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催眠 ~SAIMIN~

★★前回までの裏筋あらすじ


 与太者から何とか逃げおおせることに成功した松野は玉袋ペチペチ走り(十傑集走りリスペクト)を披露しながら温泉街を走り抜けてゆくのであった。


 松野は背後を振り返り、己の揺れるイチモツを追手に向かって見せつけた。伸び切ってしまった袋はメトロノームの如く揺れている。


「ハハハ。とうとう観念したか。松野」


 松野を追っていた与太者の正体は6人組男性偶像集団アイドルグルーブ美的公団『マッシブ・アクティブ・センシティブ』であり、息を切らしながら松野を挑発してくる目の前の人物は『マッシブ・アクティブ・センシティブ』で打楽器ドラムを担当している松田という名の漢であった。


「ハハハ。よく私の速度スピードについて来れたな。貴殿のあっぱれ見事な益荒男ぶりに敬意を表させて頂き申し候」


 松野は高らかに笑いながら、己の玉を可愛らしくアメリカンクラッカーのようにふりふりと揺らしてみせる。


(何故だ、何故これほどまでにヤツの玉が気になるのだ。どうしちまったんだ俺は!)


 松田の視線は先ほどからずっと松野の玉に釘付けになっていた。しかしこれこそが松野の編み出した淫奔の卑術であり、そのことに未だ松田は気づいていなかった。


 ーー卑術『玉揺らし』


 魏志倭人伝の記述によると名前すら明らかになっていない正体不明の卑弥呼の実弟は決して人前に姿を現さない卑弥呼の代わりに政治の実務を担当していたと考えられている。九州を拠点に築かれた盤石な邪馬台国の支配体制は卑術『玉揺らし』によるものであると著名な歴史学者、吉村宅治は主張する。


 揺れる玉を5秒間凝視してしまった者を催眠状態に陥らせる恐るべき術。その効力は絶大。松田の目はたちまち胡乱な目つきに変わり、彼は催眠状態に陥っていくのだ。


「ハハハ。貴様こそ、まさにサムライ、無頼ブライ、サムライミ。無意味ムイミな抵抗はしないその潔さに敬意を表し楽に死なせてしんぜう」


「ハハハ。果たしてそう上手くゆくかな?」


「ハハハ。いつまで余裕な顔を保っていられるか、これは見物だな」


「ハハハ。見物料は高くつくぞ」


「ハハハ。手持ちが少ないのでお手柔らかにな」


「ハハハ。真剣勝負に手心など笑止千万ッ!!!!!はよう刀を抜けぇぇぇ!!!」


 松野が叫ぶ。マッシブ・アクティブ・センシティブ』で打楽器ドラムを担当している松田は松野の怒声に急かされるように脇に差していた小刀に手をやった。しかし身体が松野に攻撃を加えることを拒んでいるかのごとく、小刀を抜くことができない。


「どうした。臆したか」


「いや……。武器を持たぬ者を切り捨てることに少々、抵抗を覚えてしまってな」


 松田は額に脂汗をかきながら苦し紛れの言い訳を口にした。


「そうか……共に品の良い『松』の字を冠する者同士。ここいらで手打ちとするのはどうだろう」


 松野は内心焦っていた。さきほどまで熱を放出しようと伸びきっていた玉袋は外の外気に晒されたことにより縮こまりかけている。催眠効果が切れるまでに何とか言質を取り今後、優位に立ち回りたいという魂胆が松野にはあった。水面下で繰り広げられる高度な心理戦に松野の心臓の鼓動が早まる。


「そうだな……今日はここまでにしておこう」


 松田はくるりと踵を返す、来た道を歩き始める。


「他人様に背と尻を向けるとは!!許せん。この無礼者めが!!」


 松野は懐から硫黄泉に3日3晩沈めておいた硫黄独特の腐乱臭のする手裏剣を松田の後頭部めがけて投擲した。手裏剣の刃が頭部の肉を切り刻み、引き裂いていく。河童の皿のごとく輪切りにされた頭頂部の肉片は手裏剣の回転によって周囲に巻き散らされ、石畳の細道を赤く染め上げた。


「死んだか。硫化水素中毒で……」


 松野は文中の語や文節を通常の順序とは逆にする表現法の1つ『倒置法』を駆使しながら身に纏っていた衣服を剥ぎ取り、手早く着替えるのだった。

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