を沸かしたりと色々準備をしながらそういってみる。

陸斗の家に遊びに来るようになってからもう十数年。キッチンのどこに何があるのか位、大体分かってしまう。

話ながら準備するのなんてお茶の子さいさいだよね。

…まぁそれも、中学の頃までの話だけどね。美沙とお付き合いを始められてから、邪魔しないようにと遠慮してきたから。俺の所為で別れたとかなったら嫌だし。


「美沙の私物とか、物は増えた方だと思うけどな」


 部活が無い時とかよく来るし、なんていつもはぴくりとも変えない表情を少し柔らかくする。

…本当、相思相愛だよね。君等。見てるこっちが胸焼けしそう。


「…っと、瑠伊はココアで良いんだよな?こっちは準備出来たぞ」


「ん、俺も」


2つのトレーにそれぞれ、飲み物とお菓子の入った小皿を乗せ、俺達は再び、陸斗の部屋のある2階へ向かった。

更新が遅くなってしまい大変申し訳ございません…!!

ようやく落ち着きましたので再びの更新をお待ちくださいませ!!


『ご報告』

こちらの作品の更新時間を、”日曜日・17時~18時の間”に変更いたします。

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