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 タティーをカバンに入れたまま、初めての中学の授業が始まった。と言っても、最初はホームルームだけど。

 私の担任は小熊先生という男の先生だ。鋭い眼付きで、まるで何かを狙っているかのような眼。体つきもゴリラもような感じで、他の人たちにも、早速ゴリ男と呼ばれていた。熊なのかゴリラなのか。


「それでは出席を取る!上野!」


 そして声もデカい。見た目通りに体育会系の担任。正直苦手かもしれない。


 ホームルームが終わって、いよいよ本当に授業が始まった。最初は国語の授業。女性の担当教師が入ってきて、授業が始まった。

 始まってみると、小学校の時と授業の様子は変わらない。それに私は勉強は好きなんて事もないので、正直苦痛に感じた。難しくなるから余計に苦しくなっちゃうな〜。

 嫌々ながらもノートを取っていると、字を間違えたので消しゴムを使おうと筆箱を見ると、消しゴムが見当たらない。初日から忘れ物なんてついてないな〜。

 私の席の後ろにはロッカーがあって、なおかつ自分のロッカーがすぐそこだった私は、自分のカバンを開けて消しゴムを探したが、どこにも見当たらなかった。するとタティーが私に話掛けてくる。


「どうしたんですか?明花様?」


 その声は先生が話している中の教室に響き渡った。


「誰ですか?今の声は?」


 先生がみんなに話しかける。当然誰も答えない。私は気づかれないかと、背中が濡れる程に冷や汗が出た。


「気のせいかしら?あれ、刑異さんは何してるの?」


「あ、消しゴムが筆箱にないので、カバンの中を確認してます。」


「そう。では、授業を再開します」


 どうやらうやむやになったみたい。危なかった。


(タティー、今はこのぐらいの声で話してくれない?)


(この声量でいいですか?)


 タティーはすぐに私と同じ小声になった。ちゃんと対応出来るのすごい。


(それで、何かあったんですか?)


(いや、ちょっと消しゴムを忘れたみたいで......)


(なるほど、これは明花様の面倒を任されるわけです)


(きょ、今日は初めてで緊張したから、たまたまだよ!)


 と、こんな苦しい言い訳をしてると惨めな気分になってくる。


(では、私の画面を見て下さい。)


 タティーがそう言うので、タティーを持って、画面を見ると、内蔵されているアプリの中にAppearranceと表示された物があって、そのアプリをタップするようにタティー言われたので、タップをすると検索欄が表示される。

 その検索欄に今必要な物を入力するように言われ、私は「消しゴム」と入力して、検索欄の隣にある表示のボタンをタップすると消しゴムが表示された。

 画像はお店に売っている物と同じような普通の消しゴム、でもカバーには家の刑異のロゴが入っている。刑異という文字にスパナやレンチ等の工具で囲っているという、機械が関係していると分かるロゴマークだとパパは言っていた。

 その画像の下にはAppearranceのボタンが表示されてボタンをタップすると、目の前に消しゴムが現れました。私は思わず、わっ!と声を上げてしまいました。先生が心配して私に声を掛けて来たけど、何でもありませんと言って、その場は収まりました。私はその消しゴムを持って、ノートを取る事を再開した。


 その後も授業は続いたけど、どの授業も内容が難しくなっただけで、授業の様子は小学校の時と変わらなかった。それよりも急に出現した消しゴムが気になって仕方がなかった。

 全ての授業が終わって放課後になった。私は、人気のいない教室に入ってタティーに話しかける。


「た、タティー、さっきの消しゴムは何なの?」


「私の機能の一つです。必要な物を入力すると、目の前にその必要な物が出現するんです。」


「え、えぇ〜!?」


 そ、そんな機能もあったなんて......パパってば、すごい物作っちゃって......人型になる時点で十分なのに、服装も変えられて、必要な物出せるなんて、パパ頑張りすぎでしょ......



 私は下校して家に帰ると、家の前に張り紙が貼ってあった。そこには受付募集と書かれていた。私の家の修理の受付はママが担当している。

 私は家に入って、ママに張り紙の事を聞いてみた。


「ただいま〜。」


「おかえり。明花。どうだった?初めての中学校の授業は?」


「あんまり小学校の時と変わらなかった。それよりママ、家の前に貼ってある、受付募集の張り紙ってなに〜?」


「それなんだけど、お母さん。再来週からスーパーのパートをする事にしたの。」


「そうなの?」


「正直、これだけじゃ家系が厳しいかなって。それでパパがあの張り紙を貼ったのよ。」


「へぇ〜そうなんだ。」


 あんなにすごい機能を持っているタブレットが作れるんだったら、修理屋ももっとお客さんがいてもいいと思うんだけどなー。と思いながら、私は自分の部屋に戻った。

 私はタティーを充電した。タブレットなので充電式なのは当たり前だけど、お手製のアダプターなので、一般的なアダプターには対応していないので、外には持ち出さないようにする。


「これで学校へのルートやルーティンは把握出来ました。」


「把握?把握してどうするの?」


「それは......秘密です」


「ふぅん、秘密ね......」


 こんなすごい機能を持ったタブレットだったなんて、私のこれからの学校生活どうなるんだろう。

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