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タティー任せの体育祭 中編

 午前の部を終えて昼休憩の時間になった。生徒はみんな教室でご飯を食べたりするのが普通だけど、私と日華ちゃんは人気のいない三階の空き教室で弁当を食べる事にした。何故その場所で食べるのかと言うと......


「何、その独特のアダプターの形をしたケーブルは?」


「あぁ、これ?タティーの充電ケーブルだよ。午前中はタティー、競技に出突っ張りだったじゃない?それに運動会も長いから絶対充電足りなくなるからと思ったから持って来たんだ。」


「へぇ〜、それで内緒で充電しようとするなんて悪い事するのね、あなたも。」


「だって今、赤組が六百点で白組が二百点だよ?この点数差もタティーの活躍のおかげなんだから少しぐらい充電させてもらっても、文句ないと思うんだけどな〜」


「まぁ、確かにそうかもしれないわね。それにしてもタティーさんの姿が見えないとなるとクラスが騒ぐかと思ったけど、そうでもないわね」


「ほら、前に私がクラスのみんなに言い寄られた時にタティーが守ってくれたじゃない?あれのおかげでみんなタティーには節度を持つようになったから、あんまり執拗には近づかなくなったんだよね」


「そういえば最近タティーさんの周りに人が集まる事は無くなったわね。逆に美澄には人が集まってる気がするけど」


「まぁ、それでも私はタティーと親しくて羨ましいからか、きつい事を言われる事はあるけど......」


 日華ちゃんはその言葉を聞いて心配していたけど、私は大丈夫だと答えた。だからと言って平気と言う事では無い。けど、それだけタティーがみんなから尊敬をされていると言う事なのだろう。

 昼休憩が終わって、午後の部が始まる。タティーは午後の部では最後の種目である学年対抗リレーだけ出る事になっている。午後はタティーが出ていない為か、赤組は負け続ける事が多かった。

 借り物競走に脇田さんが出場していて、仕掛けをあっという間にクリアして、お題が書かれた紙を取って見ている。すると脇田さんは辺りを見渡し始め、やがて私の方に向かって来た。


「刑異さん!タティーさん知らない?」


「タ、タティーならえっと、保健室で休んでるけど」


「えー!?連れて来る事って出来ない?」


「いや、寝てるから難しいかな......何が書かれてたの?」


「尊敬する人よ。どうしよう、他にこの場に尊敬する人なんていないし......」


(いないんだ......)


「じゃあ刑異さんでいいから来て。全然尊敬なんてしてないけど!」


「その一言、言う必要あった?」


 私は脇田さんに連れられて一緒にゴールした。少し気を取られてしまって二着になってしまったけど。タティーさんがいたら一着だった、と脇田さんは不満気に言っていた。


「「いざ掴め!棒倒しー!」」


「男子種目!棒倒し!レディー!ゴー!」


 タイヤ取りの時のように何故か気合いが入った応援と放送席の掛け声と共に棒倒しが始まった。

 私はトイレに行く振りをして校舎の中に入り、タティーを連れ戻そうと三階の空き教室に向かった。充電した時と一緒に位置だったので誰にも気づかれなかったと思い、一安心していた所に人気のいない静かな空間に声が響き渡る。


「おい!そこに誰かいるのか!」


 その声は小熊先生だった。どうやら足音が響いて聞かれちゃったみたい。どうしようかと焦った私はタブレット姿のタティーを操作した。そして、私は気を引かせようと思って、五百円玉を機能で出現させて小熊先生の元に転がした。


「何でこんな所に五百円が?」


 私は五百円を大量に出現させて、次々と先生の元に転がす。


「うぉ!何でこんなにいっぱい!?か、階段に落ちてしまう!拾わなければ!」


 すっかり五百円に夢中に小熊先生。その隙に私はその場から離れて、充電していた事を気づかれずに済んだのだった。

 その後も競技は進んでいって、点数はどっちも千点と同点になっていた。

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