受付役の初勤務
歩美さんの初めての仕事で午後になった。やはりお客さんは一人も来ないでいた。
「本当に誰も来ないんだね……」
「そうですね……私も学校であんまり家の客の事知らなかったけど、こんなに来ないとは思わなかったです」
パパからは昔、おじいちゃんが居た時は結構お客さんが来てたみたいだけど、今は一日に二人来れば多いと感じるぐらいに少なくなってしまった。
「ちょっと待ってて下さい」
私は歩美さんにタティーを紹介する事にした。これから、ちょうど今は誰も来てないし、これから働いてもらうからにはパパのすごさを知って貰わないと!
私はタティーを最初はタブレット状態で歩美さんに紹介した。
「歩美さん、これ見て下さい!」
「これは、タブレット?」
「実はこのタブレット、パパが作ったんです!」
「へぇ、所長って修理だけじゃなくて発明も出来るんですね。」
「実はパパは発明家でもあったんです。しかもこのタブレットは普通の物とは違うんです!」
そして私はタティーを人の姿に変えた。それを見た歩美さんは驚いていた。
「初めまして、タティーです」
「す、すごい!人間になった!しかもかなりの美人さん!それに服がピチピチ!」
「初めまして、明花様の面倒を見てるタティーです。」
「そういう事は言わなくていいから」
「へぇ、明花ちゃんのお世話係なんだね」
「両親もタティーも過保護なんですよね。タティーなんか私の通っている学校に入って来たんですよ。しかも私と同じクラスに」
「学校に通ってるんだ!しかも明花ちゃんと同じ学年なんだ〜。こんなに綺麗な外人さんみたいな人がいたら、みんな釘付けなんだろうね」
「おかげで私はタティーのお荷物みたいになってて......」
「そ、そうなんだね......」
タティーの事を紹介していると、店に人が入って来た。四十代のおじさんだ。歩美さんが対応する。
「いらっしゃいませ」
「修理を頼んだトースターを取りに来たんだけど」
「少々お待ちください」
歩美さんが修理品を取りにパパの所に行った。するとおじさんが私に話を掛けたきた。
「もしかして、君が刑異明花ちゃんかい?」
「えっ?そうですけど?」
「初めまして、賀藤日華の父です」
そのお客さんは日華ちゃんのパパだった。髭が生えていてダンディーな感じで、家のパパとは違うタイプの男の人だ。
「日華が家の修理屋が潰れたのは刑異さんのせいだと君に言っているみたいだね、申し訳ない。」
日華パパは私に深々とお辞儀をした。
「実際は私が刑異さんに修理を頼んだら、見事な腕だから店を畳んだだけなんだ。」
「じゃあ間違ってないじゃないですか。家のパパのせいじゃないですか。」
「今は工場従業員だが、でも、私はこれで良かったと思っている。」
「そ、そうなんですか」
「もし、また日華が君に変な事を言っても気にしないでくれ。」
「お待たせしました。こちらが修理品になります。」
歩美さんが戻って来て、修理品を日華パパに渡した。
「これからも日華と仲良くしてくれ、ではこれで失礼するよ。」
「は、はい......」
「ありがとうございました」
日華パパは家から出て行った。
「今の人、明花ちゃんの知り合い?」
「うん、友達のパパだった」
「そうだったんだ」
すると、再び家に人が入ってきた。その人は身につけている物が全て黒だった。
「いらっしゃいませ」
「おい、金を出せ!」
正体は強盗だった。強盗は銃を私達に向けて、私達は気づいたら両手を上げていた。歩美さんは銃を向けられて涙目になっていた。
「あ、あの〜間違ってないですか?ここはコンビニとかじゃないですよ?修理屋ですよ?ここにそんなにお金ないですよ?」
「あぁ!?ちょうど目ぇ付けたから、入っただけだ!さっさと有り金全部出しな!」
そんな理由で選ぶのもどうかと思う。私はこの事態をどうしようかと思った時、タティーの姿が見えない事に気づいた。そう思っているとタティーは強盗の右側に回っており、強盗から銃を取り上げていた。
「な、なんだこの女!」
タティーはその銃を真っ二つにへし折った。
「明花様を困らせる人は許しません」
「じゅ、銃が、くそ!変な店を選んじまったぜ!」
強盗は逃げるように店から出て行った。歩美さんは腰が抜けて座り込んでしまった。
「だ、大丈夫ですか!歩美さん!」
「だ、大丈夫。それにしてもすごいねタティーちゃん。」
「まさかタティーがあんなに力が強いとは思わなかったよ。」
「力は強い方です」
時間は過ぎていき、午後の六時になる。家は六時までが営業時間なので歩美さんの仕事はここまでになる。
「最初から災難でしたね」
「そうだったけど、でも何とかなったじゃない」
「タティーのおかげですけどね」
「ううん、明花ちゃんも私の事を励ましてくれたじゃない。」
「いや、あれは」
「嬉しかったよ。今度、お礼させてね。それじゃあお疲れ様!」
歩美さんは家に帰っていった。初仕事で色々あったけど、あの人にはここでは辛い気持ちにさせないように私も出来るだけ歩美さんの支えになっていくつもりだ。
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