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タティー任せの体育祭 後編

 そして、とうとう最後の種目である学年対抗リレーの番が来た。しかしここでアクシデントが起こった。出場する走者の一人が怪我をしてしまったのだ。代わりに誰が出てもらうかをみんなで考えていると、タティーが言った。


「明花様に出てもらいたいです」


 タティーがそう言うと、クラスの中で圧倒的に点数を取っているタティーの初めての提案だからか、みんな従わざるを得ない雰囲気になっていた。返事はみんなぎこちなく、あきらかに嫌そうな顔しているのが私の目に映った。


「あの、タティー。なんかみんなは不満みたいだからその提案は無かった事に......」


「それは......残念です」


 タティーが落ち込んだ姿を初めて見たと思っていると、クラスのみんなが私を引っ張ってタティーの元から離れて、私に言い寄って来る。


「ちょっと刑異さん!何、タティーさんをガッカリさせてるのよ!」

「タティーちゃんが初めて意見してくれたんだぞ!それをお前は聞かないつもりか!」

「本当はあんたを代理にするのは乗り気じゃないけど、タティーさんの頑張りがあってここまで点数を取れたから提案を聞いてあげる事にしたの!あんたも少しはそれぐらい分かりなさいよ!」

「空気読め!」


 私にこれでもかと言うぐらい、クラスのみんなは本音を当ててきた。そして私は実質、強制的に代理走者になった。

 学年対抗リレーは男女で別れて、代表四人に分けてグラウンドを一周する。私は三番目を走者をする事になった。

 これで負けたら後がないから、というクラスのみんなから釘を刺されるような眼差しが私に向けられて、リレーが始まった。

 一番目、二番目の走者が白組を抜いてリードしていって良い流れになっていた。そして私の番になって全力を出して走ったが、途中で転んでしまい、白組に追い抜かれてしまった。


「せっかく勝ってたのに何やってんのよ!」

「負けたらどうすんだ!」

「やっぱりあんたなんかに任せなきゃ良かった!」

「早く立って走って、タティーちゃんにバトン渡せ!役立たず!」


 ここぞとばかりに不満の声を言ってくるクラスの人達に対して、私はキレて全速力でタティーの元に走った。その時の私は多分すごい顔をしていたと思う。

 タティーにバトンを渡すと、タティーも全力で走った。私の全力とは比べ物にならない、まるで自動車のような速さだった。あっという間に白組を抜いて、学年対抗リレーの一年女子の部は赤組が勝利した。


「勝ったー!やっぱりタティーさんはすごいわ!」

「タティーさんが掴み取った勝利よ!」

「タティーちゃんのおかげで勝ったんだから、明花はタティーちゃんに一生奴隷になるくらいの感謝をしろよ!」

「靴舐めろ!」


 なんかここまで過激な事を言われると、逆に笑いが出て来そうになる。実質、奴隷はタティーの方だし。私はタティーを奴隷とは思ってないけど!

 その後のリレーも赤組の勝利が多く、最終的に赤組が千四百点と白組が千百点で結果は赤組が優勝になった。

 点数をもっとも取ったタティーはクラスどころか上級生にも感謝されていた。特に三年生からは勝たせてくれてありがとうと泣きながら感謝されていた。

 閉会式が終わって、私はパパ達の所に向かった。


「明花、最後のリレー頑張ったな」

「転んじゃったけど、全力を尽くしたわね」

「明花ちゃん、お疲れ様でした!タティーちゃんの活躍が目立ってだけど、明花ちゃんも頑張ったね!」

「……ありがとう」


 同級生には散々だったけど、パパ達に褒められた私は思わず涙がこぼれてしまった。私はまだ仕事があるのでパパ達には先に帰ってもらった。

 そして学級委員の仕事として用具を後片付けをする事になった。私達は色々な小道具を体育倉庫に片付けていた。


「今日は本当に凄かったわ、タティーさん!実質あなた一人で掴んだ勝利と言っても過言ではないわ!」


 脇田さんが片付けをしながらタティーの事を讃えていた。


「ありがとうございます」


「一人で掴んだと言うのは無いと思うけどな......」


「そう言う刑異さんは足を引っ張ってばっかりだったわね!リレーでも負けそうになるし、あなたはタティーさんの隣にいるのは相応しく無いわ!タティーさんには近づかないで!」


「いくらタティーを尊敬してるからって、それは言い過ぎじゃない?」


「だ、だって.......あなたにばかりタティーさんが構うから......」


 脇田さんはそう言いながら、後ろに下がると体育倉庫の棚にぶつかり上にあった小さいダンベルが脇田さんの頭上に落ちていく。危ない!と私が言うとタティーがギリギリの所でキャッチして一大事を防いだ。

 脇田さんはあまりの恐怖に腰が抜けてしまってへたり込んでしまった。そこにタティーが手を差し伸べた。


「大丈夫ですか?」


「はい、ありがとうございます......タティー様//」


 脇田さんは顔赤らめながら言った。どうやらタティーは脇田さんの心を射止めてしまったようだ。

 こんな感じでタティーに夢中になってしまう人が出来て体育祭は終わった。

 翌日、小熊先生が大量の五百円玉の事をクラスのみんなに聞いていたが、私は知らないフリをした。

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