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第七章

 なんだか私取り残されているかも。


 帰宅してからそう思う。なんせ私以外の部員は萌さんからしき人から物をもらっているから、私だけなしってなんかいじめみたいだ。


 いやいやあっちゃん達が出会ったのはもしかしたら萌さんでは無いかもしれない、でも萌さんではないという証拠も無い。


 そうだ今度萌さんの写真を誰かから借りて、それでみんなで確認すればいいのだ。そうすれば本当に萌さんと会ったのか分かるし。


 でもそんなことをして三人が萌さんと生前に関係があったらどうしようか。私だけ仲間はずれ決定だよ。


「そういえばあの封筒に入った数冊のノートは何だろうか?」


 中三の冬に送りつけられたし、もしかしたら萌さんと関わっているかもしれない。私だけが一人仲間はずれなのをかわいそうと神様も思うだろうし。それに同じ時期にノートと同じ送り主から送られたゲームも何か関係あるかもしれない。


 でもゲームで使われた名前は『あけみ』で、萌さんとは全く関係無い名前みたいだった。


 無いかもしれないけど、一応確認してみよう。


 封筒を取って、ノートを丁寧に一冊ずつ取り出す。


 オレンジのバインダーファイルと黄色のダブリングノートと紺色の無地ノートと桜色の点付きノートと赤い表紙の方眼ノートの六冊(うち一冊はバインダーファイル)がある。


 まずはバインダーファイルを見る。小説のネタ帳らしく設定やプロットが書いてある。誰が書いたかはこれを見ただけでは分からない。


 次はダブリングノートを読む。詩がいっぱい載ってある。上手だなと思うけど誰が書いたかは分からない。


 その次は紺色の無地ノートを読む。読書感想文みたいに読んだ本の感想が書いてある。これも誰が書いたか分からない。しかも同封されていないだけで他にもこういう風なノートはありそうだ。


 読んでいるうちになんだかむかついてきた。このノートは小説を読んだり書いたりする人が単純に何も考えずに書いたノートなのだろう。深い意味なんて皆無だ。


 そうなのに何で私はノートを読んでいるのかな、罪悪感が出てきた。


 知らない人の書いた個人的なノートを読むことの気まずさは半端ない。例えこのノートが押しつけられるように送られたとしても。


 どうしよう。このまま読み続けようか?そう悩んでいると、携帯電話の着信音が鳴った。


 携帯電話を開くと、ブログの更新通知メールが届いていた。どうやら私がいつも読んでいるブログが更新されたらしい。


 私はメールを読み終わると携帯を閉じる。とにかくこのノートを読み続けるか読まないか決めないと。


 はい考えるのを諦めて読む。考えても仕方ないし、読んでから考えよう。


 桜色のノートには地域コミュニティFMの『さくらん』さんというリスナーさんが投稿したメールをまとめてある。もしかしてこのノートの持ち主は男でさくらんさんとか言う人のストーカーなのかと思うとぞっとする。


 青い表紙の大学ノートには『神降ろしの五族』というオカルトめいた五つの家族についてのレポートがある。実在するかどうか分からない人達をこんなに詳しく調べるとは変わっているなと思う。


 この二冊のノートを読むと、ストーカーなのかオカルト好きなのかと思う。だけどこれじゃあ誰が描いているか分からない。


 そもそもこのノートを見ようと思ったのは、これが萌さんと関係しているかどうか確認するためだった。でも確認してみても誰が書いたか分からない。


 すると最後の一冊、赤いノートには何が書いてあるのかな?他のノートと同様にどうでも良いことかな。


 私はやや緊張しながらノートをめくる。すると一ページ目に家系図が書いてある。


 一人の女性に結婚していることを示しているイコール線が三つ引かれている。しかもそれぞれの線に子供がいることを示す線が一本ずつついていて、その線の先に当たり前のように名前が書いてある。


 ざっと見るとそこに書いてある名前には見覚えがあった。女性の名前は私の母と同じ。それに三つのうち一つの男性の名前は私の父と同じで、しかもそこの子供は私と同じ名前だ。


 なんだか我が家の家系図ですと言っても違和感が無いけど、女性から伸びるもう二つの結婚線がそうでは無いことを示している。二つとも男性の名前に心当たりは無いけど、子供の方は『萌』『涼太』と萌さんとりょーた先輩の名前が書いてある。


 偶然なのか必然なのか分からない。もしかしたら全く関係無い同名の人かもしれないし。


 とりあえず読みすすめることにする。


 日記のようで家族に対する悩みが書いてある。


 どうやらこの文章を書いた人は特別養子で今の家族とは血縁が無いみたいだ。


 そういえば萌さんもれいちゃんによると特別養子だったらしいから、この状況にあてはまる。


 それが原因なのか家族とはそりが合わないと書いてある。


 この先を読みすすめて良いのだろうか、読んでいて不安になる。今までのたわいの無いことやどうでもいいことを書いてあったノートとは違って、これは本気で書かれたノートだ。人の秘密や知ってはいけないことを暴くようでどきどきする。それと同時に読んではいけない気がする。


 それでも読みすすめる。このノートを書いた人が本当に萌さんなのか知りたいと思ったから、ひたすら読み続ける。


『そして高校は少し遠い所に進学して、少し遠い所で遊び始める。図書館に行ったり、コリナラの路上ライブやライブに行ったり、近所ではあまり知られていないラジオ番組を聴いてその局のイベントに参加する』


 それはお昼に知った萌さんの行動と同じだ、さっきも一緒だけど今度も一緒だと、偶然では無いかもしれない。


 いやこれだけでは分からないけど。


『高校時代に実の家族について調べる。色々な手段を使って調べると母親は父親と付き合い自分を産み、交際を反対されて二人は別れさせられた。そしてその子供である自分はその時に子供を欲しがっていた遠縁に養子として押しつけられた。

 そして母親はその後結婚して男の子を一人産むが、その後浮気してなおかつ妊娠して離婚した。男の子は父親が引き取った。そしてその後に浮気していた相手と再婚して、女の子を出産した。現在はそのこと三人暮らしみたいだ。

 そして父親も結婚して、現在は女の子と三人暮らしだ』


 私はそこまで読んだ時にこのノートを書いた人の行動力に感心した。


 普通はそこまで行動力は無いし調べようとはしない。


 でもこの場合は調べなかった方が良かったかもしれない。だってその後このノートを書いた人は絶望している。そういったことがくどくどとノートに書いてある。それは当然かもしれない、自分の両親はそれぞれ自分を捨てて他の家庭を築いて幸せに生活している。普通の三人家族で生まれ育ってきた私には分からないけどそのことを知った時に萌さんはそうとう辛かったのだろうな。


「読むのが疲れる」


 私はチョコレートをつまんで少し休憩する。ここまで暗いと読むと精力が吸われるようでかなり疲れる。


『高校三年生の時、異父弟が入学して、同じ部に入部した。もちろん異父弟は自分のことに気づいてなかった』


 えっこの人が萌さんだとすると、異父弟はりょーた先輩のことだ。だってりょーた先輩以外の男性部員はいなかったらしいし、一ページ目に名前が書いてあるから絶対そうだ。


 そしてノートの記述はそこで終わっていた。これは日記なのか小説なのか分からないけど、上手にまとまっていた。


 そしてノートはそばらく白紙が続いて最後のページにびっしり書いてある。


 私は全てを読み終わると、鞄にそのノートをしまう。


「さてどうしようかな」


 このノートの持ち主が萌さんで、もしこのノートに書いてあることが本当だとすると私は萌さんの異父妹だということになる。


 すなわち父親が違うだけで、姉兄妹関係であり、でもそれ私やりょーた先輩は気づかないで、今まで暮らしてきた。


 その事実は信じられない物だった。普通のどこにでもある三人家族だと今まで思っていたのに父の違う兄と姉がいて、しかも姉が自殺していたとは。


 私は携帯電話を取りだしてあちこちにメールをする。そしてそのメールの返信をして、せわしなく過ごす。


 萌さん・・・・・・。私のお姉さんかもしれない人はなんで私にこのノートを残したのだろうか。私にはいまいち分からなかった。恐らくこのノートを見せたかった相手は私ではなくて、別にいるはずだと思う。


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