ある夏の暑い日の、あるカップルの1日
お久しぶりです!星宮未羽です!
受験だなんだ、と、長い間更新せずにすみませんでした……(´;ω;`)
今回のお話は、優しいカップルのお話です。
すぐに読みおわれると思うので、ぜひ楽しんでください!
「今日のデートはどこに行こうか。水族館?動物園?久しぶりに遊園地はどう?」
「だいちくんの好きなところでいいよ。だいちくんと一緒ならどこも楽しい!」
「今日は遊園地にしようか、楽しみだな。」
車を遊園地に向かって走らせる。
BGM は彼女の好きなアイドルグループの新曲だ。
「この曲好きそうだよな。れなの推しメンがソロを歌ってるんだろ?」
「だいちくん、私の推しを覚えててくれたんだね。嬉しい!」
「ジュースもほら、れなの好きなアイスティーを買ってきたんだ。あとこのお菓子も好きだったろ?あとこれと、これと……。」
助手席に彼女の好きなお菓子が積まれていく。
「わ、いっぱいだ、ありがとうだいちくん。」
「こんなに食べきれるかな、つい買いすぎちゃうんだよなぁ。」
車は高速に入り、晴れた空が全面に広がる。
「今回も晴れてよかったなぁ。」
「そうだね。」
「ねぇれな、お菓子食べていい?」
「うん。食べて食べて。」
少し迷ってチョコレート菓子を食べる。甘い。れなは甘いものが好きだ。
「れなも食べていいからね。」
車は遊園地で向かい、チケットを買う人の列が目に入る。
「割と混んでるなぁ」
「休日だしね。」
駐車場も混んでいて、車を停められたのは入場ゲートから遠く離れた場所だった。
「ごめんな、こんな遠くて。暑いよね。」
「慣れてるよ、大丈夫大丈夫。」
「日傘とか持ってくれば良かった。」
「もー、そこまでしてくれなくてもいいんだよ?」
まただ、自分の想定の甘さが悔やまれる。その分いっぱい楽しませるから。
「期待してますよ?」
彼女の笑顔はとても眩しかった。
「何に乗ろうかな。」
「ジェットコースターでしょ?コーヒーカップでしょ?あとあのぴょーんってなるやつも乗りたい!」
1つずつ、指を折って数える。
「こんにちは!チケットは何枚になりますか?」
「あ、2枚お願いします」
2人分のチケットを持って入場する。
大きな音楽に響く笑い声、子供連れの家族やカップル、女子高生らしい軍団もいる。
「わぁぁ……!」
れなは目を輝かせてうろちょろと歩き回っていた。
「今日は迷うなよ?」
実を言うと彼女は一度ここで迷子になっている。まぁ、今日は大丈夫だと思うが。
はしゃぐ彼女の可愛さに俺はいつもやられてしまっていた。
「まずは頭かな。」
彼女はキャラクターものの飾りなどをつけるのが好きだ。
今回も新しいものを買ってあげよう。
「俺の分は……っと、」
鏡の前でカチューシャを当てしかめっ面をする。
俺にはこの良さはわからない。だから結局、
「だいちくん、これが似合うよ。」
彼女が勧めてくれたものを毎回買ってしまう。
だが大変なのはここからだ。れなに似合うものを探さないと。
「これか?それともこっち?」
こういう時彼女はいつもニマッと笑って何も言ってはくれなかった。困っている俺を見て楽しんでいるのだ。意地悪だ。そういうところも可愛いけど。
「これは前買ったし、これは持ってるのに似てるし……あぁぁ、難しい!」
「えへへ、いつも選んでくれてありがとう。」
結局30分もかけてしまった。今回選んだのは可愛い耳のついたカチューシャ。小柄な彼女によく似合う。
「それじゃあ、満喫しますか!」
絶叫系が好きな彼女のためにまずはジェットコースター。フリーフォールやバイキング、回転ブランコなどなかなかにヘビーなアトラクションを巡っていく。
「ふー。疲れたぁ。」
「あはは、楽しいね。」
お昼ご飯、と言いつつ休憩する。ここで食べるのはいつも同じメニュー。俺はハンバーグで、れなはオムライスだ。
「買ってくるね。」
荷物を置いて席を立つ。
「オムライスとハンバーグを1つずつ。」
「申し訳ございませんお客様。オムライスはなくなっちゃったんですよ……。」
「あ、そうなんですね。」
困った。彼女は何を食べるだろうか。想像してみる。
ハンバーグを食べる彼女、ポテトを食べる彼女、ラーメンを食べる彼女……。
「じゃあ、ラーメンで。」
フーフーしている彼女を想像してにやける。きっと可愛い。
「オムライスなかったからラーメンにしたよ。」
「別に買ってくれなくてもよかったのに。でも、ありがとうね。」
「思ってたより多いなぁ、食べきれるかなぁ。」
「そこは頑張って食べてね!」
「前来た時オムライスあったのになぁ。れなが好きだったのに。」
「前来たの結構前だし仕方ないよ。ラーメンも美味しそうだよ!」
「時代の流れは早いなぁ。」
「あはは、おじいちゃんみたい。」
ゆっくり時間をかけてお昼ご飯を食べる。彼女とのデートの思い出をかみしめるように、そしてハードなアトラクションでヘロヘロになった体を回復させるためにしっかり、ゆっくりと食べる。
お昼時の喧騒が収まって行き、周りにいる人数も少なくなってきた。時計の短針はそろそろ2を指しそうだ。
「次、行くかぁ!」
「そうだね!」
午後は少しおとなしめにお化け屋敷に入ったり、シューティングゲームをしたりして遊んだ。
時間はあっという間に過ぎていくものだ。
「最後にあれ乗りたいなぁ。」
れなは観覧車を指さした。
「これで最後にするか。」
小さなゴンドラに入れられ、扉を閉められる。
静かな、時間が流れる。
地面がどんどん小さくなっていき、夕焼けに染められたあたたかい空へと昇っていく。
「れな、楽しんでくれたかな。」
「すごく楽しかったよ。だいちくん、連れてきてくれてありがとう。」
「また一緒に来てくれるかな。」
「だいちくんが連れてきてくれるなら、だけどね。」
「れなのことが一番好きだよ。」
「ありがとう。」
「愛してるよ。」
「嬉しいなあ。」
「ずっと一緒にいようよ。」
「それは無理、かなぁ。」
「ずっと一緒だよって言ってくれてたのに。」
「だいちくん、ごめんね……。」
れなは項垂れるだいちの頭をずっと撫でていた。観覧車は頂点を超えて地上へ近づいていく。
「来年もデートしよう。どこにだって連れて行くから。」
「私以外の人とも遊んで欲しいけどなー。」
「俺、れながいないと無理だよ。」
「だいちくんなら、大丈夫だよ。」
大きな輪は一周する。楽しいデートもこれで終わりだ。
「帰ろう。送って行くから。」
「うん。」
夕焼けが沈んだ空を背景に静かに車を走らせる。彼女の昔好きだったアイドルの曲をかけて、彼女が昔好きだったお菓子は食べながら車を進ませる。
高速を降りて人気のない方向へ進む。街灯はどんどん減り、辺りは真っ暗だ。
「着いたよ。」
物音1つしない空間に自分の声だけが響く。
「れな、好きだよ。」
「私も、だいちくんのことだーい好きだよ!」
「今年もデートしてくれてありがとう。これ、あげるから。」
食べきれなかったお菓子と彼女のために買ったカチューシャ、遊園地のチケットをきれいに並べて置く。
「また、来るからね。」
また、来年の夏に。何度でも誘いに来るから。
「今日も楽しかったよ、れな、ありがとう。」
そう囁くと、彼女の名前の刻まれた墓石に手を合わせた。
お楽しみいただけましたか??
このお話を読んでくださって、ありがとうございます!
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(ノ◕ヮ◕)ノ*.✧