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「うる薔薇」ことロングセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐ」シリーズ。


出版不況と言われる中、異例の大ヒットとなりコミカライズからアニメ化、そして舞台化までされていた。

シリーズは全5幕あり、薔薇の王国と謳われる聖セプタード王国の物語だ。


第1幕「朱金の薔薇」は、王都の下町に暮らす平民の少女エマが、亡き父の知り合いだと言うコトレー男爵に引き取られるところから始まる。


純粋で優しい心と持ち前のひたむきさで数々の困難を乗り越え、王太子殿下と運命的に出会って愛し合うようになり、最後には王太子妃となるサクセスストーリー…。


ところがこれは決して「ふたりは身分差を乗り越え、いつまでも幸せに暮らしましたとさ」で終わるようなロマンチックな物語ではない。


実はエマが「運命」だと信じていた王太子殿下との出会いは、コトレー男爵に仕組まれたものだったのだ…。


自分の父が腐敗の進む現王権の打倒を目指し、革命に身を投じようとしていた事、そしてその計画が露見し処刑されていた事を知り衝撃を受けるエマ。


心から愛してしまった王太子殿下との未来を夢見る自分と、亡き父が夢見た理想の社会を作る革命思想に共鳴をしてしまう自分。


そんな「愛か革命か」の究極の選択に思い悩むエマに立ちはだかるのが、公爵令嬢エリザベス・グリサリオだ。


「そう、このわたくしなのよね…」


王太子殿下の婚約者でもある「わたくし」エリザベスは、殿下に近づくエマを警戒し調べていくうちに、エマの周囲に不穏な動きがある事に気付く。


「そして、すべてが明らかになれば王太子殿下の愛を失い、しかも革命を志す仲間達は処刑されてしまうと思い詰めたエマに冤罪をかけられ、エマの話を鵜呑みにした王太子殿下に断罪されたわたくしは王家から毒杯を賜ることに…」


フツフツと体の奥底から怒りが湧いてくる。

あんなに好きでハマっていた「うる薔薇」だけど、立場が変われば考えも変わるというのは本当にその通りだと思う。


「…一体ヒロインの何に共感していたのか、今は全く理解できないわ。そもそも自分とそのお仲間の保身の為に、わたくしに冤罪をかけて死に追いやる様な女のどこに純粋で優しい心があるというのよ!!」


ヒロインであるエマを応援して、素性が明らかになったらどうしよう!とハラハラしたり、愛する殿下に全てを打ち明けようよエマ!などと親身になっていた前世の「私」を扇子で百万回張り倒したい気持ちになる。


「前世の言葉を借りれば、知らずにハニトラ要員にされていた女に、無能な王族がまんまと引っ掛かったというだけのお話じゃないの。わたくし巻き込まれて踏み台にされるなんてご免だわ」


ヒロインのエマが王太子殿下と出会うのは、16歳になり王立魔法学院に入学する直前だ。


王都で初春に行われる建国祭で、お忍びでやってきた殿下とエマが出会う事になる。


わたくしが殿下と婚約を結ぶのは建国祭の少し前だから、まだ対策を練るのに充分間に合うだろう。


ハマって読み込みすぎて、内容を全部セリフまで覚えている事に関しては、前世の「私」を褒めてあげてもいいかもしれない。


革命の陰謀をどうするのかとか、考える事は沢山あるけれど、まずは…。


「わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ!」


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