#12 セカンド・アーツ
『セカンド・アーツ【流桜閃】ッ!!』
相手のアーツに対して、数フレームのタイミングで発動しなければならないカウンター技の一つ。
失敗したら相手のアーツの直撃を食らううえに、受けるダメージが1.5倍になる。
俺は黒ギャル姉妹が放ったと思われるユニゾン・アーツ(巨大竜巻)を、逆手持ちのソニック・ブレードで真正面から受け止めた。
巨大竜巻の勢いを少しずつ殺していく――
この力加減を間違えると、技の途中でもアーツは失敗扱いとなってしまう。
こういった仕様のせいで、セカンド・アーツは発動すること自体が難しいと言われているのだ。
本来ならば流桜閃は相手の技をそのまま跳ね返す技なのだが、今回は相手のアーツが強すぎた。
このまま受け止め続けたら、アーツの発動失敗で自滅してしまう。
それほどまでに相手のユニゾン・アーツも強力なものであった。
「ぐッ……」
やむを得ず俺は巨大竜巻の勢いを半分ほど殺した段階で、次のモーションに移行した。
ソニック・ブレードで巨大竜巻の進行方向を変えるために、無理やり体ごと回転させる――
要するに、こいつがジェットマンと俺にさえ当たらなければいいわけだ。
………
……
…
結果として巨大竜巻の進路を変えることには成功した。
ソニック・ブレードに付与してある武器アビリティの効果も間違いなく働いただろう。
黒ギャル姉妹のユニゾン・アーツは見事に受け流され、斜め後方にあったビルへと直撃した。
あ……あぶねー。
カッコよく登場したはいいけど、ミスったら二人とも死んでたぞこれ……。
「カケル君!! 助けてくれてありがとう!! 危うくやられるところだった」
「いやいや、こっちこそ来るのが遅れて申し訳ない。よく耐えてくれたよ、ジェットマン」
本当にギリギリだった。
ジェットマンなら余裕で逃げられるかな、なんて考えていたけど見通しが甘かったか……。
あの黒ギャル姉妹、見かけによらず結構やるみたいだ。
しかし、EXウェポンを使った判断や、敵に追われながらも何とか俺の元へ向かって来てくれたことは、本当に素晴らしかったと思う。
ナイスすぎるぜ! ジェットマン!
さて、できればこのままジェットマンと2対2であの黒ギャル姉妹と戦いたいところなのだが……。
「ジェットマンは急いで飛行能力を回復した方がいいね。ここは俺が相手をしておくよ」
EXウェポンを使った反動で、ジェットマンはしばらく動けそうになかった。
「すまないカケル君。 回復したらすぐに戻ってくる!」
そう言ってジェットマンは近くのバッテリー回復エリアへと向かって行った。
目の前の黒ギャル姉妹たちがジェットマンを追いかけたそうにしているが、俺は進路を遮るように立ちふさがり、それを制止させた。
「姉貴……コイツさっき私たちの……」
「あぁ、間違いない。マスターだろうな……」
何やら黒ギャル姉妹が俺の様子をうかがいながら、小声で話し始めた。
まぁ、さっき俺がセカンド・アーツを使ってるところ見られちゃったしな……。
現状、セカンド・アーツを習得して、しかもそれを実践で使用している奴なんてマスターランク帯にしかいないだろう。
絶対とは言い切れないけど……。
「悪いけど、ここは通さないよ」
俺はもう片方にストライク・マグナムを出現させ、戦闘の構えを取る――
基本、攻撃はストライク・マグナム、防御はソニック・ブレードというふうに使い分けている。
それでいて相手との距離を徐々に詰めていき、ゴリゴリのインファイトを仕掛けるのが俺の戦闘スタイルだ。
しかし、普通はこのような人数不利の状況で戦うことはおすすめしない。
チームゲームである以上、どんなに自分に実力があったとしても、確実性のないプレイを続けるプレイヤーに成長は無いのだ。
レベルの高いゲーマーほど有利状況で戦うし、そもそもそういう状況を作り出すこと自体が上手い。
戦闘の基本は1vs1。
俺はマスターランクにたどり着くまでに、色んな戦闘を経験してきた。
少しでも高い勝率を維持したいのならば、リスクを排除した安定した戦い方を覚えるべきである。
しかしだ。
人数有利の状況で戦えるならそれに越したことはないないが、今は無理にそれにこだわっても仕方がない。
俺にできることは、せいぜいジェットマン帰ってくるまで時間を稼ぐこと。
それかワンチャン一人落とせたなら、さらにもう一人を狙ってみてもいいかもしれない。
……いや。
すぐにキルポに目がくらんでしまうのは俺の悪い癖ですね……(反省)。