陽だまりの休日
休日の昼下がり。
賑やかな商店街のアーケードは、人々の声と屋台の香りで包まれていた。
「わぁ……すごい人だね」
ハルノが小さく声を漏らし、目を丸くする。
「ははっ、だろ?ここならなんでも揃ってるんだ!今日はナドのもんも探すんだろ?ついでに遊び尽くそうぜ!」
リュウヤが腕を振りながら歩く姿は、すでに遠足前の子供そのものだった。
「……はしゃぎすぎ。迷子にならないでよ」
ツバサが苦笑しながらも、頬を緩めていた。
__________
焼き屋の呼び込みに足が止まる。
「ほかほかですよ~!」
「……あ、美味しそう」
ハルノの声に、リュウヤが即座に反応する。
「おう!全種類買おうぜ!」
「えっ!? そ、そんなに食べられないよ」
慌てるハルノにツバサが笑い、店員に注文を告げる。
焼き立てのたい焼きを受け取り、3人が一口かじった瞬間――
「うんまぁぁぁぁ!!やっぱ出来立ては最高だな!」
リュウヤの豪快な声に、ツバサは苦笑し、ハルノはこぼれるように微笑んだ。
さらにソースの香りに誘われて串カツの屋台へ。
「おぉ、そっちも美味そうだな!」
リュウヤは財布を握って突撃、両手に串を抱えて豪快にかぶりつく。
「……ほんと食べすぎだよ、リュウヤ」
呆れるツバサ。
「リュウヤくん……楽しそう」
笑みをこぼすハルノ。
それだけで、食べ歩きの景色が少し温かく感じられた。
__________
食べ歩きの後、3人はナドのためにペットショップへ。
小さな首輪やペット用のベッドを前に、ハルノは真剣な眼差しを見せる。
「……ナドに似合うかな」
首輪を手に取り、ハルノが迷っていると――
「これとかどうだ?派手でカッコいいぞ!」
リュウヤが持ってきたのはトゲ付きのデザイン。
「……それはちょっと」
ツバサが静かに却下し、代わりに柔らかい紅色の首輪を差し出す。
「こっちなら、ナドにぴったりだと思う」
「……ほんとだ。ありがと、ツバサくん」
ハルノは照れたように頬を染め、首輪と小さなおもちゃ、そしてナドのベッド選んで大事そうに抱えた。
____________
帰り際、リュウヤがふとガンプラショップの前で立ち止まる。
「おっ!せっかくだし寄ってこうぜ!」
ショーケースには最新キットや改造パーツが並んでいる。
リュウヤは格闘戦用の武器パーツを手にして目を輝かせ、
「これ、シャイタンに付けたら面白そうだな!」
ツバサはじっとバックパック用のパーツを眺めながら、
「……でも、まだ早いか。今のアブファールトに必要なのは“基礎”だ」
と小さく呟く。
そんな2人を見て、ハルノも展示されていた美しいシルエットの機体に心を奪われる。
「……綺麗」
呟くその声は、これから始まる自分だけの制作への小さな前触れのようだった。
最後に立ち寄ったのは、賑やかなゲームセンター。
「うおぉぉ!あとちょっとで取れそうなんだよなぁ!」
リュウヤはクレーンゲームに夢中になり、アームがぬいぐるみを落とすたびに大騒ぎする。
「……ほんと、リュウヤは子供みたいだなぁ」
ツバサは呆れながらも微笑み、
「うん……でも、リュウヤくんらしいね」
ハルノもくすっと笑った。
_______
こうして賑やかで、笑いに満ちた休日の一日が過ぎていった。
3人の足取りは軽く、胸の中にはまた新しい思い出が刻まれていた。