「勇者様についてまわる金魚の糞が!」と言われましても
この作品はなろうラジオ大賞参加作品です!
金魚の糞。
それは本体である金魚に暫くくっついて回るもので、ただの糞なので汚くて不必要なもの。なので、
「勇者様についてまわる金魚の糞が!」
これは悪口。
吐き捨てられた俺はぶん殴られて吹っ飛ぶ。
「痛……」
「リリ様のご機嫌取りしか出来ない雑魚がよお!」
リリに惚れているB級冒険者ザクスが自慢の金髪を掻き上げながら不快そうに叫ぶ。
だが、否定できない。
俺は戦闘力が皆無。勇者であるリリの荷物持ちしか出来ないし、ザクスの一撃でボロボロになる雑魚だから。
「ったく、フォン、てめえはリリ様の幼馴染ってだけだろうが!」
これもその通り。
俺、フォンはリリと才能も生まれた家のランクも違う。
ただ、幼馴染だっただけだ。
荷運びの家に生まれ顔も普通でボサボサ濃茶髪の男と、道場を営む家で大切に育てられ顔立ちは整い艶やかな赤髪の美少女が並んでも違和感しかない。
「いいか! お前とリリ様は釣り合わない。とっとと荷物を纏めて、大人しく田舎の村に帰れ!」
そう言い残してザクスは取り巻きと一緒に去っていく。
俺は……とっとと荷物を纏めて田舎に帰ることにした。
荷運びの家に生まれ、リリと一緒でも荷運びだったので荷物を纏め運ぶ技術だけは誰にも負けない。
真夜中、俺は村へと帰る為に宿屋を抜け出す。
村へと向かう足取りは重い。
足取りというか、重い。
正直に言おう。荷物が重い。
背負っているものが、重い。
「ねえ、フォン、どこへ行くの?」
荷物が喋った。彼女とのコンビのお荷物は俺なんだけど、今、俺の荷物となっているはずのリュックの中に美少女。
リリだ。
なんとなくそんな気はしていたけど、気付かないふりしてた。
気のせいだと思い込みたかった。
「ねえ? フォン?」
「いいいや、そそその、ほほほら、金魚の糞みたいについて回るなって言われてさ」
「フォンは糞なんかじゃないよ」
後ろから俺を抱きしめるリリ。
艶やかな赤髪からいい匂いがするし、柔らかいものが押し付けられているが、そんな事はどうでもいい。
「……大丈夫だよ。ザクスはもう金魚の餌」
何があったかは聞かない。ていうか、聞けない。
リリの手がちょっと赤い気がするし、鉄の匂いがする。
足が震えている。
なんなら、ちょっとフン出ちゃったかもしれない。
「フォン、ずっとずーっと一緒だよ……ねえ?」
俺は糞だ。
傍から見れば美しき真っ赤な金魚について回る糞。
だけど、違うんだ。
離してくれないんだ。
金魚の糞に何故かついてまわる勇者様が!
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