やっと見つけた受付役
学校から帰ってくるとパパに呼び出された。パパに呼び出されて研究室に入ると、修理途中や修理前の家電やおもちゃが部屋の隅に置かれている。これじゃあ修理部屋だ。そこに白衣姿のパパと部屋の椅子にスーツ姿の女の人が座っていた。
「明花、おかえり。」
「ただいま、パパ。」
「紹介しよう、明日から働く事になった坂本歩美さんだ。」
「坂本です。明日からよろしくお願いします。」
もうすぐママがパートで働き始める二週間になる直前でようやく受付役をする人が見つかったらしい。坂本さんとは、その日は挨拶だけして別れた。
「良かったね、受付する人がギリギリ見つかって。」
「いや〜どうなるかと思ったけど、何とかなったな!」
「そういえば、タティーが学校に入学して来たんだけど、パパがそうさせたの?」
「いや、パパは何も知れないが......?」
「じゃあ勝手に入学して来たんだ......」
「でも、これで学校でも明花の面倒を見れるな!」
(過保護だな〜。タティーもパパも)
「そのタティーはどうした?」
「充電中だよ。五、六時間したら無くなりそうになるから、下校したら充電器に直行だよ。」
それに後から知ったけど、服装を変える変装の機能。基本のあのピッチピチのボディースーツ以外は機能を使用している事になっている。それと授業の時にも計算機の機能やブラウザの機能、その他諸々使っている。このおかげで充電の消費が早いらしい。だからと言ってボディースーツの格好で学校には絶対に連れて行きたくない。
それを聞いたパパは、お金の余裕が出来たら充電の消費が少なくなるようにアップデートすると私に言った。それはいったい、いつの話になるんだろう。
翌日ー
学校が休みの私は朝の八事半頃に廊下を歩いているとどうやら家の裏口のドアの開く音と共におはようございますという声が聞こえた。
坂本さんが来たのだろう。私は私服に着替えて一階の玄関に行くと、坂本さんは何か見たことないエプロンを付けて、家の玄関にある受付のカウンターの席に座っていた。私は坂本さんに挨拶をした。
「おはようございます。坂本さん。」
「あっ、おはようございます!明花さん!」
坂本さんは私に激しくお辞儀をしていた。
「あの、私にそんなにかしこまらなくていいですよ?もっと気軽な感じでいいですから。」
「そ、そう?」
「はい。とりあえず敬語とさん付けはしなくていいです」
「う、うん。じゃあ気軽に接するね。明花ちゃん。」
「そのエプロン何ですか?」
「所長から渡されました。」
「パパったら、いつの間にエプロンなんか自作してたんだ。」
私は今日は特に予定もなかったので、結構横に広いカウンターの席に私は椅子を持って坂本さんの横に座った。
「ど、どうしたの?明花ちゃん?何で私の隣に?」
「いえ、特にやる事もないので、坂本さんの隣にいようかと思いまして。」
「えっ、でもお客様が来たら」
「そんなに人なんか来ないですよ」
そう言って一時間ぐらい待ったけど、本当に誰も来ない。自分で言っておいて何だけど、本当に来ないと悲しくなってくる。
「本当に誰も来ないね......」
「い、いや、これはきっとまだ午前だから来ないだけですよ。多分。」
「それって関係あるのかな?」
「き、きっとそうですよ」
「ふふ、じゃあそういう事にしようかな」
それから私は坂本さんに色々と質問した。坂本さんは二十歳の時に地元で食品工場で働いていたけど、その工場は機械の故障が多くて残業が続いていたらしい。それでも坂本さんは四年は働いたけど、流石に限界を感じてしまって工場を辞めた。そして、地元を飛び出して湯蓮町にやって来てここで働く事になった。
「でも、それならもっと早く辞めれば良かったんじゃ......」
「だって、私、就活ですごい落ち続けて......それでようやく入る事が出来た会社だから......辞めたら、もう就職出来ないかと思っちゃって......」
坂本さんは話している途中に顔を俯けて、啜り泣きをしていた。それぐらい大変だったのかな......
俯けになっている坂本さんの頭を、私は優しく撫でてしまった。つい撫でたくなってしまった。坂本さんも驚いてしまっている。撫でながら私は言った。
「あの、ここでは坂本さんを辛い気持ちにはさせない......と思います。こんな事話すのは、やっぱり辛いですよね......でも話してくれて嬉しかったです。だから、元気出して下さい」
坂本さんは私の事を抱きしめて泣いた。何分くらい抱きしめられたのかは分からないけど、しばらくして落ち着いたのか解放して、坂本さんは言った。
「ありがとう、明花ちゃん。ごめんね。大人なのに、中学生のあなたの目の前で泣いちゃって、しかも勤務中なのに......」
「まぁ、それでもお客さんは来てませんけどね......」
「私、頼りになるか分からないけど、この仕事頑張るね!」
「そうですか。元気が出て良かったです。これからよろしくお願いします。坂本......いや、歩美さん」
「......!はい!」
こうして、私に慰められた歩美さんは初仕事の午後を迎えた。
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