忘却出来ぬ故の脱獄 前編
学校に入学してしばらくするとタティーは忙しくなっていた。クラスの噂話を小耳を挟んで聞いたけど、タティーはクラスどころか学年の中で見ても飛び抜けて優秀らしい。だからか雑用を任せられることが多い。もちろん私も手伝える時は手伝っている。
あまりにも優秀だからクラスの女子の学級委員を交代させる話が出た。交代させるなんて聞いたことがない。
女子学級委員がタティーにその話をしたけど、私も一緒にその話を聞いていたので私から断った。学級委員なんてなってしまったら、仕事がさらに増えて充電の消費がさらに減るし、その学級委員は声が震えているようにも見えた。本当は交代なんてしたくないんだろう。せっかくなったんだから最後までやりたいよね。断った時は、その学級委員から笑みが溢れていたんだから。
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それは置いていて、そろそろ体育祭の時期になってきた。中学校の体育祭は春の時期にやるらしい。タティーは学級委員には選ばれなかったけど、体育祭の実行委員に選ばれてしまった。私も立候補して実行委員になった。まぁ、運動会なんてすぐだろうから、大丈夫......だと思う。
しかし仕事は多かった。応援歌とその踊りと振り付けの考案、その応援歌を生徒に指導する事。もちろん各競技の道具の運搬や片付け、そして放課後のミーティング。私は実行委員の仕事がこれが初めてだったので、短期間なら大丈夫だと思っていたけど、その考えは甘かったみたい。タティーは流石に放課後のミーティングまでに出席する充電が残っていなかったので、先に帰った体にして私が内容を聞いて後で伝える事にしていた。タティーはよく仕事をしているからか先に帰っても何も文句を言われないので、みんながタティーに信頼していると思うと、私もちょっと嬉しくなって来る。
そして、体育祭がもう数日となったある日、その日は昼休みの時間も体育祭の練習があり、応援歌や競技の練習もあった。
「おらー!一年共!声出せー!」
「もっと頑張れや!気合い入れろー!」
「一位にならなかったら殺すぞ!」
「棒は奪う時は死ぬ気で奪えー!」
「そんなんじゃ駄目だ!もっとタイヤを取れるようにしろー!」
本番が迫っているからか、みんな言葉遣いが荒れてしまっている。中には生徒の頭を叩く応援団が男女問わずいる。私はこうゆう学校の行事にはそんなに真剣にはなれないかな〜。あんな感じにはなりたくないし。でも私もクラスだと扱いはこんな感じな気がするかも......
こんな感じで体育祭の練習は終わって練習の片付けもあって大変だったんだけど、その日は六限目に体育の授業もあった。内容は体育祭の事もあってグラウンドでリレーやハードル走の練習だったのだけど、問題はその後の後片付けもタティーがやる事になったからだ。小熊先生もタティーは頑張ってるんだから、片付けなんか任せないでほしいな......。
「アタシも手伝うわよ。」
日華ちゃんが片付けを手伝うと言ってくれた。
「ありがとう、日華ちゃん。」
「タティーさんがあれだけ頑張ってるのに、あのゴリ男め!」
「まぁまぁ、知らないんだからしょうがないよ。」
片付けを始めた私たちだったけど、バトンはともかくハードルを片付けるには時間がかかってしまう。するとタティーは機能を使って台車を出現させた。
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