第二章
今日は初投稿ということで、二話連続で投稿します。すでに終わりまで書いてあるので、週一ペースで投稿して、完結済になるように頑張ります。
「今日もあっちゃんつれなかった」
やっちゃんはがっかりしているようだ。
萌さんの妹が帰った後はかなり雰囲気が気まずくなって、そして気まずいまま活動時間が終わった。
うちは少数精鋭いや単純に人数が少ないので部活が終わると一緒に帰宅している。だから帰宅中も気まずい雰囲気だった。特にららちゃん先輩とりょーた先輩は一言も話さなかったし、あっちゃんも黙っていた。うるさかったのはあっちゃんにしつこくまとわりついていたやっちゃんと『銀河街の悪夢』を口すさんでいた私くらい。
「あっちゃん私にだけ冷たい気がする」
やっちゃんがぶつぶつ文句をこぼしている。やっちゃんは幼稚園から一緒という幼なじみで家が近所。だから帰宅するときは最後までやっちゃんと一緒にいないといけない。
「あっちゃんはりょーた先輩には優しいのに、私にはつれない」
それが時々うざく感じるときがある。例えば今日みたいに一人で考えたいことがあるときとか。萌さんってどんな人だったのだろうかとか、なんで萌さんの妹は部室に乗り込んできたのだろうかとか考えたいことはたくさんあるけど思考がまとまらない。
それはやっちゃんがうるさく話しかけてくるから。
「りょーた先輩はずるいよ。あんなにモテていて、しかもあっちゃんに好かれるなんて。
私勝ちっこ無いよ」
やっちゃんはさっきからぶつぶつ文句をこぼしている。
やっちゃんはあっちゃんが好きで、あっちゃんはりょーた先輩が好き。しかもあっちゃんは芸能事務所からスカウトされるほど美人で、本人もそう自覚しているためにかなり積極的にアピールしている。
やっちゃんはそれが気にくわなくて、よく私にぐちをこぼしている。そして今日も延々と愚痴っている。
「絶対りょーた先輩とつきあえないのにあっちゃんはずっとりょーた先輩に執着している。そんなの無駄なのに」
「そりゃーあっちゃんがりょーた先輩と付き合うのは無理だろうね。告白したら両思いという風にはならないし」
そりゃりょーた先輩はやっちゃんのことが好きだからね。なんの因果が分からないけどりょーた先輩はやっちゃんのことが好きで、なんとかおつきあいしたいと思っている。
確かにやっちゃんはあっちゃんほど綺麗では無い。だけど全体的にふわふわとした雰囲気だったり容姿だったりは人気がある。だからりょーた先輩はやっちゃんがあっちゃんのことが好きな百合だと知りつつ好きなのだろう。
「ねえあっちゃんってどんな食べ物が好きなのだろうか?今度手作り弁当を持って行っても引かないかな?
ていうかあっちゃんに『お弁当一緒に食べよう』というともれなくいつもりょーた先輩がついてくるのはなぜ?」
そりゃああっちゃんがやっちゃんもいるよと誘っているからだ。あっちゃんはなかなかの策士で、りょーた先輩がやっちゃんのことが好きなことややっちゃんが自分のことを好きだということを知りつつ二人を利用している。
「私はあっちゃんと二人だけでお弁当が食べたいのに」
やっちゃんがしょんぼりとする。
「分かった。今度は私がりょーた先輩とお弁当を食べるから。
あっちゃんを誘って食べたら?」
ららちゃん先輩も誘ってお弁当を食べよう。やっちゃんやあっちゃん同様りょーた先輩もこの状況に困惑しているだろうし、りょーた先輩のお悩み相談をするのも悪くない。
「ありがとー恩に着るよ」
「大したことじゃ無いけどね」
普通に考えてみたらかなりたわいも無い話かもしれない。でもやっちゃんは必死なのだ。同性愛が世間からあまりよく思われていないから、やっちゃんは恋にめちゃくちゃ必死。
私だったら無理、できないということをしている。
「そういえばりょーた先輩って萌さんと付き合っていたのかな?」
「どっどうしてそう思うの?願望が混じっていない?」
いやいやあの少女は萌さんがりょーた先輩のことを好きだったとは言っていなかったよ。確かに萌さんがりょーた先輩のことをよく話題にしていたとは言っていたけど。
やっちゃんにしたらりょーた先輩と萌さんが付き合っていた方が良いかもしれない。なんせ恋敵だし、もしそうだとしたら当分誰かとつきあうことは無いかもしれないし。
「だって私達がりょーた先輩と出会ったのは高校に入学してからで、その前に萌さんは自殺しているからおかしくは無いよ。
それに普通の女子高生が彼氏以外の男の話題をするとは限らないしね」
「それは決めつけだって」
やっちゃんは百合だからかもしれないけど、女子の男子に対する心理にはちょっといやかなり疎い。
私だってクラスメイトとりょーた先輩の話はよくするし、彼氏でも好きでも無い男子の話で盛り上がることはよくあることだ。
だからここはやっちゃんのためにはっきり言わないといけない。
「むしろ彼氏とかの話を家族にする人は少ないよ。親に秘密で交際している人だっているし」
「えーそうなの」
やっちゃんはかなり驚いている。
「そうだって。もしあっちゃんと付き合うことができたら、親に言うの?」
「言うけど」
やっちゃんはそんな些細いや一般常識的にあまり普通では無いことでも気にしないらしい。でも家は一応権威があるお金持ちなのだから、問題になると思うけど。
「世間的に彼氏がいることを言う人は少ないの。私だってできても言わないよ。
まあこれ以上この話続けても不毛だから置いておいて。
萌さんってどんな人だったのだろうね?そもそも会ったこと無いし、ららちゃん先輩やりょーた先輩は今までそんな話をしたこと無かったし」
さっきも思ったけど、萌さんの話題は部の禁忌かもしれない。だからりょーた先輩やららちゃん先輩は萌さんの妹が萌さんの話をすると焦ったのだ。そう考えると妹が帰った後の気まずい雰囲気も納得できる。今まで必死に秘密にしようとしていた過去を暴かれたのだから。
「そういえばそうだね。りょーた先輩や、ららちゃん先輩や、この前卒業したみーちゃん先輩やりす先輩は部活の過去の話をしてくれなかったり部誌を見せてくれなかったりしたよね。それは萌さんのことを思い出したくなかったからかな?」
思い出してみれば私達が入部したときには、部室には過去の部誌のバックナンバーだったり過去使っていたと推測される色々な物だったりが無かった。
萌さんがいたことを思い出して辛い気持ちになりたくないから、全て処分したのかな。
「まっ萌さんのことをりょーた先輩達が語ってくれなくても、他の先輩なら語ってくれるかもね。
だからどうしても気になったらOG訪問して、確認すれば良い」
「そんな簡単にいくかな?」
だって萌さんはりょーた先輩達の二つ上なわけで、OGの方が萌さんと仲良かっただろう。そんな死んだ仲良しの話を後輩にできるだろうか?
「妹さんには萌さんのことを知る権利がある。だからもし妹さんが知りたいと思ったときにはありだよね。
だって妹さんはこの高校にこれから通うのだよ、自殺した姉が通っていた高校に進学した理由なんて、姉について知りたいことがあるからだよ」
やっちゃんの言っていることは全て根拠の無いことだけど、なぜか反論できなかった。
その後私が以前知らない人から送りつけられた不思議なノートの話をして、やっちゃんと私は別れた。