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全国への壁



テスト期間も無事に終えた数日後


放課後のガンプラ同好会部室。

窓から差し込む夕陽が、机に並ぶアブファールトやシャイタン、ナドレを橙に照らしていた。

その中で、ユリ先生は湯気の立つ紅茶を机に置き、いつものふんわりした笑みを浮かべて言った。


「そろそろ、皆さんにもお話ししておいた方がいいですね……『全国ガンプラバトル大会』について」


「全国……!」

ツバサは瞬きを繰り返し、リュウヤは椅子から勢いよく身を乗り出す。

「おぉ!待ってました!!」

一方、ハルノはナドレを抱えるように撫でながら、小さく首を傾げる。


ユリ先生はそんな3人を見渡し、両手を軽く組んで話し始めた。


「全国大会は、学生限定ではありません。小中高生はもちろん、社会人の方や一般のビルダーまで、誰でも参加できる最大規模の大会です。ですから……集まるのは“本物のファイター”ばかり。簡単に勝ち上がれる場所ではないんですよ」


紅茶の香りに包まれながらも、その言葉は重みを帯びて響いた。

部室の空気が、少しだけ引き締まる。


「まず……関東。ここには二つの強豪が存在しています。

ひとつは――皇海オウカイ学園。リーダーは《盤上の支配者》マキモト・ショウゴさん。彼はチェスや将棋のように盤面を読み切り、十手先をも見通す戦術眼を持つ戦略家。彼の指揮するチームは、精密な配置と指揮によって最大限の力を発揮します。世界大会の常連チームであり、関東では“最強”と呼ぶ人も少なくありません」


「十手先……!」ツバサの声が小さく震えた。

戦況を読むことに自信がある彼にとって、それは大きな壁の存在を突きつけられるようだった。


「もうひとつは――聖蘭セイラン学園。リーダーは《雪上の貴公子》ハシマ・ユウさん。彼の華やかな立ち居振る舞いと、見る者を魅了する戦いぶり、チームによる完璧な連携は観客を惹きつけます。チーム全体も非常に洗練されていて……大会に出れば、必ず会場を沸かせる存在です」


「なるほど……関東は“知略”と“華”ってわけか」

リュウヤが腕を組み、にやりと笑う。

その横でハルノは「綺麗……」とぽつり。ユウの戦いぶりを想像し、どこか憧れのような気持ちを滲ませた。


ユリ先生はうん、と頷き、今度は声を少し落とした。


「そして……関西。ここを代表するのは、西玄セイゲン高校です。リーダーは《砂漠の猛将》シマトラ・アスマさん。豪快な攻めと緻密な采配を兼ね備えた実力者で、彼の率いるチームは凄腕の傭兵の様で、関西では敵なしと言われています」


「豪快で緻密……両方か。厄介だね」ツバサが眉をひそめる。


「ええ……だからこそ、全国の舞台ではこの三つのチーム――皇海、聖蘭、西玄――が特に注目されているんです」


ユリ先生の目が真剣に細められる。

「挑戦するというのは、彼らと同じ土俵に立つということ。皆さんが今感じているワクワクや楽しさを、大きな舞台で“形”にするということです」


一瞬の沈黙。

夕陽が揺れる光を机に落とし、アブファールトの翼を輝かせる。


最初にその沈黙を破ったのはリュウヤだった。

拳を握りしめ、豪快に笑う。

「いいじゃねぇか!燃えてきたぜ! そんな化け物みてぇな連中を相手にして、俺たちがどこまでやれるか……面白ぇだろ!」


その声にツバサも微笑みを返す。

胸の奥に、不安と同時に強い熱が灯るのを感じた。

ハルノもまた、小さく頷きながら――その熱を共有するように、ナドレを抱き締めた。


こうして3人の胸には、確かに新しい目標が刻まれていったのだった。

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