#8 それぞれの戦い
モヒカンブラザーズを倒した毒姫とピィちゃんは他の敵を警戒しつつ、今のうちにリングを回収したり、飛行能力の回復を行っていた。
生物翼の毒姫は一定時間飛ばずに羽を休めることで【スタミナ】を回復することができる。
また、少量しか回復できないが、緊急でスタミナを回復したい場合にはアイテムの【エナジードリンク】を使用したりする。
そして機械翼のピィちゃんはマップ内にいくつか存在する【バッテリー回復エリア】に入ることで、飛行能力を回復することができる。
こちらも少量しか回復できないが、緊急用に【携帯バッテリー】というアイテムが存在する。
「そろそろさっきのモヒカン共がリスポーンした頃ですね。また向かって来るかもです」
「そうね。今度は待ち伏せしてサクッとやっちゃおうかしら」
このゲームは分かりやすいリスキル等はできないようになっている。
しかしそれでも、こうした待ち伏せ作戦はかなり有効である。
復活した敵が通るルートを予測して、あらかじめ物陰に隠れて潜伏しておく。
モヒカンブラザーズのような感情が表に出やすいプレイヤーは、特に行動が読みやすいので、待ち伏せからの奇襲は刺さりやすい。
何度も通じる作戦ではないが、おそらく初めの一回は成功するだろうと、毒姫とピィちゃんは考えたのであった。
………
……
…
前線の二人が戦っている間、俺は他の敵が姿を現さないか警戒をしていた。
どうやら、モヒカン兄弟の他の仲間は戦いに加勢する様子は無さそうなので、おそらく別行動をしていると思われる。
「ジェットマン――そっちの様子はどう?」
「ああ、順調にリングを集めているよ! 今のところまだ敵の姿は見えてはいないかな」
プレイヤーネーム【ジェットマン】
種族:ギア
翼:機械翼
所持リング枚数:25枚
俺はプレイヤー情報からジェットマンの様子を確認する――
さすが機動力に自信があるジェットマンだ。
リングを集めるのが早い。
「ジェットマン、一旦俺と合流しよう。こっちのリングの集め具合を見て、もしかしたら敵が狙って来るかもしれない」
「了解、カケル君! すぐそちらに向かうよ!」
俺の方もジェットマンと早く合流できるように移動を開始する。
敵側のプレイヤー情報も確認してみたが、現時点での合計リング枚数が14枚……あまり集めているようには見えなかった。
となれば必然的にキルムーブをしてくるのは間違いないだろう。
「カ……カケル君ッ! 緊急事態発生だ!! 敵が二人……こちらに向かって来ている!!」
やはり仕掛けてきたか……。
しかし、早めに警戒しておいてよかった。
確か先に戦闘を始めたピィちゃんたちの相手が、両方とも機械翼だったはずだ。
となると、試合前に確認したプレイヤー情報によれば、残りの二人組は生物翼ということになる。
「落ち着くんだジェットマン! 戦わなくていいからそのまま俺の方まで来てくれ」
「わ……分かった」
「大丈夫、ジェットマンの機動力ならそう簡単に追いつかれることはない! もし危なかったら【EXウェポン】を使っても構わないから!」
「了解した! う、うぉおおおおおおおお!!」
状況が2対1なら逃げるのが基本である。
出会った頃のジェットマンは、敵が目の前に来ただけで慌ててしまっていた。
しかし、今のジェットマンは昔とはもう違う。
ちゃんと報告もしてくれるし、危ない状況ならすぐに引く判断だってできるまでに成長したのだ。
さあ、毒姫さんとピィちゃんたちが頑張って戦ってるんだから、こっちもいいところを見せないとね!