それはとても綺麗だった
ビルドスペースに座り、箱を開けた瞬間。
色ごとに並べられたランナー、説明書、そして小さな袋に収められたシール。
ハルノは目を丸くして息を呑む。
「こんなに細かいんだ……」
「大丈夫!ほら、このニッパーでゲートを切っていけばいいんだよ」
ツバサが丁寧に説明する。
「ゲート?」と首を傾げると、リュウヤが手を伸ばし、笑いながら実演してみせた。
「こうやって、ランナーとパーツをつないでる細い部分を“パチン”って切るんだ。ほら、簡単だろ?」
パチン、と軽快な音。小さなパーツがリュウヤの掌に落ちる。
その瞬間、ハルノの表情に新しい感情が灯った。
「……できるかも」
彼女は両手でニッパーを握り、少し緊張しながらも丁寧にゲートへ刃を当てる。
パチン。
小さな音が響き、初めて自分の手で切り離したパーツを掌にのせた。
「すごい……本当に、私にもできた」
嬉しそうに微笑むハルノを見て、ツバサは思わず「よかったね」と口にし、リュウヤは親指を突き立ててにかっと笑った。
――時間が過ぎるのも忘れ、3人で机を囲んだ。
ツバサは「そこは角度を気をつけて」と優しく指示を出し、リュウヤは「力入りすぎだぞ、肩の力抜けって!」と元気よく声をかける。
何度も失敗し、パーツを逆にはめては笑い合い、その度に少しずつ形ができあがっていった。
やがて、最後のシールを貼り終えた時。
机の上に――初めて組み上げたガンプラ
【ナドレ】が立っていた。
「……できた」
ハルノは胸の前で両手を重ね、瞳を潤ませながら呟いた。
「おぉー!やったなハルノ!」
「初めてでここまで綺麗に仕上げるなんてすごいよ」
ツバサとリュウヤの言葉に、ハルノは照れくさそうに、けれど本当に嬉しそうに笑った。
「……うん」
自分が初めて作ったガンプラ
"それはとても綺麗だった"
放課後のショップに、3人だけの静かな達成感が広がっていた。