#7 モヒカンブラザーズ
ジャンボのコールによってついに試合が開始された。
試合ステージの名は【スカイスクレイパー】
超高層ビルがいくつも並び立つマップで、その特徴は遮蔽物の多さにある。
建築物の中にはいくつか侵入できるポイントがあり、各自HPや飛行能力を回復させたり、潜伏場所として利用するプレイヤーもいるようだ。
「前方から敵二人が来るのです! 確認できたのはビーストとギアが一人ずつ。両方とも機械翼なのです!」
どうやら前衛のピィちゃんが敵を発見したみたいだ。
試合が始まってから20秒も経てば前衛職同士は接敵して戦闘が始まる。
「カケルちゃん――他の二人の姿が確認できないけど、私とピィちゃんはこのまま戦闘に入るわね」
「了解、毒姫さん。他はこっちで索敵しておく」
俺は二人の位置を確認できるビルの屋内に入り込み、長距離狙撃用のジャイロスナイパーを構えつつ索敵を行った。
* * *
「女二人ですぜ兄貴ィ!」
「おう、こりゃ楽勝だなァ!」
両方とも頭がモヒカンの、通称モヒカンブラザーズが現れる。
どうやらトカゲ型のビーストの方が弟。
そして無駄に耐久力がありそうなパワードスーツを装備しているギアの方が兄らしい。
『ヒャッフーーー!!』
そして出会い頭にいきなり銃の乱射を始めるモヒカンブラザーズたち。
モヒカンブラザーズの使用武器は両者とも【スカイ・シューター】
弾属性:エネルギー弾
射撃タイプ:フルオート
装弾数:26
チャージショット:マルチロックオン・ホーミングレーザー
近距離から中距離までを得意とする武器。
初心者でも扱いやすく、チャージショットのホーミングレーザーはロックオンした標的に向かってある程度自動で追尾する。
「女だからって舐めないでもらえるかしら? 世紀末さん」
「全くです! 貴方たちのような汚物は消毒してやるのです!」
毒姫とピィちゃんはビルの角に入り込むようにして上手く相手の射線を切った。
そして相手がワンマガジンを撃ち切ったタイミングでそれぞれ反撃を開始した。
毒姫が愛用する武器は【エンチャント・ライフル】
弾属性:実弾
射撃タイプ:セミオート
装弾数:20
チャージショット:威力増加・弾速増加・属性付与
中距離からやや遠距離までを得意とする武器。
チャージショットの属性付与の効果で、使用者はMPを消費して銃弾に好きな属性を込められる。
「いくわよ、エンチャント・バレット――」
毒姫はトリガーに指をかけてチャージを開始――銃弾に得意の【毒属性】を付与する。
「――バトルアーツ【ヴェノム・スティンガー】ッ!!」
勢いよく放たれた毒姫のアーツは空中に禍々しい弾道を描く――
そしてリロード中で無防備だったモヒカン弟の胴体に直撃したのだった。
モヒカン弟のHPを約半分ほど削り、さらに状態異常【猛毒】を引き起こした。
「ガハァァアアッ!? ――兄貴すまねぇ……攻撃を食らっちまった」
「おい大丈夫かお前!! 何だか顔色がものすごく悪いぞ!?」
モヒカン兄が弟の様子を見て動揺している。
その隙を逃さないように、次はピィちゃんが動き出す。
ピィちゃんが使用する武器は【シューティングスター・ラピッド】
弾属性:エネルギー弾
射撃タイプ:フルオート
装弾数:27
チャージショット:威力増加・フルバースト・高速リロード
近距離戦に特化した双銃タイプの武器。
射撃中でも機動力を失うことなく戦うことができる。
連射力を1.5倍にして残弾全てを撃ち切る【フルバースト】は敵のHPを一瞬で削り切るほど強力。
「よそ見してていいのですか? その頭のモヒカン――刈り取っちゃいますよ?」
「……へ!?」
モヒカン兄が気づいた時にはもう遅かった。
ピィちゃんは機械翼の能力で一気に急加速し、射程圏内まで接近していたのだった。
「ク……クソッタレェッ!!」
モヒカン兄が慌ててピィちゃんを迎え撃とうとするが――
「スキル発動ッ!【電光石火】――バトルアーツ【閃光流星弾】ッ!!」
ピィちゃんはスキルによる超加速でモヒカン兄の銃弾を全て回避した。
そしてモヒカン兄の頭上に高く舞い上がったピィちゃん――
この一連の動作中にすでにチャージは完了しており、それをバトルアーツに変化させ解き放つ――
まるで流星群のような銃弾の嵐がモヒカン兄へと襲い掛かる。
「うぎゃあああああああああああッ!?」
「アッ……兄貴ィイイイイイイイイイッ!!」
毒姫とピィちゃんは、ただチャージショットを撃ったのではない。
特定のスキルやモーションを組み合わせた攻撃はシステムが【バトルアーツ】と判定して、一つの術技となる。
バトルアーツによる攻撃は【追加効果】が発生することがあり、内容は【ボーナスダメージ】や【ドレイン】等、アーツによって様々である。
モヒカン兄はHPがゼロになり、その場から消滅していく。
キル+1:ピィちゃん
デス+1:モヒカン兄
キルやデスが発生するとその瞬間に【キルログ】が流れる。
キル数やデス数のカウントは試合終了後のマッチリザルトでも確認できるようになっている。
キル判定は止めのダメージ与えたプレイヤーに入るが、途中まで他のプレイヤーがダメージを与えていた場合はその者にアシストポイントが入る。
「よくもやりやがったな!! チクショウッ……覚えてやがれーーー!!」
素敵な捨て台詞を吐きながらその場から逃げようとするモヒカン弟。
しかし、毒姫とピィちゃんがそれを見逃すわけもなく、その後あっけなくキルされたのであった。
キル+1:毒姫
デス+1:モヒカン弟