勝手な転校生
桜の花びらが落ちて、通学路は花びらでいっぱいになっていた。満開に咲いていた桜も残り少なくなっている。
家を出ようした時にタティーの姿がなかった。またカバンの中に潜り込んでいると思ってカバンを開けると入っていない。パパやママに聞いても分からないと答える。一人でに動く事が出来るから、どうせ帰ってくるでしょう......。そう思って私は学校に向かった。
学校に着くと、美澄ちゃんがポニーテールをなびかせながら私の所にやって来た。
「おはよう、明花。」
「おはよう、美澄ちゃん。」
「知ってる?今日は転校生が来るらしいよ?」
「転校生?」
入学して一週間も経っていないのに、転校生が来る事なんてあるんだ......転校生なんて今まで来た事ないから分からないけど。
「おはよう、刑異明花。」
日華ちゃんが私の事をフルネームで呼びながら、私の隣の席に座る。
「おはよう日華ちゃん。」
「日華も知ってる?今日は転校生が来る事を。」
「全然知らないわ。入学してから一週間もしないのに転校生なんてめずらしいわね。」
「いったいどんな人なんだろうね?」
私が思っている事と同じ事を言った。やっぱりめずらしいのかな?
チャイムが鳴って小熊先生が教室に入って、ホームルームが始まる。
「今日は転校生を紹介する。入れ!」
早速、転校生を紹介する事になった。本当に転校生が来るとは思わなかった。小熊先生の呼びかけで転校生が入ってくると、見覚えのある姿が目に入った。長身で髪が赤い女性だった。
「自己紹介を。」
「皆さん、初めまして。刑異タティーです。」
タティーだった......似てると思ったけど、まさか本当にタティーだとは思わなかった。ていうかどうやって転校生に?
「タティーはこのクラスの仲間の明花の親戚で、海外から来たらしい。みんな仲良くしてやってくれ。席は窓側の一番後ろの席が空いてるな。そこに座ってくれ。」
「分かりました。」
「それじゃあホームルームを始めるぞ!」
なんでタティーが学校に?しかも勝手に親戚の子にされてるし......。と私自身が疑問に思っていると、日華ちゃんが私に聞いてくる。
「明花、あなた親戚の子が転校してくる事知らなかったの?」
「えっ?あ、うん、どこに転校するとは聞いてなかったかなぁ......あはは。」
どうして、私がこんな言い訳しなかきゃなんだろう。私は全く知らないのに。
ホームルームが終わって、授業が始まるまでの空き時間。タティーの席の周りには、クラスの女子が何人も集まって、タティーに色々聞いている。
「タティーちゃん。海外ってどこにいたの?」
「イギリスです。」
「その赤い髪って染めてるの?」
「いいえ、地毛です」
タティーは女子達の質問に次々に答えて言った。私も地毛なら、赤い髪も許されるのかという疑問が頭に浮かびあがったりしたけど、それ以上に余計な事を言って、また私が色んな言い訳を考えなきゃいけないかと思うと胸がドキドキした。
授業が始まると、タティーはどの問題や質問にも完璧に答えていた。タブレットだから、調べて答えを出しているらしい。ズルい、ズルすぎる。そして、タティーは一気にクラスの注目の的になった。
昼休みの時間になって、私はタティーを連れて教室を出た。その時に女子たちの残念な顔が見えた。私は隣の空き教室に連れ出した。
「どうしましたか?明花様?」
「どうしましたか?はこっちの台詞だよ!何でタティーが学校に入ってくるの!」
「この方が明花様を見守りやすいと思って。カバンの中って窮屈なんですよね。」
「この先、ずっとカバンに入ってるつもりだったんだ......」
「はい、明花様の事を任されていますので。」
「......えっと、親戚はいいとして、なんで海外から来たって事にしたの?」
「赤い髪のなので、海外の方がいいかと判断したからです。」
「そう。それに中一でこんなに長身な人も日本人にはそういないと思うからね......」
「明花様」
「何?」
「女の子達が教室の外からこちらを覗いています。」
振り返ると、そこには眉間のしわを寄せたクラスの女子達が私の方を見ていた。とりあえず私はタティーを教室に戻らせる事にした。女子達があんな顔になる程にタティーはクラスの注目の的なった事をようやく実感した。
私がしばらくした後に教室に戻ると、美澄ちゃんが私の所にやってくる。
「明花、タティーちゃんってどこに住んでるの!」
「えっ?私の家だけど?」
「ホームステイって事ね。だったら危険だわ!」
「な、何が?」
「だって、甲平さんが取られちゃうかもしれないんだよ!どうにかしないと!」
「それは、心配する事ないと思うよ......」
そして、放課後になるとタティーが私の所にやってくる。何やら苦しそうな様子だ。
「ど、どうしたのタティー!?大丈夫!?」
「明花、様、充電が、無くなりそう、です」
あ、そういえば充電式だって事すっかり忘れてた。そりゃあ五、六時間もすれば充電無くなりそうになるよね。
私はタティーをタブレット姿に戻して、急いで帰って充電する事にした。そこまでして私のそばに居たいなんて......と、私は少し嬉しい気持ちになった。
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