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#10 諦めないジェットマン

 自分を追ってくる敵に対して、ただ真っすぐに逃げていてはいつか銃撃を躱しきれなくなる。

 ジェットマンは相手の射線を意識しながら、ビルの間を縫うようにジグザグに移動していた。

 このように移動することで、少しでも相手の射線から逃れることができると、ジェットマンはカケルから教わっていたのであった。


「クソ……姉貴ィ、あの機械野郎めっちゃすばしっこいぜ!!」

「あぁ、ムカつく野郎だなぁ……」


 黒ギャル姉妹はジェットマンの機動力になかなか追いつけないでいた。

 直線的に移動するのなら、機械翼のジェットマンの方に分がある。

 対して、生物翼の黒ギャル姉妹がジェットマンに追いつくためには、何かしらの工夫が必要になるのだ。


 生物翼には機械翼よりも羽を自由に動かせるという特徴がある。

 より細かく、三次元的に動くことができるので、カーブを曲がる際には機械翼よりもインコースを突くことができるはずなのだ。


 だが黒ギャル姉妹にはそういった知識は無かったようだ。


 徐々にジェットマンとの距離が引き離されていく――


「……チィッ! 仕方ねえな。――おい、アレをやるぞ」

「マジっすか姉貴ィ!! うはっ、テンション上がんべぇ!!」


 黒ギャル姉妹は一旦ジェットマン対する銃撃を止めた。

 何かを仕掛けるタイミングをうかがい始める。


(……ん? 攻撃が止んだ……?)


 とにかく逃げることに必死だったジェットマン。

 ふと振り返って、後ろから追ってきていたはずの黒ギャル姉妹の様子を確認する。


「――チャージ完了ッ! いくぜぇ!!」


 黒ギャル姉の掛け声とともに、二人はビルの死角から一斉に飛び出してきた。


『――ユニゾン・アーツ【ジェットストリーム・バースト】ッ!!』


 二人の銃から放たれた銃弾は、チャージショットの効果によって【ジェットバレット】に変化していた。

 それを5点バーストで射撃しているので、放たれた弾丸の数は計10発。


 さらに黒ギャル姉妹はそれを【ユニゾン・アーツ】に進化させていた。

 ユニゾン・アーツは通常のバトルアーツとは異なり、複数のプレイヤーが同時にアーツを発動することで発生する。


 空中で加速し続ける10発のジェットバレットは、やがて一列に連なるような形になり、一つの巨大な竜巻を形成していった。


「――なんだあれはぁぁぁーーーッ!?」


 それを見た瞬間、ジェットマンは悟った……。

 アレを食らったらマズイ……と。


「ぬおぉおおおおおおおーーーッ!!」


 ジェットマンは機械翼のバッテリーをフル稼働させ急加速する――


 だが、それが黒ギャル姉妹の狙いだった……。

 あそこまでスピードを加速させてしまうと、もう機械翼では曲がって回避することはできない。


「――ッ!! マズイ、このままでは……」


 必死で飛び続けるジェットマンと、それを追い続ける巨大竜巻――


 機械翼の急加速は、使い続ければすぐに【オーバーヒート】を起こしてしまう。

 オーバーヒート状態になるとしばらく翼としての機能を失い、ただ滑空するだけの飛行しかできなくなる。


「まだだ……僕だけ諦めるわけにはいかない!! 【EXウェポン】発動ッ!!」


 種族ギアは身体が機械で出来ているため、みんなデフォルトでEXウェポンが搭載されている。

 カケルにも言われていたが、危険と感じたらEXウェポンはなるべく使ってしまった方がいい。

 もったいぶってデスしてしまうより、ワンチャンスにかけて生き延びた方が、その分勝率も上がるのだ。


「【ニトロブースト・アクセラレーション】ッ!!」


 ジェットマンの翼とスーツが徐々に赤く染まっていく――


 飛行に使用していた燃料を、バッテリーから【特殊燃料】に切り替えたのだ。

 これにより、オーバーヒート寸前だったジェットマンの飛行状態は一度リセットされる。

 

 凄まじい勢いで加速していくジェットマン――


 このEXウェポンは機械翼の装備が必須となるが、現状このゲームにおいての最高飛行速度を引き出せるようになる。


「うぉおおおおおおおおおッ!!」


 赤く光る粒子を放出しながら超高速飛行するジェットマン――


 一瞬だが、黒ギャル姉妹のユニゾン・アーツの速度を上回ることができた。


 しかし、ジェットバレットには空中でさらに加速し続けるという特性がある。

 それはユニゾン・アーツとなったジェットストリーム・バーストも同様である。


 これ以上加速する術がないジェットマンに対し、無限に加速し続ける黒ギャル姉妹のユニゾン・アーツ。


 もう直撃は避けられないと悟ってしまったジェットマン――


「くそ……ここまでか」


 ここまで必死に耐えたジェットマンだったが、さすがにデスを覚悟してしまう。

 集めたリングも全てロストし、敵に奪われてしまうだろう……。


(まだ試合に負けたわけじゃない……リスポーンしたらすぐにリングを集めなおすんだッ!!)


 その時だった――


『セカンド・アーツ【流桜閃】ッ!!』


 それは鍔無しの直刀、それを逆手持ちで構えた剣技によるものだった。


 その剣技と黒ギャル姉妹のユニゾン・アーツが真正面から激突する――


 付近にある超高層ビルの窓ガラスが、発生した衝撃波により粉々に砕け散る。

 そして、ジェットマンに直撃すると思われた巨大竜巻は、見たこともない剣技によって弾き飛ばされてしまった。


 ――その場いた誰もが理解するまでに時間が掛かった。


 開いた口が塞がらずにいるジェットマン。

 そして目が点になりながら「うそ……でしょ……」と言葉を漏らす黒ギャル姉妹たち。


 その状況に全員が唖然として、空中で静止してしまっていた。


「いや~危ない危ない……。間一髪だったね、ジェットマン」


 そこに現れたのは味方チームのカケルだった。

 ジェットマンはカケルが自分を助けてくれたのだとようやく理解した。

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