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女王様と下僕の日々

とある王配の醜聞

作者: 獅子柚子

「まさか、本当に地下資源を掘り当てるなんてね……」


 遠い目をしながら、レジーナは言う。

 彼女の視線の先には、執務机に載せられた魔石と、その質や採掘場所に関する調査結果が記された書類の束があった。


「いやあ、僕も驚きましたよ」


 ホクホク顔で、レナードは答える。

 その顔色は、とても落盤の危険がある廃坑に数日潜っていたとは思えない程に肌艶が良く、少しも疲労を感じさせなかった。


「崩落の可能性のある廃坑なんて聞いてしまったら、ドM心が疼くでしょう?それで出向いてみれば、奥の方に魔石がゴロゴロあったんですから」


 うっとりとした眼差しで、レナードは語り始める。


「ああ……いつ生き埋めになるともしれない危機感、小さな物音一つにも神経を尖らせながら、狭くて暗い道をたった一人で進んでいく恐怖……。いま思い出しても、興奮す「ちょっと黙ってくれるかしら」」

「はうんっ!」


 冷たい目をしたレジーナがぴしゃりと遮れば、レナードは奇声を上げて頬を赤くさせる。

 その様子に、レジーナは今日も深いため息をついた。


「まったく……。一歩間違えれば、貴方は本当に死んでいたのよ?」

「この命を賭けて、僕は自分の性癖に素直でいたいのです」


 キメ顔で言い放つレナードに、レジーナは再び深いため息をつく。

 そして、さらに温度を下げた瞳で言い放った。


「……あなた、本当に一度人生をやり直したほうがいいわよ」

「ひゃんっ」


 しかし、もちろんレナード(変態)には効果がない。

 むしろ、先程から頬が紅潮しっぱなしで、心なしか更に肌艶も良くなっている。


「顔合わせで見た時は、まともな好青年だったのに……。こんな変態令息に育つなんて、いったい貴方の家はどんな教育を施したのかしら?」

「あふんっ!……ふ、不意打ちはズルいですよ、レジーナ……!」


 頭を抱えるレジーナの嘆きさえ、レナードにとっては御褒美であった。


 ビクンビクンと震えながら悦ぶドM(レナード)に、この変態どうしてくれようとレジーナが本気で悩み始めた、その時である。


 執務室の扉が、慌ただしくノックされた。


「お取込み中、失礼いたします。至急、女王陛下に御報告致したいことがあり、入室の許可をいただけないでしょうか」

「許可するわ。入りなさい」


 レジーナが応じるなり、執務室の扉が開かれる。

 走ってきたのか、息を切らせた近衛兵は、早口に告げた。


「リッピア皇国より、スプリッツァー公爵家の御令嬢がお越しになり、女王陛下並びに王配殿下に謁見を求めておられます!」



 ***



 取り急ぎ身支度を調えたレジーナは、レナードと謁見の間に向かった。

 入室すれば、そこにはいかにも良家の令嬢らしい少女が控えている。


「はじめまして、ビア・スプリッツァー公爵令嬢。どうぞ、お顔をお上げになって」


 レジーナが言えば、名を呼ばれた少女は顔を上げ、優雅なカーテシーを披露した。


「お初にお目にかかります、女王陛下。スプリッツァー公爵が一女、ビアと申します」


 十五、六歳くらいだろうか。

 整った顔立ちだが、まだどことなく幼さの残る愛らしい少女だ。

 小柄で華奢な事も相まって、フリルがたっぷりとあしらわれた桃色のドレスがよく似合っている。


「このたびは先触れも出さず、大変な御無礼をいたしました。どうか御寛恕くださいますよう、お願い申し上げます」


 丁寧な口調で、ビアは非礼を詫びる。

 だが、その琥珀色の瞳は、敵対心たっぷりにレジーナを睨みつけていた。


 (この御令嬢とは、初対面のはずだけど……?)


 レジーナは、内心首を傾げる。

 だが、その疑問はすぐに氷解することとなった。


「久し振りだね、ビア」


 それまで背後に控えていたレナードが、一歩前へ出て、ビアに声をかける。

 その瞬間、ぱっとビアの瞳が輝いた。


「レナード様……!」


 頬を桃色に染め、甘さを含んだ声でビアはレナードの名を呼ぶ。

 先程までの剣呑な雰囲気はどこへやら、すっかり恋する乙女の顔だ。


 (……ああ、そういう事ね)


 レジーナは、ちらりと傍らのレナードを見遣る。


 本性は変態のレナードだが、けして見た目は悪くない。


 むしろ、中身さえ知らなければ、大抵の女性が見蕩れてしまうような美青年なのだ。

 加えて、物腰は柔らかで、性格も穏やかなのだから、ひそかに憧れを持っていた令嬢がいても不思議はない。


 腑に落ちたレジーナは、ならばと思い声を掛けた。


「レナードから聞いたわ。貴女とレナードは、幼馴染なのよね?」

「ええ。私が四歳、レナード様が十歳の頃からのお付き合いですわ」


 再び敵対心たっぷりの眼差しに戻り、ビアは答える。


 わざわざ付き合いの長さを強調するあたり、これはもう間違いないと見ていいだろう。


 確信を得たレジーナは、笑顔で切り出した。


「ぜひ、リッピア皇国でのレナードのお話も聞かせていただきたいわ。……私は、昔のレナードを知らないから」


 最後のほうは伏し目がちに、少し寂しそうな表情で言えば、視界の端でビアが口角を上げるのが見えた。


 作戦通りだ。


 相手は大国の公爵令嬢、こちらは滅亡寸前の小国の女王である。

 ここは下手に出ておき、適当に話を合わせてお帰り願うのがいいだろう。


「無理もございませんわ。レジーナ様は、レナード様と御結婚されてから数ヶ月しか過ごされていないのですから。では、僭越ながらお話しいたしましょう」


 レジーナの思惑などは露知らず、ビアは勝ち誇るように鼻を鳴らし、優越感の滲む声で応える。


 分かりやすくて助かるが、大国の公爵令嬢ともあろう者が、これで権謀術数が渦巻く社交界でやっていけるのだろうか。


 そんなレジーナの心配をよそに、ビアは得意げに話し始めた。


「レナード様は、リッピア皇国でも屈指の名家であるクラピア公爵家の御出身。加えて、文武に優れ、誰にでも分け隔てなく優しいレナード様は、リッピア皇国中の令嬢の憧れでした」


 その点については、想像に難くない。

 実際、廃坑での調査に関しても、レナードの上げた報告書は詳細で、大いに役立っている。

 意外に身体能力が高い事も、レジーナはこれまでの経緯で実感していた。


「それに、レナード様はとても勇敢なのです。……幼い頃、大きな犬に噛まれそうになった時も、わたくしを庇って怪我をされました」


 そう言いつつ、ビアはレナードの左腕へと目をやる。


 (ああ……そう言えば、確かにそんな傷があったわね)


 レナードの左腕には、動物に噛まれたような痛々しい傷痕があった。

 初めて目にした時は、その古傷に流石のレジーナも心配した……のだが。


 (その後、嬉々として犬に噛まれた時の恐怖と痛みと興奮を語り始めたのよね……)


 ドMモード全開のレナードを思い出し、レジーナは思わず白目を剥きそうになる。

 だが、そんなレジーナの反応が不服だったらしく、いくぶん興奮した様子でビアは続けた。


「裏庭から出てきた蛇に噛まれそうになった時だって、野良猫に引っ搔かれそうになった時だって、意地悪な令嬢から熱い紅茶をかけられそうになった時だって……!レナード様は、いつだって私を守ってくれたんです!」


 守っていたではなく、悦んでいたの間違いではないだろうか。

 レジーナがこっそりとレナードを見れば、当時の事を思い出しているのか、小さく声を上げながら頬を紅潮させていた。

 やはり後者で間違いないようである。


「だから……っ、レナード様が本当に愛しているのは、私だったのに……っ!」


 え、そっちに行くの?

 予想外の話の飛び方に驚くレジーナをよそに、ビアは更にヒートアップしていく。


「政略のためとはいえ、こんな辺境の小国に追いやられて、共同統治者でもない王配だなんて!」


 瞳に涙を溜めたビアは、ぱっと駆け出す。

 不意のことで、近衛兵が制止する間もなく壇上へと登ったビアは、縋るようにレナードの腕を摑んだ。


「わたくしと共に帰りましょう、レナード様!あとのことは、父がなんとでもしてくれますわ!」


 そう懇願する彼女は、よほど覚悟を決めていたのだろう。

 悲痛なまでの叫びを上げ、懇願する彼女の瞳には、レナードしか映っていない。


「……ありがとう、ビア」


 微笑を浮かべて、レナードはビアの頭を優しく撫でる。


「ビアは、素敵な女性だ。だから、そんなビアが僕に好意を寄せてくれた事は嬉しいし、とても誇りに思うよ」

「それなら……!」

「でも、僕の伴侶はレジーナだ」


 自らの腕を摑むビアの手を、そっと振り解きながら、レナードは続ける。

 そして、レジーナへと視線を移した。


「怜悧な眼差し、女王としての毅然とした振る舞い、気位の高さ。国という重責を負いながらも凜と立ち続けるレジーナを、僕は心から尊敬している」


 そう言って、レナードはレジーナの手を握る。

 愁いを帯びた真剣な眼差しに、中身が変態と分かっているレジーナですら、不覚にもときめいてしまう。


「そんな……それなら、わたくしは何の為にここまで……っ!」


 見つめ合う二人に、ビアはその場に崩れ落ちる。

 その頬には、一筋の涙が伝っていた。


「ビア……」

「幼い頃から、ずっと貴方を想っていたのに……。わたくしを弄んでいたのですか、この嘘つき!」


 ぱしぃん、とビアの手の平が、レナードの頬を打つ。


 (あ、やばいこれ)


 これから起こるだろう事態を予想し、レジーナは頭を抱えた。

 だが、怒りに燃えるビアは止まらない。


「思わせぶりな態度ばかりとって、無駄に優しくして!最低ですわ!」

「はうんっ」

「顔と家柄が良いだけのクズ野郎!」

「あひんっ」

「貴方なんて、馬に蹴られて死んでしまえばいいのよ!」

「きゃふんっ」


 怒濤の勢いで罵倒され、最早レナードは失禁寸前である。ついには、腰砕けになってその場に崩れ落ちていく。


 既に、貴公子の仮面は遙か彼方に投げ捨てられてしまったらしい。


 だが、レナードの正体(ドM)を知らないビアは、自らの言葉にレナードがショックを受けたのだと誤解した。


「あの、レナード様……。ご、ごめんなさ……」


 目に涙をため、ビアは謝罪の言葉を口にする。

 そして、ビクンビクンと震えるレナードを、気遣わしげに見ていたが……


「……っと……」

「え……?レナード様、なんと?」

「もっと……僕を罵倒してくれ……!」


 顔を上げたレナードは、頬を紅潮させて懇願する。


「は……?え、なに……?」


 予想外のレナードの反応に、ビアは理解出来ないものを見るような目をしている。


 無理もない。

 恐らくは、公爵家の令嬢として甘やかされ、純粋培養で育った箱入り娘なのだ。

 変態についての知識など無いだろうし、そもそも知っているほうが問題である。


 困惑する彼女に、レジーナは静かに告げた。


「スプリッツアー公爵令嬢、諦めなさい。……レナードは、貴女の手に負える相手ではないわ」

「それは、どういう……?」

「彼は……他人に虐げられて悦ぶ、豚なのよ」


 視線を落とすレジーナに、ビアは今度こそ言葉を失う。

 ついでに、レジーナの豚発言によって限界を迎えたレナードは、満足そうに「おふんっ……」と言って果てた。


 もはや、これ以上ないほどにカオスな状況である。


 だが、そんな事態に追い打ちをかけるように、叫び声が響いた。


「レナード殿下!一体どうなさったのですか!?」


 声の主は、壇上へと駆けつけた近衛兵だった。

 先程の余韻で気を失ったままのレナードを、心配そうに覗き込んでいる。


「い、意識が……!まさか、毒か……!?」


 どうやら毒を盛られたために、レナードが意識を失ったのだと誤解したらしい。

 近衛兵は、厳しい眼差しでビアを睨みつけた。


「失礼ながら、スプリッツアー公爵令嬢。王配殿下に何をされたのですか?」

「は……?」

「詳しい会話までは聞き取れませんでしたが、何やら王配殿下と口論なさっていた御様子。貴女が、直前に王配殿下に触れていたのも見ています」


 どうやら、近衛兵はビアがレナードに毒物を盛ったのだと疑っているようだった。


 とんでもない誤解なのだが、レジーナは彼が詳しい内容までは聞いていなかったという事に安堵する。

 王配が変態だと知れ渡ってしまえば、只でさえ危うい女王の権威は完全に地に落ちる。


 とにかく、なんとかこの場を収めなければ。

 そのためには───。


 レジーナは声を潜め、ビアに耳打ちした。


「私に話を合わせなさい。悪いようにはしないから」

「は!?何故わたくしが、貴女の言うことなど……」

「貴女、どうせリッピア皇国ではレナードを好きだった事が知れ渡っているのでしょう?初恋の相手が変態だったなんて噂が広まってもいいのかしら?」


 ビアが、心底嫌そうな表情を浮かべる。

 そして、ちらりと気を失ったままのレナードを見て、不承不承といった様子で頷いた。


「……協力するわ」

「ありがとう」


 ビアに礼を言うと、レジーナは近衛兵へと向き直る。

 そして、きっぱりと言い放った。


「聞きなさい。レナードがそうなったのは、毒物のせいなどではありません」

「女王陛下!ですが、実際に王配殿下は……」

「私の話を聞けと言ったのよ。口を閉じなさい」


 厳しい口調で窘め、少し目に力を入れれば、近衛兵はピタリと口を噤む。

 悪女顔が役に立つ、数少ない瞬間だ。


「レナードが倒れたのは、毒を盛られたからではないわ。彼を追い詰めてしまったのは、他でもない……彼自身なのよ」


 視線を落とし、レジーナは悲しげに呟く。

 そして、芝居がかった動作で、その場に崩れ落ちた。


「……レナードは、幼馴染みへの叶わぬ恋に苦しんでいたわ。私との結婚よりも、ずっと前からね」

「こ、恋……?」

「彼は……このスプリッツアー公爵令嬢に、想いを寄せていたのよ!」


 近衛兵が、驚いたように息を呑む。

 よし、掴みは悪くない。


「そして、貴女も彼を憎からず思っていた。……そうよね?」

「え?……ええ、そうですわ」


 レジーナの言葉に、慌ててビアが同調する。

 いまいち嫌そうな表情が隠せていないが、まあ良いだろう。


「……でも、レナードは、政略のために女王である私と結婚した。きっと苦しかったでしょう」


 そっと目を伏せ、レジーナは言う。

 もちろん、出来るだけ切ない表情を作る事も忘れてはいない。


「だから、思い余って、危険な廃坑への調査を自ら願い出たのよ。それほど、スプリッツアー公爵令嬢を想っていたのね……」

「まさか、王配殿下が……?いや、だが、あんな自殺行為にも等しい事を、正常な精神状態でするはずが」


 レジーナの言葉に、近衛兵は困惑する。だが、全く信じていないといった様子でも無さそうだ。

 ……もう一押し、と言ったところかしら?


「今日、自らを追ってきたスプリッツアー公爵令嬢を見て、レナードの心は再び揺らいだ。それでも、責任感の強い彼は、伴侶である私を裏切る事ができない。きっと恋心と義務の板挟みで苦しんで、それで……」


 そこで言葉を区切り、レジーナははらはらと涙を流す。

 まさか、連日の書類仕事のために持ち歩いていた目薬が、こんなところで活躍するとは思ってもみなかった。


「で、では……王配殿下の症状は、極度のストレスによる発作であると?」

「ええ」

 

 そこで、レジーナは身を翻し、ビアへと向き合う。

 事態についていけず、呆然としたままのビアの手を握り、レジーナは頭を下げた。


「ごめんなさい、スプリッツアー公爵令嬢。私さえいなければ、貴方達は結ばれていたのに……!」


 近衛兵からは見えない角度で顔を上げ、レジーナはビアにアイコンタクトをする。

 はっと我に返ったビアは、慌てて首を振った。


「い、いえ、とんでもございません!」


 ビアは、再びレナードのほうを見遣る。

 そして、何かを悟ったような穏やかな表情で、静かに告げた。


「……わたくしのレナード様への想いは、既に過去の思い出です。どうかお気になさらずに」


 死んだ魚の目をしたビアの言葉は、おそらく本心からのものだろう。

 だが、そんな彼女の眼差しを、近衛兵は全く別の形で解釈していた。


「ううっ、スプリッツアー公爵令嬢……。なんて生気の無い、悲しげな目をしているんだ。女王陛下も、なんと切ない……!」


 よし、計画通り。


 目尻に涙を浮かべ、そっとハンカチを当てる彼の姿を見て、レジーナは小さくガッツポーズをするのだった。



 ***



「まったく、貴方のおかげで大変な思いをしたわ」


 数日後。


 執務室で書類に目を通しながら、レジーナはため息をついた。


 その前には、既に三時間ほど正座したままのレナードがいる。


「貴方のせいで、私はもう少しで身の破滅になるところだったのよ?」

「は、はひ……」


 息も絶え絶えに答えるレナードだが、相変わらずその頬は紅潮している。


 ……やっぱり反省していないわね。


 額に青筋を立てながら、レジーナは努めて笑みを浮かべた。


「行儀の悪い犬には、躾が必要ですわね?」

「れ、レジーナ……!」


 おい、嬉しそうな顔をするんじゃない。


 往復ビンタを喰らわせてやりたい気分になるが、それではこの変態レナードを悦ばせてしまうだけである。


 唸りそうになる右手を抑え、レジーナはベルを鳴らした。


「お呼びでしょうか、女王陛下」


 即座に入室してきたのは、予め執務室の前で待機させていた騎士である。


 名はサラトガ。


 平民から騎士団長にまで登りつめた男で、先代から仕えている数少ない忠臣の一人だ。


「サラトガ。例の計画を実行するわ」

「御意に」


 言うが早いか、サラトガはがっちりとレナードを羽交い締めにする。


「レ、レジーナ……?これは、いったい……?」


 突然の事態に、さすがのレナードも困惑した様子だ。

 レジーナは会心の笑みを浮かべて、レナードの問いに答える。


「今日から五日間は、騎士団で書類仕事を片付けていただきます」

「えっ」

「彼らは、脳き……いえ、あまり書類仕事が得意ではないようで、調査も改革も進まずに困っていたのよ」

「いや、あの……」

「ついでに、貴方の軟弱な精神も鍛えてくれるそうだから、()()()()()()()()()たっぷり躾けてもらいなさいな」

「ま、待って、レジーナ!」


 レジーナがパチンと指を鳴らせば、心得たというようにサラトガが頷き、レナードを連行していく。


『僕は男に責められても興奮しないんだあああ』というレナードの絶叫だけが、静かになった女王の執務室に木霊していた。






前作を沢山の方がお読みくださったおかげで、続編を投稿する事が出来ました。本当にありがとうございます!


***



ビア・スプリッツアー


リッピア皇国の公爵令嬢。

箱入り娘として甘やかされ、大切に育てられたため我が儘で世間知らず。

幼い頃からレナードを慕っており、レナードの婚約が決まってからも諦められず、追いかけてきた。

根は悪い子ではないが、周囲が見えておらず、自分の思いのままに突進しがちである。



シャンディ・ガフ


本編では名前の出なかった近衛兵。

厳つい見た目だが、趣味はロマンス小説を読む事である。そのため、見事にレジーナのシナリオに嵌まった。

生家は地方領主で、平民に入り混じって畑を耕していたため差別意識もあまりなく、職務を真面目に遂行している。


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― 新着の感想 ―
[一言] …………最強と思われていたドМにも、弱点があったのか……。 訓練終了直後の、騎士団の更衣室に放り込んだら……(どす黒い笑顔
[良い点] 百年の恋も覚めるというか……無事に誤解が解けてよかったよかった(?)
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