表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/34

22.


「でもエリーが本当に無事で良かった。残党の隠れ家らしきパン屋の前に、君がオリバーと現れた時は、目を疑ったよ」


「勝手な真似をして、申し訳ありませんでした」


お兄様に頭を下げたあと、オリバー様に向き直った。


「オリバー様も巻き込んでしまって、申し訳…」


「うーん、そう言うのは止めてね。巻き込まれたなんて思っていないし。僕こそ一緒にいたのに、怖い目に遭わせてしまったと反省してるよ」


「その通りだな、連れ出したお前がすべて悪い」


「ジョージに言われたくはないな、網を張ってる君に気が付いたから、協力したんだ。本来ならあんな三人組すぐ倒していた!」


目の前のお二人は、優雅に紅茶を飲みながら罵倒し合っている…。


(扉の側に待機している侍女達に、会話の内容は聞こえないだろうから麗しい「月明かりの君」と「宵闇の君」が語らっている様にしか見えないでしょうね…。うん、話題を変えよう……)


「あの、それで革命組織の残党ですが、先程のお話では背後に隣国の諜報部が関わっていたらしいとか」


「ああ、陛下が事態を重く見てね。いま背後を洗わせているよ」


「それで、パン屋の赤髪の少女は?」


「なんでもあのエマとかいう娘は、王子様に会わせろ、早く王子様に会いたくて男爵に近づいたのに!!あたしはヒロインなんだ!と喚いているらしく、取調官が頭を抱えていたよ」


「ヒロイン!?」


「なんだそれは、頭のおかしい娘だったのか。殿下も変な執心をされご苦労な事だ」


オリバー様がいらっしゃるので、お兄様と物語の齟齬について話せないのをもどかしく感じる。


(でも、エマも転生者らしいわね?……おかしいと思ったのよ。わたくしまだ物語の改変なんて、ほとんどしていなかったし!)


心の中で前世の「私」が泣きながら「悠久の麗しき薔薇に捧ぐ」の作者様に「良かったよー!自分のせいじゃなかったんですー!!」と弁明している。


もちろん公爵令嬢として、顔には出さない。

わたくしは、一息つくために紅茶で口を潤した。


ふと視線を感じて目を合わせると、


「でも雨降って地固まるだね。エリーには怖い思いをさせてしまったけど、でも親しくなれたしね?」


「そ、それは…。そうかもしれませんわ……?」


オリバー様がその宵闇色の艷やかな髪をかき上げ、すっかり見慣れてしまった青く美しい瞳で見つめてくると、何度も抱きしめられた事を思い出して頬が熱を持ってしまった。


「エリー、騙されてはだめだよ。それは吊り橋効果と言って、危険を前に心臓が激しく動くと、目の前の人物に恋したと錯覚してしまう現象なんだからね」


「ジョージ、未来の夫婦のお邪魔虫をするな…」


「そんな未来など、まだ許していない!」


「お、お兄様もオリバー様もお止めになって」


(これはアレなのかしら、前世で言うところのケンカップル?)


また二人の言い争いになる気配にうんざりしていると、お兄様が爆弾を落とした。


「大体、ヒロインとか言う赤毛の娘が捕まって、物語の前提が無くなったんだ。エリーが望めば殿下との再婚約も…」


「えっ?お兄様?」


予想もしなかった言葉に目を瞬いた。


「殿下からも、どうしても一度エリーと直接話がしたいと、再三申し出が…」


「何だって!バカを言うな!あのクソガキッ」


「僕としては、妹の相手は誰であれ不本意なんだ。学院の卒業後は王宮に出仕する以上、エリーが王宮にいれば每日顔を見れる。その方がいいに決まっているだろう!」


「お前ってやつは!少しは長年の友情に報いろ!そもそも物語とは何の話だ!!」


「お、お兄様、そのお話はちょっ…」


お兄様の不用意な発言に、慌てて話を止めようとするが、左隣からものすごい圧を感じて口を閉じた。


「もしかして、僕に隠し事なのかな?

詳しく聞かせてくれるよね。……エリザベス嬢?」


オリバー様がテーブルの鈴を鳴らしながら、ひたりとわたくしの瞳を見据え本名で呼ぶ。


「今日の愛する未来の妻とのお茶会は、長くなりそうだからね。紅茶を淹れ直して貰おう」


(ひぃぃぃぃ!これお兄様の時とまったく同じパターン!?

わたくし、もう嫌ぁぁぁ!!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い [気になる点] 女性の登場人物、頭が悪い子ばかりなのが [一言] 常々思っていたのだが、惚れた弱みで圧倒的に強い立場のはずの主人公がなぜ下手にでるのだろうか? その気になればどん…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ